ランドクルーザーはトヨタの長寿モデルの一つで、14年ぶりの新型が2021年6/10に発表された。ランドクルーザーの世代の数え方は幾つかあるが、今度の新型は10世代目のモデルとされている。トップ画像で新型の脇に載せたのは、まだランドクルーザーという名称になる前の、トヨタ ジープBJ型と呼ばれていた、ランドクルーザー第1世代に当たるモデルである。
トヨタ
ランドクルーザーの第1世代は、民生用ではなく自衛隊の前身である警察予備隊での採用を目論んで開発された。その名称からも分かるように、第二次世界大戦で米軍の車両として活躍したジープのクローンのような車両だった。警察予備隊での採用試験では、独自開発されたクローンではなく、ジープ CJ型のノックダウン生産車である三菱 ジープに敗れた。トヨタ ジープBJ型は、戦後から1954年まで存在した旧警察組織・国家地方警察で採用・導入されたが、民生用としても生産することになり、ジープという商標をそのまま使うわけにはいかず、英国のランドローバーに対抗してランドクルーザーと名付けられたとされている。
今、SUV全般を指してジープと呼ぶ人は殆どいないが、1990年代頃まで、4WD車全般のことをジープと呼ぶ人が結構いた(1990年代の中盤まではSUVという分類もまだなく、日本では単に4WDとか4駆、RV(レクリエーションビークル)とかクロカン(クロスカントリー車の略)なんて呼んでいた)。
なぜ4WD車全般がジープと呼ばれていたのか。今ではSUVが世界的な売れ筋ジャンルで、日本の自動車メーカーも皆SUVをラインナップしているが、1980年以前、そもそも4WD車はそんなに種類がなかった。三菱ジープ、トヨタ
ランドクルーザーと日産
サファリ(パトロール)、それとスズキの軽自動車・ジムニーぐらいしかなかった。三菱
パジェロが登場したのは1982年だし、ホンダやマツダがSUV(当初はRV)に手を出し始めるのは1990年代中盤以降だ。
日産のサファリ(パトロール)も、ランドクルーザーと同様に、元々は警察予備隊での採用を目指して開発されたジープクローンであり、1980年以前のモデルはジープにかなり似ていた。スズキ
ジムニーは1970年に登場した、最初から軽自動車として開発された車種だが、1981年まで生産された第1世代モデルの見た目は、明らかにジープ
CJ型の模倣だった。そんな状況だったので、4WD車両全般をジープと呼ぶ人が少なくなかった。iPodが登場するまで、主にポータブルカセットプレイヤー、場合によってはCD/MDも含めたポータブル音楽プレイヤーが全般的に、ウォークマンと呼ばれていたのと似ている。ウォークマンはソニーの商品の名称だったのに。ジープもウォークマンも、商標が普通名詞化してしまった例だ。
- 日産・パトロール - Wikipedia
- 日産・サファリ - Wikipedia
- スズキ・ジムニー - Wikipedia
- 携帯音楽プレーヤー - Wikipedia
- 商標の普通名称化 - Wikipedia
1980年代に入るとパジェロが登場し、更に1980年代中盤以降、ピックアップトラック・トヨタ
ハイラックスの乗用車版4WD車 ハイラックス サーフや、日産
ダットサントラックの乗用車版4WD車 テラノなどが登場して、バブル期前後にはRVブームが起こった為、4WD車全般をジープと呼ぶ人は徐々に減っていったが、自動車にあまり興味のない人にはまだまだジープと呼ぶ人がいた。
特に女性には、1980年代以前に若者だった夫や父親などの影響で、1990年代後半までジープと呼んでいる人が多かった印象がある。それが正しい表現ではなくても、「ああこの人は4WD車全般のことをジープと呼んでいるんだな」ということは、話の文脈で大抵分かった。
自分が大学生を過ごしたのは1990年代後半で、当時はSUVという呼称も使われ始めていたころだが、それでもまだ4WD車全般をジープと呼ぶ女のコはそれなりにいて、合コンなどでそういう話になると、大抵クルマ好きの男がジープってのは…という説明を始めた。
