スキップしてメイン コンテンツに移動
 

警察の役割は、第一に犯罪の予防

 以前住んでいた家の近くに、平日の9:00から16:00に限って右折禁止の場所があった。恐らく通学路の交通量抑制と、片側一車線の路線バス経路上であり、右折待ちによる渋滞の抑制などの理由でそのような規制がされていたのだろう。

 しかし自分は、平日の日中に家にいることが少なく、そこがその時間帯右折禁止であることを認識していなかった。勿論直前に道路標識はあったが、夜間に通ることがほとんどだった為に、その標識を意識したこともなかった。
 たまたま何かで有給休暇をとって、平日の昼間にバイクで出かけ午後15:00頃にそこで右折すると、右折した先でパトカーが待ち構えていて、停車させられて反則切符を切られた。警察官は「あそこ、標識を見落とす人が多いからよくここで取締りをやってるんですよ、近所なのに知りませんでしたか?」と言っていた。だが、前述の理由で自分は知らなかった。確かに自分は右折禁止の標識を見落として違反を犯したが、全然納得がいかなかった。見落とす人が多いなら、標識の掲示の仕方にも問題はあるんだろうし、違反や事故の予防の観点から、右折した先で待ち構えて取り締まる前に、ドライバーが標識を見落とさないようにその手前に警察官を立たせてアピールすべきなのでは?と思った。
 このように、右左折禁止や一時停止、Uターン禁止などの違反が多い場所で、警察官らが身を伏せて待ち構えて、違反させて取締りをやるケースは少なくない。違反が多い場所なら、その道路等に構造的な問題があるんだろうから、まずは物理的に違反できないように対策すべきだろうし、それが難しいなら、違反が起きないようにまず予防をすべきだ。


 警察法第2条では、警察の責務を規定している。

第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。 
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。

条文を読んでも分かるように、警察の責務はまず「個人の生命、身体、財産の保護」がその任務だとし、そして次に「犯罪の予防」だと言っている。また「公共の安全と秩序の維持」「公平中正」という文言もある。
 交通違反が起きやすい場所で交通違反をさせて取締るのは、「犯罪の予防」「公共の安全と秩序の維持」にそぐわないのではないか。まずは違反が起きないように予防すべきで、違反を予防することこそが公共の安全と秩序の維持に繋がる。違反が行われたらその時点で安全と秩序は維持できていない。安全と秩序の維持にはまず違反の予防が最優先だろう。


 ここまでの話は、実は今日書きたいことの前振りである。ここまでの話で何を強調したかったのかと言うと、警察の役割はまず第一に、犯罪の予防・抑止である、ということだ。予防は被害を出さない為の、つまり個人の生命、身体、財産の保護の為の最善の策だ。

大学入学共通テスト終わる “事件や津波情報 異例の2日間” | 共通テスト | NHKニュース

 これは、国公立大学受験や一部私立大学受験にも使用されている大学入試共通テスト(以前の呼称は大学入試センター試験)が、1/15・16に行われたことを伝えるNHKの記事だ。記事には、再び感染爆発が生じている新型コロナウイルス感染拡大の影響、1/15に発生したトンガの大規模火山噴火の影響で津波警報や避難指示が出されたことの影響などについても触れている。また、同じく1/15に試験会場の1つだった東大付近で受験生らが切りつけられる事件が発生したことで、警備が強化されたこと、一部の試験会場では警察が常駐したり警備員が学内を巡回したりして対応した、とも伝えている。記事のサムネイル画像は、試験会場で警戒する警察の様子を撮影した写真だ。

 一方で、試験前日の1/14の夕方に、毎日新聞がこんな記事を掲載していた。

「痴漢祭り」 大学入学共通テスト前、ネットで予告相次ぐ | 毎日新聞

 受験生は試験に遅刻したくないから痴漢しても通報されない、だから「共通テスト痴漢祭り」だ、そんなSNS投稿が多く見られ、また実際に「以前友達が試験当日に痴漢に遭った」「試験当日は痴漢が増える」という話も多い、ということに関する記事である。
 これは神奈川地方版の記事のようで、神奈川県警が

県内54署に対し、試験当日は午前7時半~8時半の間、警察官が管内の駅のホームや改札口に立って警戒するよう呼び掛けた。さらに、駅周辺では赤色灯をつけたパトカーで巡回するよう通知した

とも書かれている。SNSを見ていると他の自治体でも、警察が予防・抑止に動いた、のような話が幾つか目についた。

 しかし、この受験生の事情につけこんだ痴漢行為は、決して今年初めて話題になったわけではない。少なくとも数年前から話題になっていた。だが、警察が特段の対応を行った、という話は、今年初めて目にしたように記憶している。一応昨年、一昨年の試験時期に期間を区切って、痴漢と入試や共通テストなどでGoogleにてニュース検索してみたが、SNSなどにおける指摘を記事化したものは幾つか見つかるものの、そのどれにも、警察が特段の対応・警戒を行った、という記述は見つけられなかった。
 もしかしたら、実際には、これまでもその時期に警察が何らかの対応を行ってきたが、発表・公表されていなかっただけ、発表・公表はされていたがメディアが記事化していないだけ、という場合もあるかもしれない。いや、今年神奈川県警は注意換気や抑止をSNS上でも展開しているようだから、昨年までも警察が対応しそれを公表していたが記事化されていなかっただけ、ということは考えにくい。そしてこれまでの通勤経験上、警察がこれまでも入試の時期に痴漢の警戒を強めていた、とも考えにくく、何年も前から指摘があったのに、今年になって警察がやっと予防・抑止に乗り出した、というのが実態だろう。

 通り魔的な暴力事件には即座に警戒を強めるのに、指摘や実害が多数あったのにこれまで痴漢予防・抑止対策には消極的だったということは、警察内部にも、痴漢は大した問題ではないから、ことが起きてから対応すればそれでよい、のような認識が未だにあるのではないか。この2つの記事からそんな風に思えた。


 痴漢の被害にあうのは決して女性だけではないが、狙われる者・被害者の大半は女性であることに違いない。つまり、このようなことからも、日本の男尊女卑傾向が見てとれる、と言えるだろう。刃物で切りつける行為と同様に、痴漢だって確実に暴力行為である。でも「減るもんじゃない」みたいな感覚で軽視されることが少なくない。身体的外傷は少なくても精神的な被害は大きく、痴漢に合った人の神経を擦り減っていく。場合によっては深刻な程に。



 トップ画像には、Shibuya Halloween 2019 (October 31) | 渋谷 ハロウィン 2019 (10月31日)… | Flickr を使用した。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。