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職業選択の自由あははん

 2/11は建国記念の日で祝日だった。建国記念日ではなく建国記念 "の" 日である。戦前は紀元節と呼ばれいていて、敗戦後の1948年に廃止された。数年後の1951年頃から自民党を中心に復活が画策され、紆余曲折を経て1966年に建国記念の日として復活した。

 紀元節は明治政府によって定められた祝日である。つまり近代以降の記念日だ。古事記や日本書紀の記述を元に、日本初代天皇とされている神武天皇の即位日(旧暦の1/1)を、太陽暦に置き換えて2/11と定めたそうだ。紀元とは読んで字のごとく始まりを意味しており、つまり日本が始まった日という意味である。
 日本書紀や古事記などの古い歴史書は、神代、つまり神話を書いている部分が確実にある。戦前、神武天皇は実在したとされていたが、戦後は概ね架空の人物と認識されていて、実在した最初の天皇は10代とされている崇神天皇、場合によっては29代の欽明天皇とも言われている。自分が大学受験をした頃・1990年代の日本史では、欽明天皇以降を所謂日本史として覚えたものだ。

 Wikipediaには建国記念日に関するページがあって、日本の建国記念の日に限らず、各国の建国記念の日、もしくは相当する日についてまとめられている。

多くの国は、他国の支配から脱した日・独立記念日として建国記念日に相当する日を定めていてる。次に多いのは、王政・封建制を脱して共和制や立憲君主制、つまり民主主義を勝ち取った日を定めているケースだ。つまり、現在の体制が成立した日を建国記念日相当の日に定めているケースが殆どだ。
 紀元前の日を根拠にしているのは日本と韓国ぐらいで、他の国はほぼ19世紀以降の出来事をその根拠にしている。ベルギーやハンガリーなど国王の即位日を建国記念日としている国もあるが、それらも全て1000年代以降の出来事だ。これから考えると、日本(と韓国)の史実と神話を区別できなさ加減というか、幻想に溺れている加減というか、中二病っぽさが際立つ。たとえば、キリスト教圏でだってクリスマスやイースターを祝うし、神話に基づいた祝日を否定するつもりはないが、神話と史実を区別出来ているかどうかで言えば、神話に基づいて建国記念の日を定めている、というところに論理性の低さを感じる。
 ただ、韓国には建国記念日に当たる開天節の他に、日本の支配から脱した日、つまり独立記念日を光復節として定めている。また、日本の紀元節、つまり2/11は、1889年に大日本帝国憲法・皇室典範などが公布された日でもある。しかし紀元節が定められたのは1873年のことであり、つまり大日本帝国憲法の公布は後付けで日付を合わせて公布されたものであり、そんな意味では、やはり日本の中二病っぽさは否めない。


 日本の建国記念の日とは、そんな風に天皇制と深く関わりのある日である。なので、少し天皇制のことについて考えてみた。
 天皇とは一体なにか。日本国憲法ではそれを国民統合の象徴と定めている。また、間違いなく日本の宗教・神道(皇室神道・国家神道)における最高の地位であることは間違いない。

 今日のトップ画像は、アルバイトニュース(1986年にanに改称)などを発行していた出版社・学生援護会による、女性向けの転職情報誌・サリダのCMの冒頭のカットだ。

 1972年に男女雇用機会均等法が施行されたことで女性の社会進出が始まり、1980年に女性向けの転職情報誌・とらばーゆ(リクルート)が創刊し、女性が転職することを意味する「とらばーゆする」が流行語にもなった。このサリダのCMが放送されたのは1989年前後で、その背景には1985年の男女雇用機会均等法が改正されたことなどもあっただろう。専業主婦世帯と共働き世帯の比率が入れ替わったのもちょうどこのこの頃だ。

 このCMで使われている憲法第22条の歌の、職業選択の自由 あははん という歌詞も当時流行語になった。このCMで歌われている日本国憲法22条では「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定められている。

当時はバブル景気のただ中にあって、つまり就職先は選びたい放題の売り手市場だった。そんなこともこのCMの背景にはある。

 現在はバブル崩壊からずっと続く就職難の中にある。つまり、一部の裕福な人たちをのぞけば、仕事を自由に選べる環境などない。しかし、それは職業を自由に選ぶ自由がない、ということではない。気軽に選べる職業の選択肢が少ないというだけであって、相応のリスクを負って自分のしたいことを仕事にする自由はある。でも、実質的に職業選択の自由がない人が、日本にも存在している。それが天皇だ。
 日本は一応、民主主義で自由主義の国ということになっているが、同時に立憲君主制の国でもあって天皇は今でも世襲である。天皇とは何か。前述のしたように、それは国民統合の象徴であり、皇室神道・国家神道における最高の地位でもある。それは単なる職業とは言い難いかもしれないが、確実に職業としての側面もある。つまり、皇位継承権を持つ天皇家の子孫には職業選択の自由はない。生まれながらにして国民統合の象徴になることが決められてしまう。数年前に、英国王位継承順位第6位にあった王子が英国王室を離脱する、ということがあり、それは日本の皇室においても可能であるとも言えるため、天皇になることを拒否することも厳密には可能かもしれない。だが、そのような状況は確実に一般市民とは異なる為、憲法に定められている自由を保障されているとは言い難い

 天皇と人権に関しては、朝日新聞が2020年の新天皇即位に際して、こんな記事を掲載している。職業選択の自由ではなく、プライバシーや婚姻などの面からその制約・不自由さについて書かれている。

皇族の「人権」どこまで? 目につく「不自由さ」:朝日新聞デジタル

 天皇制の維持を主張し、それを素晴らしいと言っている人たちは、彼らが政治的な主張をし難い、つまり原則的に政府の言いなりにならざるを得ない状況に置かれているのをいいことに、彼らの自由を制限し続けよう、と言っていることを理解しているのだろうか。自分には全くそう思えない。自分は「お前の家は伝統があるのだから、お前の意思などは後回しだ。お前は家業を継ぐべきだ」なんて言われても、そんなのは全く素晴らしいなんて思えない。それを素晴らしいと言う人の気も知れない。天皇家に生まれたんだからお前は国民統合の象徴になれ、なんてのは、ある意味で奴隷扱いとも言えるのではないか。それの一体何が素晴らしいんだろうか。

 自由主義を標榜したいんだったら、やっぱり天皇制なんてのは廃止すべきなんだろう。


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