スキップしてメイン コンテンツに移動
 

ピンぼけ

 カメラの焦点があっておらず、ぼんやりとしてしまった写真や映像のことをピンぼけと呼ぶ。これはピントがぼけるの略だ。最近のカメラやスマートフォンはオートフォーカス機能が優秀で、大して意識をせずにシャッターを押しても、意図的にピントを外そうとでもしない限りピンボケになることはほとんどない。

 この冒頭の文章を書いて思った。最近のカメラでピンぼけ写真が少ないのは、オートフォーカスが優秀だから? ピント?フォーカス? Focus は英語だけど ピントは? 調べてみたら、ピントは オランダ語で焦点を意味する brandpunt に由来する和製外来語とのことだった。

 コトバンクのピンぼけの解説にもあるように、焦点の合わないボケた写真をピンぼけと呼ぶことから転じて、発言の内容や主張がその場の主な論点から外れていること、要点を捉えていない、要領を得ないことも、ピンぼけ意見とかピントのボケた話、なんて言ったりもする。

 昨日は2021年10/31投開票予定の第49回衆議院選挙の公示日で、正式に選挙期間に突入した。政治家とはしばしばピンぼけの話で責任から逃れようとするものだが、選挙期間になると、ピンぼけの話を政治家や政党が大々的にやるのは当然のこと、その支持者らもそれに乗じて同じ様な話による擁護や称賛をやり始める。そんな人達は右派左派の両方にいる。だから一見もっともらしい話でも、果たしてそれは本当にピントがずれていないか、をよく考えなくてはならない。
 それは決して政治だけの話ではなく、詐欺や詐術に引っかからないようにする為には常に心掛けておく必要があるのだが、逆に言えば、政治の世界にも詐欺師のような人や、詐術を平然とふっかけてくる人がいる、ということだ。


 安倍政権で法務大臣に任命された河井 克行と、その妻で同じく国会議員だった河井 安里による公選法違反・買収事件に関して、6/18に東京地裁は河井 克行に懲役3年の実刑判決を下した。克行は判決を不服として即日控訴していたが、控訴を取り下げる意向に転じたそうで、近日中に実刑が確定する見通しである、と10/19に報道された。安里は既に執行猶予付きの有罪が確定している。

 しかし、首謀者2人の有罪と刑罰が確定しただけでは、この件は終結したとは言えない。まず、2人は地元議員や後援会などの関係者に金を渡して買収を行ったが、地元議員らは誰一人罪に問われていない。

 また買収資金の出どころも未だ未解明である。自民党本部は、買収が行われた2019年参院選前に河井陣営に1億5000万円を渡しており、その額は、同じ選挙区で同じく自民の現職候補だった溝手 顕正に与えた政治資金 1500万円の10倍だった。如何に異様な額が、選挙前に自民本部から河井陣営に渡ったかが分かる。そして、この1億5000万円もの政治資金の収支が2020年11月の時点でも不明とされていた。

 克行の公選法違反に関する裁判の中で、陣営の元会計担当者が「自民党本部からの入金が原資となった」と検察に話した調書が示されたが、克行は「買収には1円たりとも使っていない。全て私の手持ち資金から支出した」と主張、買収資金の出どころは事件の重要なポイントであるにもかかわらず、ほとんど審理されずにそのまま有耶無耶なったままだ。

 自民党本部側は9/22に、1億5000万の大半は機関紙やチラシの作成などに使われたとし「1億5000円から買収資金は出していないという報告があった」と、河井陣営の報告を根拠にした発表を行った。

 買収資金の出どころをしっかり追求しなかった検察、そして公選法違反を犯した側の言い分を根拠に、党として問題はないとする自民党、更には、「1億5000円から買収資金は出していないという報告があった」と、誰から誰に報告があったのかをぼかした記事を書いたり、克行が控訴を取り下げる意向を示しているとする記事に、買収資金の原資は解明されていないと書かず、あたかも事件は全面終結したかのように暗に演出する新聞等のメディアにも、強い不信感を覚える。あっちもこっちもピンぼけだらけ、という感しかない。


 数日前から話題になっている、野党議員や政権に批判的なマスコミに対しする誹謗中傷やデマをツイッター上で撒き散らしていたアカウント・Dappiに関しても同様で、この件について取り上げた大手メディアは、自分の知る限りでは東京新聞とTBS・報道特集、そして朝日新聞だけだ。政府や与党による世論操作、しかも中傷やデマによる印象操作の疑いもある、この重要な件を一切取り上げていないメディアは、ピンぼけを量産する性能の悪いカメラのようなものだ。

野党攻撃ツイッター「Dappi」が自民党と取引⁉ 正体はIT企業 ネット工作まん延か:東京新聞 TOKYO Web

 立憲民主党の小西 洋之が、当該アカウントによる名誉棄損に関する訴えを起こし、情報開示が認められた結果、同アカウントは、自民党本部や幹部らが主要な取引先になっている、Webサイトなどの運営を行っている企業のものだったことが発覚した。
 BuzzFeed Japanによれば、同企業の取引先銀行には大手銀行の衆議院支店の名前があり、しんぶん赤旗によると、社長は自民党本部事務総長の親戚なのだそうだ。

 官房機密費や政党の組織活動費に関しては依然として不透明な部分が多いという指摘がある。もし誹謗中傷やデマを撒き散らしたSNSアカウントに、政府や与党が間接的にでも関与していたなら、それはかなり深刻な問題だ。数日前にオーストリアでは、政府が世論調査改竄に公金を支出していたことが発覚、首相が辞意を示した。


 いったいいつから日本の政治や報道は、こんなにピンぼけだらけになってしまったんだろうか。そうなってしまったのは、有権者がピンぼけをなんとも思わなくなっているからでもある。
 カメラのオートフォーカス性能が向上したのは何故か。それはユーザーがピンぼけ写真を基本的には好まないからだ。誰だって手軽にピントの合った写真が撮れるカメラが欲しいと思うもので、だから自動で被写体にピントを合わせる機能のオートフォーカスが登場し、更にその精度や速度が向上してきた。敢えてピンぼけ写真を撮る為に、勿論マニュアルフォーカスできるカメラやレンズもある。しかし基本的には誰もピンぼけ写真を好まない。
 大抵の人はピンぼけ写真を量産するカメラは買わない。ならば、ピンぼけ発言を量産する政治家や政党、ピンぼけ記事ばかり量産する新聞やテレビ局もボイコットするのが自然だろう。拒否しないからピンぼけが量産される。それとも日本の有権者の大半は、ピンぼけが分からないくらい目が悪いんだろうか、センサーの感度が低いんだろうか

 この数日選挙に行くこと、投票することは紛れもない意思表示であり、意思表示しなければ何も変わらない、意思表示する人達の養分にされかねない、ということについて書いてきた。政治だけでなくピンぼけメディアに対してもユーザーは意思表示をすべきだ。ピンぼけ記事や報道ばかりやるメディアの記事・番組は見ない、読まない、批判する、そんな姿勢も必要だろう。


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。