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緊急事態とは口ばかり

 今年は梅雨寒のようなものがあった記憶が全くなく、7月に入る前から既に暑い日が続いていた。だが7月中頃までは、夜になるとそれなりに気温が下がり、寝苦しい夜はそんなになかった。しかし狂気のオリンピックが強行された頃から、次第に夜中も蒸し暑い日が続くようになり、8月に入ってからはほぼ毎日、2-3時間おきに目が覚める夜が続いていた。


 寝室のエアコンは数年前に温風しか吐かなくなって、それ以来放置したままだ。エアコンをつけたまま寝るのはそもそも好きじゃない。暖房にしろ冷房にしろエアコンをつけたまま寝るとのどが痛くなる。ただ、冬は布団や毛布をかければ寒さをしのげるが、夏の暑さは何もかぶらずに半裸で寝ても暑い。そんな我慢もそろそろ限界か、と思っていたのだが、一昨日・8/12の夜から急に涼しくなり、昨日はじっとしていれば汗をかかずに済むくらいの気温だった。ここのところ椅子に座っているだけで汗が出てくるような日が続いていたので、久しぶりに快適な気温が戻ってきた。
 今朝などは少し肌寒く長袖を一枚羽織りたくなるくらいだった。しかしそんな夏の一休みも、手放しでは喜べない状況だ。この気温の低さは台風9号から変化した低気圧と大雨を降らせる前線が日本付近に停滞していることの影響によるもので、先週の前半から大雨とその影響に対する警戒が呼びかけられていた。8/11-14にかけて九州から東海地方にかけて大雨が降り、各地で水害が発生している。昨日・8/14からは関東も局地的に大雨に見舞われており、避難指示が出ている地域もある。

 この投稿を書いている8/15昼の時点では、関東以東では既に雨のピークは過ぎたようだが、大雨の影響は雨が止んでも続くので油断は禁物だ。当分川の増水は続くし、下流では大雨が降ってから時間差で増水する恐れもある。また地盤の緩みもすぐには解消しない。


 今の自民党政権は、2018年7月、気象庁が西日本で深刻な豪雨被害を警告する中で、首相を始めとした閣僚数人も参加し、議員宿舎で宴会をやっていたような人達の集まりだ。2019年9/11の投稿でも書いたように、その後も積極的な災害対応をやってきたとはお世辞にも言えない。
 今回の大雨に関して、政府は8/13に官邸連絡室を設置した、と共同通信が報じている。また、朝日新聞は、首相官邸で開かれた「8月11日からの大雨に関する関係閣僚会議」で、

首相は各大臣に対し、「人命第一の方針のもと、情報収集につとめ、災害発生時に即応できる万全の態勢を確保するとともに、地方自治体と緊密に連携して最大限の緊張感を持って対応にあたってほしい」と話した

と報じている。


 今日本は、これまでで最悪の新型コロナウイルス感染拡大、オリンピック強行や政府の無策によって誘発された感染爆発と言ってもいい状況にある。連日、1都3県は過去最高の新規感染者、重症者が出ていると報じられており、新型コロナウイルスへの感染だろうが、それ以外の病気やケガだろうが、救急搬送の受け入れ先が見つからず、たらい回しにされることもザラ、という話もあちらこちらから聞こえてくる状況だ。
 つまり、最悪の水害や土砂災害が起きても、被害を受けた人を診療する余力が残されていない状況だし、避難勧告や指示が出ても、多くの人が避難所で感染する懸念から、避難を躊躇しがちな状況でもあり、冠水や土砂災害の被害がこれまで以上に拡大する恐れのある状況だ。

 そんな不測の事態が起きやすい状況にもかかわらず、そして自ら「緊張感を持って対応にあたれ」という指示を出しているにもかかわらず、菅は、8/13も14も公邸にて控えることなく赤坂の議員宿舎に戻っている。しかも昨日8/14は、午前中公邸に出向かずに議員宿舎にいた。緊張感がある振舞いとは到底言えない。

首相動静(8月13日):時事ドットコム

首相動静(8月14日):時事ドットコム

 総理大臣官邸は、有事に即座に対応できるようにと官邸に隣接している。歴史的に全ての首相が公邸に住んだわけではないが、首相は官邸に隣接した公邸に住まうことが望ましい。元首相の野田 佳彦によれば、公邸の維持には年間1億6000万もの予算がかかっているそうだ。野田は2021年2/15の答弁で、菅が赤坂の議員宿舎に居住していることについて、

首都直下型地震だったらどうなったか。道路が陥没し、倒壊した建物で、道路寸断される可能性がある。信号機も機能しないかもしれない。そんなときに赤坂と永田町は目と鼻の先だけれども、20分では到達しないだろう

と、国会審議の中で指摘している。

そんなに予算をかけて公邸を維持しているのだから、日頃から公邸に住んで欲しいものだが、百歩譲って平時は私邸/議員宿舎住まいも許容できるとしても、緊急事態宣言下で、しかも災害への強い懸念がある時くらい、不測の事態に即対応できるように公邸に控えるのは最早首相としての義務と言ってもよいのではないだろうか。

 このことから、菅の有事対応に関する姿勢、緊急事態と言いつつ緊急事態とは思っていないであろうこと、緊張感をもって対応せよという言葉の説得力の低さ、いや無さが、これでもかと言うくらいに表れている。そして緊急事態とは口ばかりであることは、殆どの国民が気づいているので殆ど意味はなくなっているし、官僚らにも口だけの菅、いや自民政権関係者の言葉が響かない状況になっているのは容易に想像できる。


 2019年9/11の投稿で書いた災害対策に全く消極的だった前安倍内閣でも、現首相の菅は官房長官で、つまり菅の認識・感覚はその頃と何も変わっていない、ということがよく分かる。あの時点で国民が、現自民政権の緊急事態や災害対応への積極性のなさに気づいていたら、日本における新型コロナウイルスへの対応も、もう少しマシだったのかもしれない。
 やはり政治への無関心は、自分の首を絞める自傷行為にも等しい。


 トップ画像には、汗をかいている人(女)のイラスト | ちょうどいいイラスト を使用した。

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