太平洋戦争は、1941年12/7(日本時間では12/8)の真珠湾攻撃によって始まった。厳密に言えば、英領マレーへの侵攻の方が1時間程早かったらしく、実際はマレー作戦によって太平洋戦争が始まった、というのが正確だそうだが、太平洋戦争の主な相手は米国であり、米国への直接的な攻撃、という意味では、真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった、と言ってもそんなにおかしくはないだろう。
参考として真珠湾攻撃のWikipediaを、日本語版と英語版の両方にリンクしたが、記述がかなり異なるのが興味深い。日本語版は、できる限り真珠湾攻撃を正当化したい、というニュアンスを端々に感じる。転じて英語版では、そのような傾向は殆ど感じられない。どう感じるかは人それぞれだろうが、自分にはそのように感じられる。
昨日・3/16、ウクライナ大統領のゼレンスキーが、米議会でオンラインによる演説を行った。ロシアによるウクライナ侵攻を、
Remember Pearl Harbor, terrible morning of December 7, 1941, when your sky was black from the planes attacking you,Just remember it, remember, September the 11th, a terrible day in 2001 when evil tried to turn US cities into battlefields, when innocent people were attacked from air, just like nobody else expected it and you could not stop it. Our country experiences the same, every day, right now at this moment.
「パールハーバーを思い出してください。恐ろしい1941年12月7日の朝、攻撃機が攻めてきて、あなたたちの国の空が真っ黒になったことを。思い出してください。2001年9月11日、悪がアメリカの都市を戦場にしようとした恐ろしい日、罪のない人々が空から攻撃された日です。罪のない人々が空から攻撃された時、それを誰も予想しておらず、止めることができなかった。私たちの国は同じことを、毎日、今この瞬間も経験しているのです」と、1941年の日本による真珠湾攻撃や、2001年の同時多発テロになぞらえ、その理不尽さを強調し、ウクライナ上空における飛行禁止区域設定を改めて訴えたそうだ。
ウクライナ大統領、米議会で演説 真珠湾攻撃にも言及 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
一部の愚かな日本人たちがSNSなどで、ゼレンスキーが演説でロシアのウクライナ侵攻を真珠湾攻撃になぞらえたことに対して、怒ったり不快感をあらわにしている。真珠湾攻撃は宣戦布告を伴わない奇襲攻撃だった、というのは現在において確定的な事実であり、理不尽な先制攻撃をロシアから受けたウクライナの大統領が、それを真珠湾攻撃になぞらえることは全くおかしくもなんともない。一体どこに憤る要素があるのだろうか。
その種の人たちは、自国が過去に起こした過ちを認めることができずに、荒唐無稽な歴史解釈、幼稚な歴史の歪曲をやっているとしか思えない。でなければ、これに憤るなんてあり得ない。セクハラ行為で訴えられた加害者の側に立ち、「セクハラ罪って罪はない」とか「減るもんじゃない」みたいな馬鹿げた擁護をしたり、訴えた被害者に憤るのと(所謂逆ギレと)同じレベルだ。
日本は戦争に負け、戦前の大日本帝国と決別したのではないのか? なぜ理不尽な先制攻撃を正当化したがる? 大日本帝国が否定されても、それは決して今の日本が否定されたわけではない。むしろ戦前の大日本帝国と現在の日本を、日本人が同一視するようなことをすれば、それこそ日本はロシアと変わらない国だ、と自ら認めるようなものだ。日本こそ大日本帝国の過ちを率先して否定しなければならない立場だ。
自民や維新の政治家や支持者がそのように憤っていても、さもありなん、という感しかなくそれ程驚きはないのだが、現野党第一党の立憲民主党の議員までもがそんなツイートをしているのを見ると、立憲民主党はそんなのを所属させておいて、注意もしなくて大丈夫か?本当によく考えた方がいい、という気分になる。
そんなツイートをしているのは、立憲民主党のベテラン議員 原口 一博だ。
日本の国会でも真珠湾攻撃を思い出せと言うのか?ありえないだろう? に関しては、確かにそれでは、日本はロシアと一緒だ!と言っているようにも受け取る人もいるだろうから、日本の国会で「Remember Pearl Harbor」と訴えることは、共感を得るのには適さないとは思う。だが、演説は米議会で米国に向けて行われたものであり、それについては全然ありえなくなどない。むしろ米議会や米国民の共感を得るのに適した例を挙げたとすら言えるだろう。
原口のツイートが、日本向けには適した例え方ではないよね? という主張なら、それはその通りだ、と理解もできるが、原口が引用したツイートも明らかにゼレンスキーが真珠湾攻撃を持ち出したことに不快感を示し、むしろプーチンへの共感すら示しているし、原口は「ウクライナ国民への支援とウクライナ政権への支援は、同一ではない」とも言っているし、どう考えても、それは日本向けには適さない訴え方だと言っているのではなく、ゼレンスキーが「Remember Pearl Harbor」と、ロシアのウクライナ侵攻を真珠湾攻撃になぞらえたこと自体に対する不満を示しているとしか言えない。
原口は、あいちトリエンナーレ2019 の企画展「表現の不自由展・その後」が、名古屋市長 河村 たかしや官房長官の菅 義偉らからの圧力や、テロ予告にも近い脅迫によって中止に追い込まれた際にも、それは当然である、という種のツイートをした人物である(2019年8/7の投稿)。
立憲民主党は、2017衆院選の際に民主党が分裂して誕生した政党であり、その際に党内右派は希望の党(現在の国民民主)に行った為、膿を出したはずなのに、その後国民民主からの大量合流などによって、原口のような議員が複数いるし、再び以前の民主党のような状態に退化しているとしか思えない。
それは、枝野 幸雄の後に泉 健太が代表に選ばれたこと、その泉 健太の姿勢・振舞いは、民主党最後の代表となった前原を彷彿させることなどにも強く感じている。
最後に付け加えておくと、米議会がゼレンスキーの演説に拍手喝采を送る一方で、在日米軍大使は岸田政権が進める敵基地攻撃能力の保有検討に賛意を示したそうだ。
Remember Pearl Harbor に共感するのに、一方で日本が再び真珠湾攻撃と同様の行為をやりかねない、敵基地攻撃能力の保有と称して先制攻撃を正当化しようとしていることに賛成する? この米大使だけが真珠湾攻撃を忘れてしまっているんだろうか? もしそうならまだマシだが、米政府全体が敵基地攻撃能力の保持と称する先制攻撃の正当化に賛成しているんだとしたら、それはつまり、米国も真珠湾攻撃をやりかねない国ということだ。
例えば、イラク戦争はアメリカが「大量破壊兵器を持っている」と言って戦争を始めたが、実際にはそんなものはどこにもなかった。ロシアはウクライナ東部2地域の平和維持と独立支援の為と称して、ウクライナのその他の地域にも侵攻しているが、アメリカも似たようなことを過去にやってきた国である。