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他者の失敗を反面教師に出来ない国民性

 先生と呼ばれる職業は医者・弁護士・政治家など複数あるが、その最たる存在はやはり学校の教員だろう。先に生きると書いて先生と読む。場合によっては年少者が先生になり年長者が生徒になることもあるし、褒め殺しのような用法でも用いられることもが、基本的にはその道の先達のことを敬って先生と呼ぶ

 つまり、先生とは生徒の手本となるべき存在であり、言い方を変えれば手本になるような人物だから先生と呼ばれる。これまで自分が先生と呼んできた人達には、手本にしたいと思える尊敬できる人もいたが、全く尊敬出来ない人もいた。しかし、日本の学校では尊敬に値するか否かにかかわらず、兎に角教員を先生と呼ばせる。そんなところにも教育の矛盾がある気がしてならない。

 いじめの問題も不登校の問題も、もうずっと問題が存在しているのに、このような記事が後を絶たない。理不尽で非合理的な人権無視の所謂ブラック校則の問題にしても、1980年代からその異様さに対する指摘があって、2010年代には確実に社会問題化したにもかかわらず、相変わらずこんな対応をする学校が存在する。しかもそこには人種差別的な側面も含まれている。淫行教師も同様に後を絶たない。
 学校を運営しているのは勿論教員だし、教育委員会だって教員、つまり先生によって構成されている。まともな教員など一切いない、とは言わないが、いつまでもこのような話が後を絶たないということは、先生とは呼べない先生もかなり多いということだろう。現実問題として諦められる人ばかりではないが、もう日本の学校に何かを期待するだけ無駄なのではないだろうか、とすら思えてくる。

 手本にならない人や、悪い見本のことを”反面教師”と言う。この反面教師という言葉は比較的新しく、毛沢東の言葉がその発祥なのだそうだ。

 反面教師と似た言葉には”人の振り見て我が振り直せ”や、”他山の石”などがある。それらじはどれも、他の人の悪いところや失敗を、同じ様な過ちや失敗を自分が犯さないようにする為の参考にすべきだ、ということを示す。前段で示したようなケースがいつまで経ってもなくならないということは、日本の学校や教員には、人の振り見て我が振り直せ、他山の石を実績できない、馬鹿げたことをやった学校や教員を反面教師にできない人が多いということになる。
 生徒や児童に人の振り見て我が振り直せと教える立場の人達が、自分達はそれができないのだ。自分達の悪いところを変えられないのだ。他の地域がどうかは別として、日本ではそんな人達を、単に教員という立場にあるだけで先生と呼ばないといけない。


 人の振り見て我が振り直せ、他人の失敗を反面教師に出来ないのは教員だけではない。今の政府内では何度も捏造・改竄・隠蔽が繰り返され、それが発覚する度にそれを隠そうと嘘が横行する。また政治資金規正法や公選法違反で辞職する大臣も後を絶たない。もしかしたら同じ過ちを、いつまでも何度も頻繁に、繰り返すのは日本の国民性なのかもしれない。なぜなら、そんな政府の支持率が未だ50%近くもあり、その政府を構成する与党が政党別支持率のトップだからだ。

 経済界・経営者も同様で、他者・他社の失敗を他山の石・反面教師に出来ない人がいる。「ぼくたち1週間で「18万1379円」稼ぎました! / チーム「マネーがあんまねー」|高校生よ、ショーバイせよ!|HS編集部|cakes(ケイクス)」という記事が話題になったのだが、その記事の冒頭には、

現役高校生たちが、いよいよ商売に挑戦! その中で、あのDMM亀山会長に「商魂たくましい、おもしろい」と言わしめた男子高校生チームがあります。1週間で稼いだ金額は18万1379円、利益率は約65%。彼らは一体、どんな商売をしたのか?

とある。DMM会長が「商魂たくましい、おもしろい」と褒めた高校生たちが何をやったのか、が問題で、代行業と称してコミケで同人誌購入を代行するということをやった。実際にやったことが純粋な購入代行ならそこまで問題にならなかったのかもしれないが、

チームの資金9万9000円をぜんぶグッズ購入にぶっ込んで、それで返ってきたのが28万5210円。限定100部の1000円の本がなんと6万円で売れたってこともあって、交通費とか引いても、利益として18万1000円が残りました。やったあ!って。

