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4K/8K放送は必要とされているのだろうか

 今、リビングのテレビとして最も一般的なサイズはどのくらいなのだろうか。10年前くらいは、普及機のサイズは32インチくらいだった。多分今は40-50インチくらいが主流になっているんじゃないだろうか。今は10年前の32インチの価格で40-50インチの機種が手に入るので多分その程度なんだろうし、価格コム調べで40-43インチが103機種、48-55インチが191機種と最も充実している。ただ、65インチも96機種と多く、50-60インチへ移行期とも言えるかもしれない。

 40インチ以下のパーソナル利用向けテレビを除けば、価格コムで売れ筋とされるテレビの多くは4Kパネルを搭載している。8Kパネルは19機種しか登録されておらず、まだまだ少数派だ。しかし、4Kパネル機の登録が424機種の一方で、従来の1080Pパネルの機種もまだ480機種も登録されている。1080Pパネル機の方が登場が当然早く、価格コムではどこも在庫を持っていない旧機種も登録されているので、実質的は、流通している機種は同じくらいかもしれない。ということは、コストパフォーマンスに優れる1080P機でも構わない、という層が一定程度存在している、とも言えそうだ。
 果たして4K/8Kは必要なのだろうか。スマートフォンに対抗する為に生き残りをかけて、ハイレゾを謳うポータブルプレーヤーが2010年代前半に流行ったが、今はほとんど話題にならない。一部のマニア向けのニッチな商品になっている。4K/8Kテレビも、それと同じ方向に向かっているような気がしてならない。


 DVDが普及したのは1990年代末だ。それ以前から売られてはいたが、2000年に発売されたプレイステーション2が、その再生機能を有しており、プレイステーション2がDVDを普及させた、と言っても過言ではないだろう。ちなみに、プレイステーション2は、現時点で最も売れたゲームハードだ。

 それまで映画などを楽しむにはVHSビデオが使われていた。VHSはアナログ方式で記録するテープメディアだった為、繰り返し使用すると画質音質が徐々に損なわれたが、DVDはデジタル方式で記録された光ディスクメディアで、勿論盤面に傷が付けば読み取り不良が起こるが、基本的に何度再生を繰り返しても画質音質が劣化しない為、また解像度自体も高く、当時はとても画期的だった。目に見てすぐに分かる高画質高音質だった為、また早送り巻き戻しに手間がなく、CDのように見たい場面をすぐに呼び出せる利便性もあって、瞬く間に主流となった。
 ちなみにVHSの解像度はおおよそ320*240程度、DVDは720*480とその倍程度だった。

 DVDが概ねVHSにとって代わると、今度はその上位に当たるブルーレイビデオ(BD)が登場する。BDの本格的な普及が始まったのは2006年で、このBDの普及にもプレイステーションが大きく貢献した。同年に発売されたプレイステーション3がBDの再生機能を有しており、それによってDVDからBDへの移行が始まった。

 DVDが720*480という解像度だったのに対して、BDは1920*1080という、所謂1080P/フルHDと呼ばれる解像度で映像を記録しており、1080Pパネルのテレビやモニターで、同じタイトルのDVDとBDを見比べると、VHSとDVDを比べた時かそれ以上の差を感じた。当時はレンタル店にDVDがまず並び、その後BD版が追加されるというケース、レンタル店にBD版が導入されないケースも多く、低画質なDVD版で鑑賞すると損をした気分になったものだ。ただ、音質もスペック上は向上していたはずだが、高品質なオーディオシステムでも組んでいない限り、その差を感じることはなかった。

 2010年を過ぎると、BDが徐々にDVDにとって代わり、ほとんどの作品がBDでレンタル店にも並ぶようになっていたが、しかしHuluなどのサブスクリプション配信サービスが台頭し、レンタル店は徐々に減っていった。勿論映像を楽しむ方法も物理メディアからネット配信へ移行し、DVDやBDは熱心なファン向けのコレクターズアイテムになっていった。
 2010年代中盤に、まずはビデオカメラ/ビデオ撮影機能を備えたデジタルカメラが4K画質での撮影に対応し始め、世界最大の動画プラットフォーム・Youtubeも2014年に4Kに対応を開始した。それに伴い4Kパネルを備えたPCモニターやテレビの普及も始まり、BDも4Kで記録された上位版 UHD BDが登場し、現在の主流はUHD BDへ移行している。

