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敵基地攻撃能力という、まやかし・ごまかし

 これまでにない脅威日本にとって非常に深刻な事態、北朝鮮がミサイルを発射する度に、政府やメディアがそんな風に危機感を煽りに煽っていたのは、安倍自民政権、2017年頃のことだった。

 2017年当時は、北海道や東北、北陸、北関東の広範囲で警報・Jアラートが鳴り、新幹線や在来線などの運転を停止させていた。Jアラートを受けたNHKや民放各局も「国民の保護に関する情報」の速報を画面に表示させ、一部では「北朝鮮からミサイルが発射されたので、頑丈な建物や地下に避難しろ」ともアナウンスしていた。

 今年・2022年が始まってまだ1か月も経っていないが、北朝鮮は既に4回も、日本海に向けてミサイルを発射している。

しかしJアラートが鳴ったという話は一切聞かないし、公共交通機関が運行を一時停止したとか、頑丈な建物や地下に避難しろというアナウンスがあったなどの話も全く記憶にない。それどころか、ミサイルが発射されたという情報は、大抵「韓国軍によりますと」と伝えられる。つまり韓国軍の発表に基づいてミサイル発射情報が報じられる状況だ。

 2017年頃の北朝鮮のミサイル発射に関する、政府とメディアのあの馬鹿騒ぎは一体なんだったのか。当時は安倍自民政権が森友学園問題・加計学園問題で追及を受けていた時期だ。そして2017年10月には衆院選もあった。そんなことを考えれば、北朝鮮のミサイル発射に対する危機感を過剰に煽って政治的に利用していただけなんだろう、という感しかない。それを強く感じさせたのは、2017衆院選後に、当時副首相だった麻生 太郎が、衆院選で自民党が大勝した理由について「北朝鮮のおかげ」と発言したことだ。


 現在、国会やメディアなどで、敵基地攻撃能力、という話が飛び交っている。この敵基地攻撃能力の保有という話の発端も、2017年頃の安倍自民政権だった。北朝鮮のミサイル発射への危機感を煽り、迎撃ミサイルシステム・イージスアショア配備を進めようとしたものの、杜撰な計画が発覚し、更に配備を予定した自治体などの反対され、2019年に計画は頓挫した。頓挫したイージスアショア計画の代替案として安倍が言い始めたのが敵基地攻撃能力の保有だった。


 率直に言って、敵基地攻撃能力の保有なんてのは憲法第9条に明確に違反する。だが、安倍自民政権も菅政権も、そして今の岸田政権も、1956年の鳩山首相による「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとは考えられない」という答弁を根拠に、許容されると主張している。

 自民政権や、敵基地攻撃能力の保有を正当化しようとする人たちを見ていると、馬鹿だな、としか思えない。1/10、日本は米英らと共に、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する声明を発表した。

しかし、北朝鮮にしてみれば、自分達は米国による軍事的な脅威に直面していて、弾道ミサイル保有はその脅威から自国を守る為に必要な措置だ、という名目でミサイル発射実験を行っている。つまり、日本が敵基地攻撃能力の保有を正当化し始めたら、北朝鮮に発射実験・弾道ミサイル保有の大義名分を与えることになり、非難声明は第三者から見ても説得力を失うことになるだろう。
 自民政権が、北朝鮮のミサイル発射を積極的に非難したり、危機感を煽らなくなったのは、日本の敵基地攻撃能力の保有を正当化したいからかもしれない。北朝鮮のミサイル発射を強く批判・非難して「ダメだ!」と言えば、「ならば日本の敵基地攻撃能力の保有もダメだよね?」という話になりかねないだろうから。

 更に言えば、自民政権は原発を積極的に再稼働させる方針なのだが、それもこれらの件と矛盾しているとしか言えない。日本は北朝鮮などから攻撃を受ける危機に直面していて、だから敵基地攻撃能力の保有が必要だと言うのなら、弾道ミサイルの標的にされたら甚大な被害が発生する原子力発電所は、出来るだけ速やかに廃止すべきだろう。
 ジュネーヴ条約で、危険な力を内蔵する工作物等(ダム、堤防、原発など)の保護が定められていて、つまり原発攻撃は国際法に反するからありえない、のようなことを言う人もいる。確かに北朝鮮もジュネーブ条約の同条項に関する締約国の1つだが、それを厳密に履行するなんて保障はどこにもない。北朝鮮は、安保理決議に反して弾道ミサイル発射実験を行っている国でもあることが、その懸念を強く感じさせると考えないなら、それは単なるご都合主義でしかない。


 トップ画像のイメージと、時事通信の敵基地攻撃能力のイメージは印象が異なるが、どんな方法だろうが、敵の攻撃を受ける前にこちらから先に攻撃するなんてのは、単なる先制攻撃でしかないし、敵基地攻撃能力は決して基地だけを攻撃する能力とは限らない
 イラク戦争は、アメリカが「イラクは大量破壊兵器を保有している」として仕掛けた戦争だが、結局大量破壊兵器はどこにもなかった。また、太平洋戦争末期に日本は市街地全般に大量の空襲/爆撃を受けたが、その大義名分は日本から戦争遂行能力を奪う為だった。

 このようなことを考えれば、敵基地攻撃能力の保有なんて話が、如何に狂っていて欺瞞に満ちているか、は明らかだ。


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