スキップしてメイン コンテンツに移動
 

イデオロギー的に右側になびきやすいヤンキー気質

 神奈川県は、東京都に次ぐ日本で2番目の規模を誇る自治体だ。横浜はその東側を大きく占める県内最大の市町村であり、川崎を挟んではいるものの、東京23区の西側とは同じ生活圏でもあり、他の県民からしたら都会という印象もあるだろう。だが実際は、横浜は単なる地方都市の1つに過ぎない、と言っても過言ではない。


 東京23区内でも足立区を筆頭に、埼玉や千葉と隣接する荒川沿岸の区ではまだまだヤンキー文化が残っているし、23区内の西側はそうでもないが、23区よりも西側では、西に行けば行くほどヤンキー気質が感じられるようになる。横浜もそれと同様に、東京から離れれば離れる程ヤンキー気質が強くなる傾向にある。東京横浜でもそんな状況なのだから、つまり日本では全般的にまだまだヤンキー気質が根強く残っていると言える。
 今日のトップ画像は、横浜市各区のヤンキー気質を示したものだ。何かの調査に基づいた分布図ではなく、横浜市北西部で00年代までを過ごした個人的な感覚による分類だ。区で括ってその度合いを示したが、同じ区でも細かな地域性があったり、幾つかの鉄道路線が走っている場合、その沿線によっても傾向が違ったりもする。基本的には東京に近い程ヤンキー気質が薄いが、みなとみらいなどのような、近年高層マンション建設などの開発が進んだ地域ではヤンキー気質は薄いし、逆に京浜工業地帯周辺である鶴見区や神奈川区の一部は、比較的東京寄りであるがヤンキー度合いが高かったりする。
 個人的な感覚で言えば、所謂横浜都民と呼ばれる田園都市線沿線(と東横線沿線の一部)が、横浜市内で最もヤンキー気質が薄く、沿岸工業地域のある鶴見や磯子などがヤンキー度が高い。


 この地図、つまり横浜市各区のヤンキー気質の差についてあらためて考えた理由は、横浜市長選に関するこの記事を見たからだ。

山中さん支持幅広く…18区中17区で最多得票 小此木さんは鶴見区のみ僅差で上回る<横浜市長選分析>:東京新聞 TOKYO Web

 この記事は、鶴見区を除く市内全区で、首相が支援し、国家公安委員長を辞職して立候補した小此木 八郎の得票を、山中の得票が上回ったという内容だ。今回の横浜市長選では、投票終了後すぐに、ゼロ開票の時点で、立憲が推薦し、共産・社民などが支援した山中 竹春の当確を、メディア各社が報じた。つまり各社の出口調査で明らかな大差がついていたということだ。

 記事にもあるように、鶴見区は小此木の国会議員としての地盤だった。小此木は小選挙区導入直前の1993年衆院選に旧神奈川1区で立候補し初当選した。小選挙区制が導入された1996年衆院選からは、鶴見区と神奈川区からなる神奈川3区で、2017衆院選まで8選を果たしていた。ちなみに、小此木はまだ56歳という年齢だが、今回の市長選での敗北によって政界引退を示唆している。

 小此木は1990年代から約30年間に渡って横浜市東部、特に鶴見区/神奈川区を地盤としてきたのだから、鶴見区で小此木の得票が山中を上回るのも当然、という見方もあるだろう。しかし神奈川区では小此木よりも山中の得票の方が上回っている。小此木は中区に事務所を構えていて、小此木の本家も中区にあり、そういう意味で言えば、神奈川区よりも鶴見区になにか特別な地縁があるわけでもない。

 ではなぜ鶴見だけ小此木の得票が山中を上回ったのか。自分が思い当たったのが鶴見区のヤンキー気質の高さだった。神奈川区も鶴見区同様に沿岸部は京浜工業地帯の一部であり、その地域はヤンキー度が高いが、一方で区の西側には東横線が走っており、渋谷へつながる所謂横浜都民の側面もわずかながら持っている為、その沿線はヤンキー度があまり高くない。鶴見区と神奈川区にはそんな差がある。
 ヤンキー気質とは何か。当然不良や暴走族のような所謂ヤンキーが持っている気質のことを指してそう表現している。ヤンキーや不良、暴走族と言えば、学校や社会への反抗など、反体制が信条のようにも捉えられがちだが、実際は同じく不良と捉えられがちなパンクスなどとは異なり、ヤンキー気質には反体制や反権力などの文脈はない。勿論何事にも例外はあるが、概ね単に悪ぶりたいだけで反体制や反権力の精神は持たない。

 日本には相変わらず戦中の特攻隊を美化したり、戦死者を英霊と称して戦争賛美したがる者が少なくないが、ヤンキー、特に男性はその類の話に感化されやすく、また自分を実態以上に尊大に見せる為に権力に迎合する傾向も持っているので、ヤンキー、特に男性はイデオロギー的には右側になびきやすい。つまり自民党と相性がよい性質がある。それも同様に、社会的には不良と一括りにされがちな、前述のパンクスとは一線を画す部分である。パンクスは基本的にはイデオロギー的に左よりだ。
 ヤンキーもパンクスも基本的には労働階級に多いが、前者は自分が労働階級ということに恥を感じており、あわよくば権力側になりたいと考えているのに対して、後者は労働階級であることを恥とは捉えず、場合によっては誇りすら持っており、明確な反権力であることは、その大きな違いだ。


 横浜市長選で鶴見区でのみ小此木の得票が山中を上回った、ということには、横浜も単なる一地方都市でしかないという感もあるし、ヤンキーと自民党の親和性も感じずにはいられない。
 1990代中盤、東京を中心に、変型学生服やリーゼントや暴走族など、従来のヤンキースタイルは時代遅れになったが、新たにチーマーやバイカーなどが出現し、00年代以降はヒップホップやギャング系、ギャル男オラオラ系なども派生したが、スタイルは違えど中身は従来のヤンキーとそれほど大きくは違わない。また、今でもヤンキーマンガやドラマ等には一定の支持が集まる。つまり日本では全般的に、数十年前から、そして今もヤンキー文化が根付いており、それが安易な自民支持の基盤でもあるんだろう。そしてそれは、今の日本の惨状の決して小さくない要因なのかもしれない。


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。