アフガニスタンから米軍を撤退させる、米バイデン大統領がそう発表したのは4月のことだった。そもそもは、前大統領のトランプが昨年・2020年2月に、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと撤退に合意したことが始まりだ。いや、2001年の9.11同時多発テロ事件後、その首謀者とされるビンラディンをかくまったタリバンへ、ブッシュ政権が攻撃を仕掛け、アフガニスタンへ侵攻したのがそもそもの始まりである。
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タリバンはアフガニスタンにおけるイスラム主義運動・軍事組織、国際テロ組織であり、所謂過激派、イスラム原理主義の強権的な組織である。市民の娯楽や文化を否定し、また女性は学ぶ事も働く事も禁止され、親族男性を伴わなければ外出すら認めず、また公開処刑も日常的に行い、アメリカの侵攻以前から国際的にも問題視されていた。活動資金作りの為に麻薬を生産輸出していたという話もある。
アメリカのアフガニスタン侵攻によって、タリバン政権は打倒されたが、2003年頃から再び新政府に対する反政府活動が始まり、アフガニスタン南部や東部にて再び勢力を拡大、タリバンの勢力拡大が続く中で、米軍やNATOは2012年に撤退準備を開始し、そしてとうとう今年、バイデン大統領が完全撤退を明言した。9月の米軍完全撤退を目前に、タリバンがアフガニスタンの新政府を妥当し、再び実権を握る状態となってしまった。
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そんな状況で、首都カブールから大使館員などを優先的に退避させるため、米軍はカブール国際空港を管理下に置いているという。タリバンから逃れようとするアフガニスタン市民数千人が空港に押し寄せ、飛行機によじ登ろうとするなど、大混乱が発生したそうだ。
カブール空港で大混乱 タリバン逃れようと数千人押し寄せ - BBCニュース
記事に掲載されている動画には、滑走を始める飛行機の脇にしがみつく人たちの姿も映っている。米国務省は8/15に、米国民、現地採用の大使館職員と家族、さらにタリバンから迫害される危険の高いアフガニスタン人を、数日中に飛行機で脱出させる方針を示したそうだが、脱出を望む人の全てが脱出できるわけではないことは、この記事からも明白だ。
多くの日本人は、これを我がこととは思わないだろう。厳しく言えば、こんなことはありえないと思う人の多くにとっても、対岸の火事でしかないのではないか。
しかし、今の日本では、これと間違いなく似たようなことが起きている。日本は数週間前から新型コロナウイルスの感染爆発に見舞われており、充分な検査もなされない中で、1日あたりの新規感染者数、新規重症者数がこれまでの最高を連日更新していて、つまり、充分な検査が行われたら、感染者数は更に増えるであろう状況である。そしてその影響で医療現場は限界を迎えており、感染が発覚してもまともな診療を受けられない、政府や自治体は自宅療養と呼称するが、実態は自宅放置が多数発生し、その数も連日最多を更新している。また自宅放置された者の死亡も報じられている。当然新型コロナウイルスへの感染の病気やケガでも、感染爆発による医療リソース不足が原因で救急搬送先見つからないケースが多く発生しているようで、政府や自治体、報道はそう発表も報道もしないが、実質的なトリアージが行われ、患者に優先順位がつけられ、見捨てられる者が出ている状況だ。
また、ワクチン接種も職域接種という名の不公正な方法が公然と行われている。台東区の清掃局で集団感染が発生し、ごみの収集が滞ると報じられる一方で、プロ野球 ソフトバンクホークスは、ワクチン職域接種の対象を、ファンクラブ会員に拡大すると発表した。
もしワクチン接種をしている人達の間で集団感染が発覚したなら、間違いなくそれは報じられるはずだ。台東区の件の記事には、職員らのワクチン接種状況に言及はないが、十中八九未接種だったはずだ。家庭等から排出される汚物、つまりウイルスが付着したものに触れる恐れが他の人よりも高く、また生活インフラである為休業もできず、テレワークも無理な清掃事務所職員がワクチン接種を受けられていないのに、一方でプロ野球チームがファンクラブ会員に限ってワクチン接種を行うなんて、本当にこの国の政治はどうかしてしまっている。
タリバンから逃れる為に脱出を望む人の中で、米大使館で働いていた人たちは脱出できて、そうでなければ脱出できないのと、芸能人や与党政治家などコネクションを持つ者が優先的に入院出来て、一般人は自宅放置される状況は、見た目に分かりやすいか否かの差があるだけで、それほど違わないのではないか。自宅放置された人の中から既に死亡するケースが出ているのだから。
ワクチン接種だってそうだ。ソフトバンクのファンクラブ会員のようなコネクションがあれば接種できて、そうでなければ所謂エッセンシャルワーカー、社会基盤を支えるために必要不可欠な仕事に従事する労働者でもワクチン接種できない。これはアフガニスタンの現状とそんなに違わないではないか。
アフガニスタンの問題は、決して米軍だけにあるわけではない。アフガニスタンの新政府も汚職と政争が後を絶たなかったそうだ。
ジャーナリストの志葉 玲が、
これまで、紛争地や最貧国の現場で取材してきて思うのは、汚職追放の重要さ。政府がクリーンで信頼できるか否か、公務員が真面目に仕事をするか、人々に分配がキチンとなされているかで、その国の安定性は大きく変わる。そういう意味では日本も大分怪しくなってきた気が。
— ジャーナリスト志葉玲/『13歳からの環境問題』著者 (@reishiva) August 15, 2021
とツイートしていたが、「日本も大分怪しくなってきた気が」ではない。気がするのではなく、もう既に、確実にアフガニスタンと同じような状況が生まれている。