とあり、1000円の本を6万円で売るなんてのは、代行と言うよりも高額転売でしかない。
 転売行為の標的にされると、それにより一時的に商品の売上が向上したとしても、本当に欲しい人に商品が行きわたらなくなり、欲しいものが手に入らないことで冷めてしまう人が出てくる恐れがある為、結果的に、転売行為に食い荒らされるとそのコンテンツが衰退する懸念が生じる。そのような懸念があるから、ガンダムのプラモデルを販売しているバンダイは、転売目的の購入を排除する為に公式通販サイトの規約を変えたり、転売価格がダブついて儲けを出しにくくする為に再販量を増やすなどの対策を行っている。

 再販で対応できるような体力のある企業、再販ができるような商品ならそんなことも可能だが、たとえばコンサートのチケットのように、再販がそもそも出来ない商品だってある。同人誌作家には売れ残るリスクを抱えてまで再販できるような人は少ない。そんな高額転売行為を、コンテンツビジネスを手広く手掛け、しかも同人誌も扱っているDMMの会長が褒めたのだ

 これがなぜ人の振り見て我が振り直せ、反面教師と関係があるのかと言えば、今年の7月に、模型雑誌のホビージャパンの編集者が、「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られているのが面白くないだけだよね」「頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは」などと、転売や買い占めを容認するSNS投稿をやって、当該編集者は退職処分、その上司に当たる者3人が降格という厳しい処分を科されるケースがあったからだ。

 厳しい処分の裏には、前述のようにバンダイなどが転売行為に強い懸念を抱き、実際に排除する為の策を講じており、模型雑誌として模型メーカーから総スカンを食うと仕事にならなくなってしまう、という事情があるからではないか、とも噂された。
 にもかかわらず、同人誌通販大手でもあるDMM会長が、高額転売行為を褒めるということをやったのが今回の件だ。この件によって実際に、もうDMM(FANZA)には出品しないと言っている作家も複数いる。

 また別の面の問題もある。これは当該記事にある、高校生たちが転売した同人誌のリストの一部なのだが、

このリストにはR-18指定、つまり18歳未満には販売しないことになっている同人誌の恐れのあるものが含まれている。

 個人的に、未成年者に一切セクシャルなものを見せるなという意見には反対だが、それでも、DMMとしても建前上成人向け作品は未成年者に販売しないことになっているのに、公に購入を褒めるのはどうか。リストには作品名がなく、もしかしたらR-18指定でない作品を転売した可能性もあるが、もしも成人向け作品の転売をDMM会長が褒めたということなら、2重にまずい、とうことになる。


 同じ過ちを繰り返さないようにする為には、正しく現状を把握し、何がまずかったのか、どこに問題があったのかを正確に認識し、その認識に基づいて改善することが重要だ。認識がダメなら適切な改善には繋がらない。
 自分の小学1年生時の担任は、謝る際には単に「ごめんなさい」ではなく、「○○してごめんなさい」と必ず言わせた。それは、何が悪かったのか、何を失敗したのか正確に認識して同じ過ちを繰り返さないようにさせる為だ。
 DMM会長は批判を受けて謝罪を示したが、

「ハイスクールショーバイ!」cakes記事について|プレスリリース|DMM Group

この度はクリエイターの皆様、コミックマーケット準備会の方々をはじめ、多くの方に、不快感を与えてしまったこと大変申し訳ありませんでした。 弊社もあらゆるクリエイターの皆様の作品を取り扱わせて頂く業務を行っております。 故に作品を生み出す苦労を知っておりながら、配慮に欠けた発言をしてしまったこと、心からお詫びいたします。 今回の件はすべて自分の責任であり、前途ある高校生らには寛容な対応を頂ければありがたく思います。 今後は軽率な言動を謹み、信頼回復に努めたいと思います。 本当に反省しております。申し訳ございませんでした。

 不快にさせた、配慮に欠けた云々と言っているのを見ると、何が問題だったかを直視していないとしか思えない。不快にさせた、配慮に欠けた、ということは、実際には悪いことをしたわけではないのに、悪いことをしたと思われただけ、それは私の問題ではなく私の発言を聞いた/見た側の認識の問題、と言っているにも等しい。問題は聞いた/見た側の不快感ではない。問題が何なのかを直視しない者は同じ過ちを繰り返す恐れが強い。これはこの人に限った話ではなく、政治家や他の人でも同じ事だ。
 事実として、不祥事を起こした政治家はこの手の不快感云々という謝罪をよくやる。しかしそれで許す党からは、同じ様なことをやる者が次から次へと出てくる。それが”問題を直視しない者は同じ過ちを繰り返す”ことをよく物語っている。

 ちなみに、DMMの会長は2019年にこんなことを言っている。


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