よくある横柄な客エピソードに、コンビニのレジで、「マルボロ」とだけしか言わないのでボックスのマルボロを持っていくと、「ソフトケース」と不満そうに(それくらい察しろよ)という意を込めて言ってくる、なんて話がある。
マルボロには、赤いレギュラーのボックス/ソフトケースの他にも、ゴールドのライト、緑のメンソール、それぞれにボックス/ソフトケースがある。メンソールにも無印とライトがあって、今もあるのかわからないが、ブラックメンソール、アイスメンソール、そしてそれらのうちのいくつかに、少し長い100sもあったりと、一口にマルボロと言っても、どのマルボロかよくわからない。
普通マルボロとだけ言えば赤いレギュラーなのだが、それにしたってボックス/ソフトケースのどっちが一般的かの認識は人によって違うし、中には「マルボロと言えばライトメンソールだろ!」なんて思っている人もいる。タバコを吸う人だってマルボロと言われただけではどれだか分からないんだから、タバコを吸わない店員なら余計に分からないだろう。同じ店で頻繁に買っている常連客なら話は別かもしれないが。
だからコンビニでは、レジの後ろに店に置いてある銘柄をズラッと並べ、それぞれに番号を振ってあって、番号で言ってもらえますか? と店員が言っている場面をよく見る。しかしそれに頑なに応じようとしない嫌な客が、嫌がらせのように「マルボロ」とだけ言っているような場面に出くわすことも結構あったりする。
タイムラインにこんなツイートが流れてきた。
ツイートした人は、前段で例に上げた、頑なに「マルボロ」としか言わない嫌な客のようなタイプを念頭に置いているのかもしれないと思いつつも、この字面のみから判断するなら、こんな上から目線な店員のいる店で買物はしたくない、と思った。自分は調べるのが好きなので、家電製品購入の際は基本的に店に行く前から買いたいものが決まっている決め打ちだが、一般的に言えば、携帯電話を買うなら、どんな機種があるのか、それぞれの違いなどをきちんと説明してくれる店員/店で買いたい、と思うものではないだろうか。
だから、このツイートが万単位でいいねを集めていることにとても嫌な印象を覚えた。数万人単位で「iPhoneには種類があんだよwwwwそんなことも知らねぇのかよwww」と思っている人がいる、ように見えるからだ。
「お前はスシロー行って「お寿司下さい」って言うんか」というのも例として乱暴すぎる。たとえば、外国人観光客などは、寿司屋に入って「お寿司ください」と言うだろう。そんな時に、寿司屋の店員が「寿司って色々ネタに種類があるんだよ?知らないの?寿司だけじゃ分からねぇよwwww」みたいな態度で接客していたら、あなたならどう思う? 自分が不案内な国に行った際に、ローカルフードの店でそんな態度を示されたらどう思う?
日本国内でも、住んでいるのとは違う地域に行ったときは同じだ。たとえば長野にはおやきというご当地メニューがあるが、全国的にはそれほどメジャーなものではなく、それが何かを知らない人もいるだろう。おやきは具を小麦粉やそば粉を捏ねて作った皮で包んで焼いた饅頭状の食べ物だが、中身はあんこ、野菜や山菜など、様々なバリエーションがある。中身にバリエーションがあることを知らずに「おやきください」と言った観光客に対して、「おやきには種類があんだよwwwwそんなことも知らねぇのかよwww」という態度の接客をされたら、あなたならどう思うか? そういうことだ。
当該ツイートをした人は、反響が大きく、自分が感じたような違和を示した人も少なくなかったこと受けてか、こんなコメント画像を含むツイートを当該ツイートに連ねた。
これから判断すれば、やはり冒頭で例示したような、頑なに「マルボロ」としか言わない横柄な客のようなのを念頭においたツイートだったんだろうが、しかし当該ツイートの字面だけでは、そのニュアンスよりも、横柄な店員という印象の方が強かった。少なくとも自分にとっては。
ツイートというのは基本的にはボソッと言う独り言のようなものなので、この件のような言葉足らずなツイートをしちゃいけないとも思わない。誰かをひどく傷つける内容でもない限りは。しかし一方で、言葉足らずなツイートをすれば、読んだ人には込めた思いが伝わらず、思わぬ反応を示されることもある、ということでもある。それでもへっちゃらという人は何も気にする必要はないだろうが、誤解されるのは嫌だ、と思うのなら、できる限り言葉足らずな表現にならないように気をつけないといけない。もしくは鍵をかけて、閲覧できる人を、言葉足らずでも察してくれる人、察することのできる親しい関係の人に限定しておくべきだろう。
ただし、世の中には重箱の隅をつついて揚げ足を取りたい人、壊滅的に読解力がなく誰でも分かるようなことが分からない人、分かっているのに歪曲して揶揄する嫌な人、なんてのも確実にいる。また、どこまで解説が必要かはケースごとにも異なるし、過剰な解説が逆に嫌味になる場合もある。ブラックジョーク的なネタの場合は解説するのが野暮って場合もある。
表現のさじ加減というのは、本当に一筋縄ではいかない難しいものだ。
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