今は各国で一定の地位を築いているヒュンダイやキアなどの韓国車。以前ヒュンダイは日本に進出していたものの、日本メーカーと性格がとても似ている為に競合し、また日本人の日本車信仰が強固なためにセールスは伸び悩み、2009年で日本市場から撤退した為、日本人にはなじみがないだろうが、現在韓国の自動車は、アジアでも欧州でもアメリカでも、日本車並みかそれ以上にポピュラーな存在である。
1990年代、韓国車は日本のみならず世界中で、安かろう悪かろうと批判された。そしてそのイメージは2000年代後半まで引きずられた。しかし、今は既に安かろう悪かろうの時代を抜け、安さだけでなく、性能、デザイン、高級さの面でも評価される。ヒュンダイ自動車は、主に三菱自動車の技術協力を得て成長した会社だが、今は間違いなく三菱よりもヒュンダイの方が競争力を持っている。まだ韓国国内や新興国向けの商用車の一部に、三菱車からの派生車種が残っているが、既に車種のほとんどに三菱ライセンス生産時代の名残はない。GMのキャデラックやトヨタのレクサスに倣い、高級車ブランドのジェネシスを2015年に立ち上げ、北米市場では好調なセールスを記録している。
1980年代には安くて性能(燃費)がいいという評価を獲得していた日本車だが、日本車にも安かろう悪かろうと評価された時代があった。トップ画像にあしらった、最初のクラウンは、トヨタの北米輸出第一弾の車種だが、走行性能・信頼性・安全性と全ての面で性能の低さを酷評され、しかも価格面でのアドバンテージすらなく、1960年には輸出を中止する事態に陥った。しかし一方で、日本では純国産車の走りとして一定の評価をされ、現在もポジティブに紹介されていることの方が多い。
日本車が一定の評価を獲得するのは、1973年にオイルショックが起きた後のことである。その牽引役は、低公害性能に長けたCVCCエンジンを搭載したホンダ シビックだった。しかしその頃もまだ、安全性の面では評価を得られず、本格的に評価を得られるようになるのは1980年代後半以降だ。
今、トヨタを始めとした日本車は、世界中で高性能と認識されている。特に耐久性・信頼性の面での評価は高く、特にトヨタ ランドクルーザーやハイエースなどは海外での人気も高い。ランドクルーザーに限って言えば、国内よりも国外での需要の方がはるかに高い。
トヨタ・ランドクルーザー - Wikipedia
自分がこれまで乗ってきた車のうち国産が7台、ドイツ車が2台、フランス車が1台、アメリカ車が1台だが、クルマの生産時期、購入時の状態を加味して考えても、日本車は明らかに外国車よりも信頼性が高く、そして中でもトヨタ車は群を抜いている。勿論車種や個体による差もあるだろうが、ババを引く恐れの低さで言ってもトヨタ車が一番心配が少ない。1960年頃の酷評を覆し、今では確固たる地位を築いている。今後はまだ分からないが、ガソリン車やハイブリッド車では、トヨタが最も信頼性が高いと言っても過言ではない。
では海外のクルマが全然ダメかと言えばそんなことはない。使い方、走り方の影響もあるが、北米ではほとんどの個体が、日本で走っているクルマの3倍以上の距離を走る。当然マイナートラブルは出るんだろうが、北米市場に投入される車種は、その程度の距離を走れるポテンシャルを持っている。マイナートラブルが出るのは日本車で日本を走っても同じことだ。
確かに日本車、特にトヨタ車の信頼感が高いことは間違いないが、日本人の日本車信仰の高さは度が過ぎていると言えるレベルだ。ただ、その影響で日本では外国車の中古価格は日本車よりもかなり値落ち率が高く、クルマ好きとしては、安価にいろいろな車に乗ることができるので、決して悪い事ばかりでもない。
しかし、この日本人の自国製品・Made in Japan 信仰の裏には、看過できない側面があるのではないか?と思っている。とあるホイールメーカーの製品紹介動画で、そのメーカーの社長が、「海外製は心配だがこれは日本製」と言いつつ、「この製品はヨーロッパ基準にも沿っている」と言っていた。
確かに、オークションサイトなどで粗悪なコピー品が出回っていることもあり、安全基準を満たした製品をつくっているブランドが、自社製品のアドバンテージとして信頼性の高さをアピールするのは何もおかしくはない。しかし、粗悪品は海外製という雑な括りでそれをアピールするのはいかがなものか。それはもう偏見を煽っていると言っても過言ではない。日本人の多くは、1990年代の韓国製品や2000年代の中国製品のイメージを今も引き摺っており、そして韓国や中国に限らず、アジア全般を無意識に見下す傾向にあり、そのような認識が、海外製は粗悪品、という雑な括りの裏にはある。
また、海外製は心配と言いつつ、ヨーロッパ基準にも沿っているとアピールをするのもおかしい。日本の安全基準策定には、少なからず日本の当該業界が関わっているのと同様に、欧州における基準策定にもヨーロッパのメーカーが少なからず関わっている。海外製は心配と言うのであれば、ヨーロッパ基準も心配となるのが自然であり、それを品質の高さアピールに用いるのは矛盾している。つまり、海外製は心配という表現を用いているものの、言っているのはアジア製は心配だ。ここに欧米信仰、アジアを見下す傾向が如実に表れている。
確かにアジアには新興国が多く、未だ玉石混交な感は否めない。しかし中国、台湾、そしてタイやマレーシア、インドネシアは発展目覚ましく、決して安かろう悪かろうばかりではない。また韓国に至っては既に日本と同レベル、若しくは日本以上の水準に達しており、海外製というだけで心配、というのは明らかに偏見だ。
更に付け加えれば、フォルクスワーゲンをはじめとした欧州車メーカーの一部が排ガス規制を逃れる為に不正を行っていたことは記憶に新しい。日本車メーカーでも同種の不正は見つかったし、更に言えば、数年前に軽自動車各社が軒並み燃費を良く見せる為の不正に手を染めていたことが発覚している。自動車以外でも、東芝が粉飾決算をやったり、三菱電機が品質を良く見せる不正に手を染めていたことが近年発覚しているし、東洋ゴムも耐震用の製品でデータを良く見せる不正をやっていた。つまり、日本製・日本企業の信頼性なんてのも、結局のところその程度でしかなく不正も多い。そして、今の日本政府は捏造隠蔽のオンパレードだ。だから日本人の日本製信仰は異様だと言っている。
30年超続いた不正の根 三菱電機の「おごった考え」:朝日新聞デジタル
この記事の見出しには、三菱電機の「おごった考え」とあるが、傲り高ぶっているのは決して三菱電機だけではない。この投稿で指摘したように、日本人の大多数が傲り高ぶっていて、だから日本製、というか日本を過大評価、周辺諸国を過小評価する傾向にある。
そういうことに早く気付かないと、この国はどんどん沈んでいくだけだろう。正当な自己評価ができなければ、改善は望めない。