 但し、前述の通り物理メディアはニッチな商品になっており、DVD期の隆盛とは程遠い状況にある。


 物理メディアがニッチな商品になったのと同時に、動画コンテンツの消費スタイルも大きく変化している。以前は映画等の動画コンテンツを楽しむなら大きな画面で、という人が多かったが、今はスマートフォンやタブレット、PCのモニタ(特にノートの10インチ台サイズの)で消費する人、それで済ます人も決して少なくない。
 テレビが生活に不可欠という人も減っていて、だから家にテレビを置かず、映像を楽しむなら小さいモニタで済ますというケースも少なくない。また、プロジェクターの価格低下も進んでおり、テレビ放送は見ないので場所を取る大型テレビではなくプロジェクターを選択する、というケースも少なからず増えている。低価格プロジェクターは大型テレビよりも画面サイズを稼げる一方で、解像度は720P(1280*720)かそれ以下という場合も多い。つまり、高解像度/高画質を重要視しない、という人が、2000年代以前に比べれば確実に増えているんだろう。
 自分も、映像コンテンツを楽しむ場合、720P画質で特に不満を感じない。勿論、1080Pや4Kで見られるならそれに越したことはないが、それよりもプロジェクターによる100インチサイズの画面の方が優先順位的には高い。つまり、100インチ/720Pでも映像体験として充分に満足できる。またYoutubeやネット配信番組など、日常的な映像消費は、スマホでは少々物足りないものの、10インチサイズのタブレットで全く不満がない。

 しかし4K動画が全く必要ないかと言えばそんなことはない。見る、ということに関しては概ね必要ない。しかし撮影する場合は4K撮影に確実にメリットがある。編集する際にある程度のPCの処理能力が必要になる、というデメリットはあるものの、1080P動画として編集すれば、編集時に映像を拡大しても荒れないというメリットがある。つまり、見る、という観点では4Kに必要性をそれ程感じないものの、素材として考えたら4Kの必要性は感じる。
 また、4Kパネルモニターも同様で、テレビ受像機としての必要性は全く感じないが、道具としては4Kモニタに必要性はある。日常的に50インチ以上のテレビが必要なサイズの住居に住んでいないし、そもそもテレビ放送全般に全く魅力を感じていない、それどころか嫌悪感すら持っているので、テレビとして大画面/高解像度が必要ないのは当然なのだが、PCモニタとしては4K解像度の広さは非常に有効で、高効率化に関わる。勿論ある程度の画面サイズがなければ表示が細かくなりすぎるので、小さな高解像度モニタでは意味がない。ゲーム利用が中心とか、若くてまだまだ細かいものを見るのが苦でないとか、それぞれで基準は変わりそうだが、個人的には40インチ/4KがPCモニタとしてベストだ。現在は24インチ/1920*1200のモニタをサブに使っているが、40インチ/4Kデュアルが現時点で理想である。


 この投稿の主題は、果たして4K/8Kテレビは必要なのか、で、ハイレゾポータブルプレーヤーのような方向に向かっているのではないか、という話だ。これまで書いてきたことを勘案して結論を導くと、AVマニアで高精細な映像美を堪能したいとか、ゲーマーで高精細でないと勝負に関わるのような要素でもない限り、至近距離で食い入るように凝視するわけでもなく、常に映像美を求めるわけでもないし、また必要以上に大きな画面は邪魔に感じることもあるので、日常利用なら40-50インチに1080P画質で充分、である。 
 これまでオリンピックはテレビの買い替えを促す、機運を盛り上げる口実に使われてきた。白黒からカラー、ハイビジョン、S端子とS-VHS、フラットブラウン管、薄型テレビ、デジタル放送など、思い当たることは多数ある。だが必然性のあった新規格・新機能・変化もあれば、そうでないものもあった。2020東京大会を前に、2018年から4K/8K放送がBSで開始されたが、果たしてそれは必要だったのだろうか。オリンピックを機に対応機種に買い換えたという話も聞かないし、買い換え需要が起きた、つまり4K/8K放送の需要が高まった、という話も全く聞こえてこない。
 そもそもテレビ放送自体の存在価値が疑わしくなっている。勿論、災害時にネットが不通になる恐れもあり、全く必要ないとは言わない。しかし、それでも4K/8Kである必要性はない。国がそんなことにお金を割く余裕はあるんだろうか。自分には、お金をかける優先度が低いところに余計な予算が割かれているようにしか思えない。



 トップ画像には、File:Resolution of SD, Full HD, 4K Ultra HD & 8K Ultra HD.svg - Wikimedia Commons を使用した。

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