話のネタとしてそれが有効な場合もあったが、よく合コンをしていた女のコなどは、既にそのネタをどこかでされていて、だけどそれまでの習慣でジープと言うと、また同じ話をクドクドと聞かされて耳にタコができているようなケースもあって、そんな場合はジープってのは…という話は煙たがられた。
しかし空気の読めない奴や、小学生の頃女の子が嫌がることをして喜んでいたような奴は、煙たがられてもジープの定義の話を続けたし、オタク気質の奴も、嫌がられていることなど気にせず、自分がしたい話をするだけして煙たがられていたものだ。
クルマオタクやマニアに限らず、オタクやマニア気質の人間は、一つのことにのめり込み過ぎて周りが見えなかったり、空気が読めなかったりする。その結果、興味のない者にはどうでもいい事を得意げに嬉々として喋り、煙たがられることも多い。一般人にとってはどうでもいいことでも、彼らにとってはどうでもいいことではなく、少しの言い間違いや認識違いをいちいち指摘してくる場合もあるし、それどころか、そもそも間違いとすら言えないようなことに関して。持論を長々と披露してきたりもする。
女性に相手にされないことを逆恨みして、無差別な暴力行為に及ぶ男が少なからずいる。勿論その種の人が全て何かのマニアやオタクとは限らないが、空気を察せずに煙たがられることをするから女性に相手にされない、女性だけでなく他人に敬遠される、というのはしばしば目に付く光景である。何かに対して強い好奇心を持ち、それに対する知見を深めることは素晴らしいことだが、殆どの人間は社会に属さないと生きていけないので、最低限の社交性を身につけることもまた重要だ。
前述のように、オタクやマニアは一般人に大した違いでないような些細な言い間違い、あるいは間違いとまでは言えないような言い方についても、確固たる持論があれば黙っていられないような人達である。勿論これは全てのオタクやマニアに当てはまるわけではないが、間違いなくそのような傾向はあるはずだ。自分にもオタク気質があり、少なからずそんな傾向はある。
昨日、パラリンピックの開会式に合わせてまた自衛隊が曲芸飛行をやったそうで、新型ウイルスが感染爆発しているのに、オリンピック開会式に続いてまた見物人を集めてしまったそうだ。SNSなどでブルーインパルスの航空機を戦闘機と呼ぶと、ブルーインパルス警察とでも言うべき人達がたちまち現れ、「あれは武装が付いていないから戦闘機じゃない、練習機だ」と言ってくる。
過去にブルーインパルスではF-86という戦闘機を使用していたが、現在使用しているのはT-4という確かに練習用とされる機体のようだ。しかし、T-4は戦闘機の操縦訓練に使用される機体で、機体のシルエットは戦闘機そのものだ。航空自衛隊のサイトには、イミテーションかもしれないが、主翼の下にミサイルや爆弾にも見える形状のものを搭載している画像もある。この機体形状を見れば、軍事マニアでもない限り大半の人は戦闘機というワードを連想するだろう。
またWikipediaには出展付きで、
戦技訓練用として、胴体下に7.62mm口径のミニガンのポッドを搭載できるとされており、1987年には試作2号機を用いて、三沢基地で発射試験が行われた
とある。ブルーインパルスで運用されている機体に武装はなくとも、同型機は武装搭載が可能であり、実際に武装を搭載し、実戦でなくとも使用した例があるなら、これを戦闘機と表現してもそれは決して間違いとまでは言えないだろう。
そもそも一般人にとっては、ブルーインパルスが使用しているのが戦闘機だろうが厳密には練習機だろうが、それは大した差ではない。国際的には軍隊に当たる自衛隊が、戦闘機搭乗者の訓練に使用していて、戦闘機に見えても全くおかしくない形状なのだし、戦闘機と呼んでも間違いと言えない要素もある。
このブルーインパルス警察とでもいうべき人達は、確固たる持論を持つ社交性の低い筋金入りのオタクかマニアか、若しくは単に聞きかじった浅い知識をひけらかしたいだけの、オタクのフリをした何かのどちらかなんだろう。戦闘機だろうが練習機だろうが、曲芸飛行をやって人を集めるようなことを、新型ウイルスの感染が拡大している中ですることの問題が指摘されている、のが気にくわないだけの。