スキップしてメイン コンテンツに移動
 

一度広まった嘘、デマは謝罪してもなくならないし、取り返しがつかないのに…

 インターネット黎明期を知る者にとって、電話絡みの○○放題と言えば、まずはテレホーダイが思い浮かぶのではないだろうか。テレホーダイは、電話回線を使ってパソコン通信/インターネットに接続していた1990年代後半によく使われていたNTTのサービスで、23時から翌日8時までに限り、指定した電話番号への通話が定額になるサービスだった。

 最近電話絡みの○○放題と言えば、概ね携帯電話の利用プランだ。○○放題、○○ホーダイ、もっと略して○○ホなんてのもある。ドコモのギガホがまさにそれで、多分そのネーミングは、前述のテレホーダイが当時”テレホ”と略されて呼ばれていたことにちなんでいるんじゃないだろうか。

シンプル2択な料金プラン。ギガホ プレミア、ギガライト | 料金・割引 | NTTドコモ


 今日のトップ画像は、そのドコモのギガホのパロディーである。前首相 安倍が桜を見る会問題に関して、国会で100回以上も嘘をついていたことはまだまだ記憶に新しい。そしてそれを、秘書の話を信じただけ、と言い逃れ、検察もそれを鵜呑みにして、なんのお咎めもなかったことも、多くの人が覚えているだろう。

 これ以外にも政府関係者がデタラメな発言をすることは多い。例えば直近では、副首相の麻生は、まだまだ新規感染者が1日1000人以上も検出され、毎日のように重症者や死者も出ている状況なのに、「(新型ウイルス感染拡大は)曲がりなりに収束して、国際社会の中での評価は極めて高い」と発言した。EUは9/9に日本を安全な渡航先から除外している。麻生は何を根拠に国際社会からの評価は高いと言っているのか。麻生はこれまでにもいい加減な発言を頻繁にしているのに、もう8年も副首相/財務大臣に居座っている。

 トップ画像ではそのような状況を風刺して、ドコモのギガホのロゴデザインを使って、政府関係者には、どんなにいい加減なことを言っても、どれだけ嘘をついてもお咎めなしの、嘘つき放題プランが用意されている、という表現にした。


 残念なことに、嘘をつき放題になっているのは政府関係者だけではない。メディア関係者、特に政府与党を擁護する立場の人にも、ウソホが適用されているようだ。TBSのワイドショー・ひるおび という番組の9/10の放送の中で、毎日出演するレギュラー出演者の弁護士が、

共産党はまだ暴力的な革命を党の要綱として廃止していませんから

という、もうかなり前から使い古されているデマを、今更また言い放ったそうだ。

 このようなデマの影響はかなり深刻である。日本の社会には、共産党アレルギーとも言える空気感が未だあり、それは被差別部落問題のような根深さだ。にもかかわらずテレビ出演者が、あたかも共産党が暴力革命を目論んでいる組織かのように吹聴すれば、その影響は計り知れない。間違いでした、で済むような問題では決してない

TBS「発言は誤りでした」共産党めぐる八代弁護士のひるおびでの見解に - 芸能 : 日刊スポーツ

 共産党の公式ツイッターアカウントのツイート、日刊スポーツの記事を見ると、TBSは既に当該弁護士の発言が不正確である、間違いである、嘘だった、ということを認めてはいるようだが、彼を今後も出演させ続けるのか、それとも責任を取らせて降板させるのか、につていは言及がない。もし降板させないなら、当該弁護士は予め用意されていた台本に沿って発言しただけ、ということもあり得るのではないか。だとすれば、番組、局としてデマを吹聴したということにもなりかねない。
 しかも今は、数か月後に最も重要な国政選挙である衆院選を控えた状況であり、そのタイミングでこのようなことが起きた、というのはかなり深刻だ。そして嘘つきを、謝罪すればそれでOKとし、お咎めなしで起用し続けるのなら、TBSは安倍や麻生、そして政府や与党関係者の嘘、いい加減な発言を批判・指摘できる立場でなくなる。それは報道機関としての死を意味するのではないだろうか。


 間違いでした、で済む話ではない、というのはどういうことか。作家で医師の知念 実希人が9/8に、

いや、マジでなんで外国籍の作家さんがここまで露骨に日本で政治活動しているのか、私には意味が分からない。この方の芥川賞授賞式の発言やツイートからは、安倍前首相や自民党に対するヘイトが迸りすぎていて怖い

と、芥川賞を受賞した李 琴峰に対する差別的なツイートをした。このようなことを言う者は他にもいるが、政権擁護を繰り広げるケント ギルバートやフィフィには、彼らも政治活動をしているのに同じことを絶対に言わない。
 知念は李本人やその他から多くの批判に晒された結果、

『外国籍の方の政治活動は禁止されている』という私の思い込みで発言してしまいました。調べたところ政治資金等の制限があるだけで、そのような事実はございませんでした

という、にわかに信じられらない趣旨で謝罪し、発言の撤回を申し出た。知念は作家でもあるのに民主国家における表現の自由の意味を理解していなかった? 外国籍の者の政治活動は禁止されていると思っていた? ではなぜ急に李だけを標的にそんなことを言い始めたのか。全然合理性が感じられない。
 しかし李は、大人の対応とも言うべき、これで知念とは和解した、という旨のツイートで応じている。

 しかし一方で、李は9/10にこのようにもツイートしている。

日本では外国人差別はまだまだ根強い。すぐに身バレしないSNSでは尚更だ。だから、恐らく李は、この一件の前から誹謗中傷に晒されていただろう。しかしそれでも、これまで彼女はツイッターを続けてきた。このタイミングで「暫くTwitterを離れる」と判断したということは、知念が犬笛を吹いた所為で、これまで以上に誹謗中傷が集中した恐れがあり、その影響でそうせざるを得ない、ツイッターと距離を置く決断をした、という恐れが強い。
 つまり、知念の撒いたデマによって、彼が間違いでしたと謝罪したところで、それだけでは済まない事態が引き起こされた、ということだ。

 これと同じことが八代のデマにも言える。ひるおびは恐らく週明けの放送で、八代のデマについて間違いと認め、司会者か同局アナウンサー、もしくは八代自身に謝罪をさせるだろう。しかし、八代がデマを撒き散らした9/10の放送を見た者すべてが、週明け9/12の放送を見るとは限らない。多分一部のスポーツ新聞やWebメディアでもとりあげられるだろうが、それでも一度吐いたデマは完全には消えない。
 共産党に関する特集を組みデマとのバランスをとる、ということも出来るだろうが、選挙直前であることを考えると、共産党の特集だけをやる、というのも問題がありそうだ。そんな取り返しのつかないことをやったのが八代であり、その場で否定しなかった他の出演者や番組関係者にも、間違いなく重い責任がある。それに対して責任を果たすということは、例えば番組を打切り、ことの深刻さ、重大さを世間に最大限伝えるように努めるとか、番組自体を打切りには出来ないなら、発言を行った八代だけでも降板させ、デマを放送に載せたことの重大さを、他のメディアにも取り上げてもらえるように努めるのが筋だ。

 そのようなことをやらずに、謝罪だけで済ませようというのなら、既に書いたように、TBSは、安倍や麻生、そして政府や与党関係者の嘘、いい加減な発言を批判・指摘できる立場でなくなるし、それは報道機関としての死を意味することになるだろう。


このブログの人気の投稿

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。