この数年、都合よく使われている表現の1つに「思考停止」がある。正確な発端は分からないが、2016年頃、当時首相だったアベが、憲法改正について議論しないのは思考停止だ! という趣旨の主張をして以来、改憲したい人たちが護憲を揶揄する時によく用いるようになった。
憲法改正めぐり激しい応酬 安倍総理は改めて意欲…|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト
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この「思考停止」というワードはアベのお気に入りで、最近もまた、護憲を主張する共産党 志位 和夫に対して「空想にとどまり思考停止」と揶揄している。しかし志位は、それなりの根拠を示して護憲を訴えている。思考を巡らせた上で護憲を主張しており、決して思考停止とは言えない。アベの主張は単なるレッテル貼りに過ぎない。
安倍晋三元首相、9条による侵略抑止は「空想」 維新も「核共有」議論提言:東京新聞 TOKYO Web
つまりアベは、いやアベに同調して改憲を訴える者の多くも、彼らは自分たちの主張に同調しないことを思考停止と呼んでいるに過ぎない。つまり、思考停止という表現を都合よく、恣意的に使っているとしか言えない。
そう言える理由は他にもある。アベは首相時に、改憲議論をしないのは思考停止だ!
という旨の主張を繰り返した一方で、追求されたくないことや、自分にとって都合の悪いテーマがあると、野党による国会会期延長要求を拒否してきた。臨時国会召集にも応じなかった。招集はしたものの、国会で議論が行われる前に招集直後に冒頭で解散させたりもした。
厳密には、会期延長を拒否したのは与党・自民公明両党なのだが、アベは自民党総裁でもあり、アベも会期延長しないことに賛成していた側だ。いや寧ろ会期延長拒否を主導したのはアベだ。また先程例示したように、自民公明もアベに同調して改憲議論しないのは思考停止だ!と主張した側なのに、追求されたくないことや自分たちに都合の悪いテーマがあると会期延長を拒否してきたのだから、アベ、そして自民公明にも、他者に対して、議論しないのは思考停止だ!
なんて言う資格はない。
アベに関して言えば、最近もまた、都合の悪いことは議論しない、触れない、をやっている。3/25に、2019年に当時首相だったアベの街頭演説中にやじを飛ばした男女2人が北海道警に排除されたことの是非が問われた訴訟について、表現行為そのものを制限しようとしたと推認せざるを得ない、警察官の行為は原告の表現の自由を制限した、という判決が示されたのだが、アベは多忙を理由に、新聞社などからの取材/コメント依頼を拒否している。(中日新聞記事の当該部分は有料の部分)
自民党の安倍晋三元首相事務所は二十五日、判決を受け、記者団の取材やコメント発表といった対応は考えていないと回答した。理由について『多忙のため』としている
また、朝日新聞の編集委員がアベの顧問を称し、アベを取材した週刊誌に記事を事前に見せるよう要求したとして処分された件についても、アベは「コメントを控える」としている。自分に対する批判的な記事を朝日新聞が掲載すると饒舌に異論を呈するくせに、自分にとって都合の悪いことには触れようとしない。これでよくも「議論もしないのは思考停止」だなんて言えたものだ。
他者には「議論もしないのは思考停止だ!」と言いつつ、自分は都合の悪い事への言及を避けるのは、明らかに矛盾しているとしか言いようがない。
この、何かと理由を捏ねくり回してコメントを控えるという手法は、安倍自民政府から菅自民、岸田自民にも受け継がれており、岸田自民政府の官房長官・松野などは、最早何を聞いたらコメントをするのかという程に、コメントを控えるを連発しまくっている。そんな自民が、一体どの口で「議論もしないのは思考停止だ!」と言っているのだろう。自己矛盾が生じないというのはかなり異様だし、日本の有権者がそんな自民を与党に選び続けているのも異様としか言いようがない。
現首相の岸田は、4/10に安倍と会食し、安倍派の松野 博一(官房長官)と萩生田 光一(経済産業相)が同席した、ウクライナ情勢や今後の政権運営について議論した、と伝えられている。
岸田首相、安倍元首相と会食 ウクライナ情勢など議論か | 毎日新聞
自民の中ではマシな方、と言われることもある岸田だが、結局岸田も自民の政治家であり、安倍や菅などの同類ということなのだろう。国会で100回以上も嘘をつき、それを秘書のせいにする責任逃れをやり、しかも持病を理由に「正常な判断ができなくなる」と言って、種々の責任をとらずに投げ出した男の話が、一体なんの参考になるんだろうか。都合の悪い事の無視は徹底的にとか、どんな詭弁や強引な主張でも頑なに言い張れば何とかなる、のようなことを参考にしているんだろうか。