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強制力のある世代別クォーター制の必要性

 日本は将来少子高齢化すると指摘され始めたのは1970年代だ。第2次ベビーブームが終わったとされた1974年の翌年に合計特殊出生率は初めて2.00を下回った。しかし、日本では楽観に基づいて抜本的な対策を行わなかった為、1990年代には年齢別人口分布がピラミッド型でなく明らかな樽型となり、1999年以降は生産年齢人口も減少を続けている。

 トップ画像では、次の動画から切り出したもので、2018年を基準に約50年毎の年齢別人口分布4つを示した。2065年は推測値だが、戦後の第1次ベビーブームとその子供世代・第2次ベビーブーム世代がグラフから消えても、日本の少子化には歯止めがかからないと予測されていることが分かる。

日本の年次・性・年齢別人口ピラミッド - YouTube

 1955年以降の日本の政権を担ってきたのは、90年代と2010年前後のほんの数年を除けばずっと自民党であり、つまりは現在日本が少子高齢化している原因は自民党政治の怠慢とも言えるだろうが、それでも日本の有権者は自民政権を選び続けている。今後も日本の有権者は自民党を選び続け、少子高齢化にも歯止めがかからずこれまで同様の傾向が続いていく、という観点もそこには含まれているんだろう。


 少子化に歯止めをかけるのには何が必要か? 様々な要素があるだろうが、少子高齢化による深刻な影響を最も受ける若い世代の政治参加も欠かせない要素だろう。今の日本はシルバー民主主義といわれる程高齢議員の割合が高く、60歳以上の議員が4割を占める。55歳以上なら6割にもなる。こんな状況では若い世代の声が政治に反映されないのも当然だ。

明治36年から昭和5年までの衆議院議員年齢分布を見る|政治ドットコム

 なぜ少子高齢化解消に若い世代の政治参加が必要なのか。たとえば、韓国では多くの人が兵役に行きたがらないのに兵役がなくならない理由には、兵役を終えた世代が「自分達よりも下の世代が兵役で辛い思いをしなくなるのはズルい」のような感覚を持つから、ということもあるとも言われている。日本でも、今は以前に比べて少なくなっているかもしれないが、部活などで一番年下を脱した2年生が、自分達が先輩にやられた理不尽を、伝統だとかしきたりだとか言って新入生にやり、それが毎年繰り返される、のような現状は確実にある。兵役制度を止めるには当該世代の政治参加が重要だし、理不尽なしきたりを止めるには、それを押し付ける側ではなく押し付けられる側の声を重視することがとても重要だ。
 それと似たようなことが少子高齢化問題にも言えて、最も影響を受ける世代の政治参加が少ないと、高齢世代が、自分達はもう殆ど影響を受けない少子高齢化への対策よりも他のことを優先させてしまう。だから少子高齢化の抜本的解決には、若い世代の政治参加が欠かせない


 市民連合によるYoutube配信の中で、政治アイドルを自称する1995年生まれの町田 彩夏が「中野さんと同い年、やはり同世代の議員さんがいると興味が出てくる」と言っている。中野さんとは、この配信に出演している、2022年1月に三重県津市の市議会議員になった中野 裕子のことだ。

【Talk It Out】第11回 「 #政治に希望はあるのか 」 パーソナリティ:町田彩夏(政治アイドル) - YouTube

 若い世代の政治参加を促すには、同世代の議員を増やすことが不可欠だ、という話を否定する人はいるだろうか。合理的に否定できる根拠が何かあるだろうか。そんな人がいるなら、そんな話があるなら、ぜひ詳しく知りたい。


 政治における属性間の平等性を確保する為の方法にクォーター制がある。主に、社会に根強く残る男女格差を解消することを目的に、政策決定の場の男女比率の偏りを積極的に是正する仕組みのことを指すが、地域格差、人種民族による格差の解消にクォーター制が用いられることもある。

 若い世代の政治参加を促し、少子高齢化の抜本的な解消を実現するためには、世代別のクォーター制のようなものも必要なのではないか。政党政治の社会では、どの政党の支援も受けずに無所属で当選することは難しいし、政党助成金のような支援も受けにくいのだから、各党はもっと積極的に若い世代の候補を擁立する責任がある。シルバー民主主義とその悪循環解消の為には、法律によって、強制力のある世代別のクォーター制を始める必要があるのではないか。少子高齢化の影響で、若い世代は40歳以上に比べてそもそも分母が少ないのだから、彼らの声を政治に反映するにはそれを勘案した制度が必要だ。


 男女格差解消を目的とした性別によるクォーター制を導入している国にならい、日本でも2018年に候補者男女均等法が成立したが、この法律は強制力を持たない理念法でしかないため、与党の自民・公明は成立後初の国政選挙だった2019年参院選からこれを無視。それから約2年も是正の為の準備期間があった2021衆院選でも、自公は候補者男女均等法をまた無視した。
 候補者男女均等法は与党・自公も賛成して成立したが、つまり彼らはあたかも進歩的な認識を持っているかのように演出しただけで、最初から同法を無視する気満々だった、ということだ。言い方を変えると、強制力を持たない理念法が成立したところで、既存の政治家・政治団体はそれを無視するだけ、ということだろう。このことからも、現在不利益を被っている側の声を重視しないといけない、ということがよく分かる。現在日本の国会議員の女性比率は約10%程度でしかない。つまり、高齢男性政治家たちが候補者男女均等法を無視して男女格差解消を妨げている、と言える状況だ。

 しかし、国会議員の半分以上を高齢男性にしているのは有権者なのだ。民主制の下で議員を選んでいるのは有権者なのだから。このままでは、間違いなく日本は将来的に衰退する。衰退する理由は何か。それは有権者が自民党を選び続けるからだし、高齢男性ばかり議員に選ぶからだ。
 別の言い方をすれば、日本は衰退するべくして衰退する、いや衰退している、ということであり、最早諦めの境地にあるのだが、しかしそれでも、自分の住む国が衰退していくのを目の当たりにするのは忍びない。


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