傀儡(かいらい・くぐつ)とは操り人形のことだ。傀には、大きいく立派、怪しいもの/モノノケなどの意がある。そしてこれ一文字だけで操り人形の意もある。儡は、儡れるで、やぶれる(敗れると同じ意)/おちぶれる(落ちぶれる)/つかれる(憑かれる?)と読むそうで、これにもまた一文字で操り人形の意味がある。
言葉の成り立ちを少し調べてみた。傀儡という言葉の日本語の語源には諸説あるようだが、日本語としては、同じ字で同じ意味の中国語を取り入れた言葉だそうだ。しかし中国語の方の傀儡の語源に関する記述は、殆ど見当たらず、見つけ出せたのは、神奈川大学の研究報告書「非文字資料から人類文化へ 04 方相・傀儡・郭禿・鍾馗 -「天籟」もう一つの身体技法-」の中にある、
そもそも漢語の「傀儡」とは何か、とりわけ古代中国における「傀儡」が何を意味していたのかが本国でもまだ定説といえるものがなく、甲論乙駁状態であることがわかり、日本のクグツを考 える前にこの「傀儡」を検討せざるを得なくなっ た
という記述だけだった。
これによると、中国語で傀儡が人形や人形劇を意味するようになるのは宋の時代以降なのだそうだ。それ以前は人形を意味しないことがしばしばで、また別の漢字を用いて表記していることも多く、他の意味でも用いられていて一定しないらしい。冒頭で傀と儡という漢字が持つ意味について紹介したが、その中には後から足された意味もあるんだろう。2つの文字が共に持つ操り人形という意味は、まさに傀儡という言葉が操り人形を指すことから生じた意味なのかもしれない。
傀儡の由来が何であれ、現在では操り人形を指すことは間違いない。純粋な操り人形から派生して、傀儡は、自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用されている人のこと、つまり操り人形のように誰かに操られている人のことも指す。
戦前日本は、朝鮮半島の権益を巡る日清戦争及び日露戦争の結果、朝鮮半島を支配下に収め、それと共に中国東北部にも進出し占領した。中国東北部を占領した日本陸軍・関東軍は満蒙領有計画を画策したが、陸軍首脳部がこれに反対し、形式的な独立国家を設けることになった。それで出来たのが満州国である。しかし独立国家とは名ばかりで、実質的には満州国は日本・関東軍が操る傀儡国家だった。
日本がその満州国皇帝に据えたのが、清朝最後の皇帝、所謂ラストエンペラーの愛新覚羅 溥儀だった。なので溥儀には、満州国そのもの以上に傀儡の象徴というイメージがある。
今日のトップ画像は、この満州国皇帝時代の溥儀の写真を使った風刺コラージュである。顔は9/29に自民党の新たな総裁に選ばれ、10/4に臨時国会で第100代となる新総理大臣に指名される見通しの岸田 文雄だ。なぜ岸田を溥儀の写真とコラージュしたのかと言えば、岸田は傀儡としか思えなかったからだ。
岸田は総裁選での当選後「わが国の民主主義が危機にある」と述べたが、「多くの国民が「政治に国民の声が届かない」「政治が信じられない」と切実な声を上げていた」とも言っている。国民の声を無視してきたのは誰か。国民が信用出来ない政治はどこがやっていたのか。それは間違いなく自民党である。憲法の規定を蔑ろにして国会召集を避け続けてきた党の人間が、所属政党による内閣が国会召集を避け続けてきたことに一切異論を呈してこなかった男が、つまり日本の民主主義を危機的状況に陥れてきた側の人間がそんなことを言う。岸田・河野・高市・野田という4人の総裁候補の中では比較的マシな方ではあったかもしれないが、結局岸田も、腐っても鯛ならぬ、マシでも自民党でしかない。
岸田新総裁のあいさつ要旨:時事ドットコム
「生まれ変わった自民党をしっかりと国民の皆さんに示し、支持を訴えていかなければなりません」、岸田は総裁選後の自民党両院議員総会でこんなことも言っていた。生まれ変わるとはどのような意味か。一般的に考えれば、これまでの悪い部分を反省し改善する、という意味だろう。しかし岸田はそもそも、日本が民主主義の危機と言いつつ、その危機の原因を明確に示さなかった。いや、自分も原因の一部である為にボカすしかなかった。何が悪いのか、改善すべき点は何かを正確に把握出来ない人には改善は出来ないし、反省も当然出来ない。いや、反省も改善もするつもりはないから、改善すべき点、問題点を正確に把握しようとしない、その両方だろう。なんにせよ、それでは生まれ変わることなど不可能だ。
岸田文雄氏「生まれ変わった自民党、国民に示す」とアピール:朝日新聞デジタル
更に岸田は「生まれ変わる」という発言の後にこう続けている。「総裁選は終わりました。ノーサイドです。全員野球で自民党が一丸となって衆院選、参院選に臨んでいこうではありませんか」これを見て、新総裁に変わって首相も変わるから、これまでの与党・政府の問題はこれ以上追求しません、皆さんが指摘されている問題を私は不問とします、と岸田が言っているようにしか見えなかった。
この時点で、ああ何も変わらないな、と思ったし、岸田はこれまでの政府与党の問題に積極定に向き合う姿勢すら見せていないし、そして案の定、岸田総裁の下での党新人事は、安倍/菅政権下で問題を指摘された閣僚/党幹部らの登用オンパレードだった。
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麻生や甘利、河野は最早説明不要、選択的別姓や同性婚に明確に反対している高市を政調会長に据えた。つまりそれらを実現するつもりはないということだろう。茂木や鈴木、松野なども安倍政権時代に問題のある発言をしている人物だし、小渕は大臣を辞任に追い込まれた政治資金の不適切流用の問題で、証拠隠滅を図っている。本人は否定しているものの、高木は下着泥棒で逮捕された過去がある。
岸田の言う「生まれ変わる」とはこういうことだ。自民党の人達はどれだけ日本語を破壊しても満足せずに、これからも破壊の限りを尽くすつもりなんだろう。登用した人達を見れば、これまでの安倍菅路線を踏襲することは明らかだ。つまりは岸田は、自民党長老たちの単なる傀儡に過ぎないとしか言えない。