事実をおおい隠すために、他の物事・状況をよそおうことを偽装と言う。実際には殺人なのに、犯人が罪や追及から逃れようとして自殺に見せかけることを偽装工作と言ったりする。また2007年には、企業による食品の産地や消費/賞味期限などの偽装が相次いで発覚した。
業績をよく見せかけようとすることを目的に、企業が業績を改竄する粉飾決算もしばしば起きる。2011年にはオリンパス、2015年には東芝の粉飾決算が発覚している。
建設業の受注動向を示す建設工事受注動態統計のデータを、国土交通省が2013年から改ざんしていたと朝日新聞が12/15に報じた。データはGDP:国内総生産算出にも使われており、政府によってGDPの数値が偽装されていたということにもなる。企業が同じことをやれば粉飾決算と言われることを政府、いや自民党政権・安倍政権がやっていた。
東京新聞が、国交省のデータ改ざんに関してこんな記事を掲載している。
財務省は「改ざん」で国交省は「書き換え」なのはなぜ?:東京新聞 TOKYO Web
日本の大手メディアは、現在この件について、改ざんではなく書き換えという表現を用いている。なぜ書き換えという表現を用いているかについて、財務省の改ざん問題と比較して記事化し、森友問題の決裁文書改ざんは、不正を隠すために行われたことが既に明らかになっているので「改ざん」、国交省の統計データ書き換えはまだそれが明らかになっていないから「書き換え」だと説明している。
そんなアホな話があるか。なんの為にデータを書き換えたか?そんなのは誰の目にも明らかだ。数字をよく見せかける為、GDPをよく見せかける為以外にありえない。そもそもデータの書き換えそれ自体が不正であり、最初の改ざん・不正を隠す為に更なる改ざん不正が重ねられたのは明らかで、書き換えなんて表現を使うのは矮小化以外の何ものでもない。
つまり、企業がやれば粉飾決算として処罰の対象になるような偽装を、この期に及んで、改ざんという事実をおおい隠そうとして書き換えという表現を用いる政府に、メディアが迎合して一緒になって偽装をやっている、という、何重かの偽装が行われているのがこの件だ。
弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する敵基地攻撃能力の保有も含め「あらゆる選択肢を排除せず検討する」と、12/6に第207臨時国会での所信表明演説で強調した首相・岸田に対して、東京新聞が「敵基地攻撃能力について、抑止力を高める趣旨と発言しているが、そもそも他国領域での攻撃に主眼を置く装備の保有は憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢と相いれないのではないか。伝統的な防衛戦略を転換するほど安保環境が厳しさを増しているということか」と質問したところ、岸田は、
憲法上許されない、性能上もっぱら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有する考えはない。専守防衛の考え方を変更する考えもない
と回答したそうだ。
「攻撃的兵器を保有する考えはない」 「敵基地攻撃能力」巡る本紙質問に岸田首相が書面回答:東京新聞 TOKYO Web
では一体、自民党や現政府の言う敵基地攻撃能力とは一体何を意味しているのか。もう全く支離滅裂としか言いようがない。
岸田は「性能上もっぱら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有する考えはない」と言っているが、東京新聞が質問しているのは「他国領域での攻撃に主眼を置く装備の保有」は憲法に反するのではないか、という話である。つまり岸田は、敵の基地を攻撃する武器は、国土の壊滅的破壊の為にのみ持ちいられるものではないので攻撃的兵器ではない。だから敵基地攻撃能力は憲法に反さない、と暗に言っている。
そんなのは間違いなく詭弁だ。確かに、刀は包丁の代わりに野菜を切ることもできる。しかし刀は調理器具ではなく武器である。それを護身の為にしか使わないと誰かが言ったところで武器には違いない。岸田が言っているのは、刀は武器ではなく調理器具だ、のような類の詭弁だ。
日本は憲法9条で武力の保持を放棄している。だから建前上、自衛隊は自衛の為にのみ存在する、他国の軍隊とは一線を画す存在だということになっている。だから自衛隊では、戦車のことを特車と呼んでいた。軍艦のことは今も自衛艦/護衛艦と呼んでいる。これもある種の詭弁ではあるが、現在の社会情勢に鑑みれば、全く防衛の為の方策を有さないことには無理がある。だから、自衛隊は軍隊ではく防衛組織というのは、それと専守防衛方針を両立させる為の、嘘も方便と呼べる範囲の詭弁だろう。
だが、空母は専守防衛の方針に反するという理由で、日本の政府は戦後一貫してその保有を否定してきたが、第2次安倍政権下で呼称を多用途運用護衛艦とすることで空母の保有を正当化し始めた。
また、第2次安倍政権下では、日本による武器・兵器の輸出を原則的に禁じる武器輸出規制・武器輸出三原則を、武器を防衛装備と言い換え、輸出を移転と言い換えることで骨抜きにした防衛装備移転三原則への変更もしている。
このような詭弁がまかり通ってしまえば、そしてこのまま偽装を厭わぬ自民党政権が続けば、近い将来彼らは、核兵器ではなくて防衛の為の敵基地攻撃能力だから、核武装も憲法違反にならないと言い出すだろう。それをさせない為に日本には非核三原則があるが、岸田の支離滅裂な説明がまかり通っている現状に鑑みれば、そして安倍が武器輸出三原則を骨抜きにしたことを勘案すれば、非核三原則だって強引な詭弁で骨抜きにされかねない。
この国は既に、政府による偽装が公然とまかり通ってしまい、そしてメディアもそれに迎合してしまう状況になっているのだから、もう何が起きても不思議ではない。