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不祥事野球部の処分と不祥事政党の処分のアンバランスさ

 今年の春の選抜甲子園では、大会前のPCR検査で13人の陽性が確認された京都国際が出場を辞退した。昨夏の大会でも、宮崎商業野球部における新型ウイルスの集団感染が試合2日前に発覚、1回戦不戦敗となり、1回戦を勝ち上がった東北学院でも2回戦の前に部員1人の感染が確認され、他にも濃厚接触者がいたために以降の出場を辞退した。

 京都国際の辞退を伝える日刊スポーツの記事に、これまでの甲子園大会における出場辞退校の一覧が掲載されている。

【一覧】甲子園 過去の出場辞退校 昨夏は宮崎商と東北学院 - センバツ : 日刊スポーツ

 甲子園の出場辞退は、新型ウイルス感染拡大以前は2006年夏の駒大苫小牧が最後だった。それまでの出場辞退の理由は、一部例外もあるがほぼ不祥事だ。2006年の駒大苫小牧の出場辞退は、引退した3年生部員の飲酒と喫煙がその理由だった。1980年代以前は、野球部に限らず同じ学校の生徒が問題を起こしたことで出場辞退している例も複数ある。

 これだけを見ると、駒大苫小牧の件以降、不祥事による出場辞退がないように見えるかもしれないが、あくまでもこれは甲子園大会の出場辞退例であり、甲子園出場を決める前の出場辞退・活動自粛はそれ以降もある。直近では、仙台育英が、部員9人が複数回喫煙や飲酒を繰り返していたとして、2021年12/5から2022年6/4までの半年間、対外試合禁止処分となっている。

【飲酒・喫煙】仙台育英 硬式野球部、来年6月4日まで対外試合禁止処分に! | 高校野球ニュース

 しかし2010年代以降は、このような一部の選手の犯した不祥事を理由に課される対外試合禁止などの連帯責任に対して、理不尽だ、おかしいという声も強まっている。確かに駒大苫小牧のように、引退して気が緩んだ3年生の飲酒や喫煙を理由に、現役選手が制裁を受けるのは理不尽だ。

 だが、すべての処分が理不尽かと言えば、決してそうとは言えないのではないか。たとえば、部員の過半数以上が不適切な行為をしていたとか、不祥事を犯したのは一部の選手だが、部員の大半がそれを見て見ぬふりしていたとか、部全体への処分が妥当だと言える場合も確実にある。


 連帯責任が問われるケースは日本の部活動に限らない。国ぐるみでのドーピングが発覚したロシアに関しては、現在国際大会へロシア代表としての出場が概ね認められていない。勿論ドーピングに関与していなかったロシア人選手もいるが、彼らもドーピング問題によって非常に厳しい状況に置かれている。

 また、ロシアは2014年に一方的にウクライナのクリミア半島を併合したことでも制裁を受けていたが、今年・2022年2月末にその他のウクライナの地域へも侵攻を始めたことで、現在、所謂西側諸国を中心とした世界の多くの国からさらに厳しい制裁を受けている。ニュースやSNSでは、ロシア政府やプーチンの行いに反対する市民の存在も伝えられているが、そのような市民も不利益を被ることにはなっても、多くの国がロシア全般に制裁を行っている。
 もっと小さなことで言えば、たとえば食中毒を出した飲食店などへの営業停止処分にも、所謂連帯責任の側面がある。当該店舗が概ねオーナー経営者が一人で運営している形態場合を除いて、従業員が複数いる場合は、食中毒の原因となった経営者、もしくは衛生管理ができなかった従業員だけでなく、他の従業員も、責任がなくても収入を絶たれることになる。経営者などを相手に、被った不利益の損害賠償請求ができるかもしれないが、相手に取れるだけの財産がなければ、結果的に、食中毒を出したことに関する直接的な責任があるとは言えない従業員まで制裁を受けることになる。
 そのようなケースは理不尽とも言えるかもしれないが、しかし、他人の健康や他国の市民生活にかかわることには重大な責任があるのだから、一従業員と言えども、一市民と言えども、全く責任がないとは言えず、経営者や店舗運営、又は自国政府の振る舞いを見過ごしてきたことの責任を問われる、と考えれば、そのような制裁は絶対的に理不尽とも言えないのではないだろうか。


 部活動のケースで触れたように、連帯責任を追わせることが理不尽であるケースも少なくない。しかし、学校の部活動が、所属選手の飲酒や喫煙レベルで部全体の活動停止・大会出場辞退のような対応になるのに、なぜかこれが政党になると、問題を起こした議員が発覚しても、何のお咎めも処分もなしというケースも少なくないし、処分があっても当該議員を離党させるだけで終わり、なんてことばかりだ。
 たとえば、10年に1人そんな議員が出た、のようなレベルなら、まあそれでもいいかもしれない。しかし、頻繁に公選法違反議員が出てきたり、売春やセクハラ行為に及ぶ議員や差別発言や蔑視発言を行う議員が出てきているなら、それは党自体の体質の問題だろうから、党全体の活動停止処分もあって当然ではないだろうか。ましてや、1億以上のカネが公選法違反・賄賂の為に党から支出されていた、なんてケースすらあるのだから、党ぐるみで不正をやっていたとも言える状況なのだから、解党処分でもいいかもしれない。高校生に対する対応との大きな差を考えると、アンバランスさは明白だ。

 本来は、そんなことがあったら有権者がその党に対して投票行動で意思表示すべきなのだが、日本人はそんなことがあってもその政党を何度も何度も議会与党に選び続ける。日本は議会制民主主義なので、議会与党に選ぶということは政府として容認するということなのに。
 高校生への処分とのアンバランスさを考えると、日本人は物事を正しさでは判断せず、言いやすい立場の者には強く出るが、権威には媚びへつらう傾向にある、と言えるのではないだろうか。



 トップ画像には、イラストストック「時短だ」 – 時短に役立つ素材サイト の素材を使用した。

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