最近、スーパーファミコン以前のゲームを主に扱うレトロゲームの動画ばかり見ている。自分は1980年代に少年期を過ごした、かろうじてファミコンリアルタイム世代なので、ファミコン前夜からスーパーファミコンまでのビデオゲームは、どれも懐かしくどの作品にも大抵何らかの思い出がある。
当時のゲームは今のゲームに比べるとかなりチープだが、容量や本体性能などによる制約があっても面白いゲームは今でも面白い。ゲームの面白さは必ずしもグラフィックや演出の豪華さと比例しない。それは、手塚 治虫のマンガは今のマンガに比べて技術や技法的には物足りない部分も多いが、それでもずっと陳腐化しない名作であることと似ている。映画だってそうで、当時の映画のSFXは今の映画と比べたら子供だましのようなものばかりだし、映像も鮮明とは言えなかった。最近はリマスターされる作品も多いが、解像度が低いまま鑑賞しても名作は名作だ。白黒映画でも面白いものは面白い。
自分がよく見るのはレトロゲームの動画だけでなく、クルマやバイクの動画、プラモデルの動画、それと音楽、主にクラブミュージックに関する動画だ。どの動画を見ていても、このチャンネルの視聴者は主に30-40歳男性、という話が出てくる。自分も1980年代に少年期を過ごした40代であり、それらの典型的な視聴者のようだ。
クラブミュージックというと若者文化をイメージする人も多いだろうが、クラブミュージックにはクラブ以前のディスコ時代の楽曲も含まれているし、そもそも日本でクラブ文化が始まったのは1980年代後半で、遅くとも1990年代初頭には既にクラブカルチャーがあった。つまり既にクラブミュージックにも30年以上の歴史があり、ジャンルやイベントによっては、30代以上の方が多いなんてことも少なくない。クラブ文化とは少し違うが、日本における夏フェスの代表格、フジロックもサマーソニックも20代以下の参加者は半分に満たない。フジロックフェスティバルが始まったのは1997年で、サマーソニックは2000年だから、その頃に10代後半-20代だった人たちは、今は30代後半から40代だ。
【ミニオンズ】まもなく映画公開!動くミニオンのプラモデル / おとなの秘密基地 - YouTube
今年の静岡ホビーショーを取材しているこの動画の中で、プラモデルメーカー・アオシマの担当者が、小学校低学年でも作れるミニオンズの簡単なキットが今回の目玉商品だと言っている。商品化の理由について「プラモデルの客層のメインは40代以上の男性。プラモデルを1度作ってもらうことがファン拡大につながる。なのでお母さんと子どもが食いついてくれそうな商品を開発した。親子で遊んでもらうことでプラモデルに入門して欲しい」という旨の説明をしている。
自分が少年期を過ごした1980年代にも、プラモデルを趣味とする大人も既にいたのは確かだが、プラモデルは、特にアニメに登場するキャラやロボットなどをプラモデル化したものは、確実に小中学生を対象としたものだった。それが今や、プラモデルの主な客層は40代だというのだから驚きだ。
今は当時と比べて、ビデオゲームが格段に進化を遂げており、オンラインゲームで特にそれが顕著で、オンラインゲームは既存の1人プレイが基本のゲームよりも時間が必要な傾向にあるし、マインクラフトのような作品も人気で、奥が深く様々な遊び方ができる為、プレイ時間は伸びる傾向にある。またYoutubeや動画サブスクリプションサービスが充実し、1980年代にはテレビをオンタイムで見るしかなかった映像コンテンツは、今やいつでもどこでも楽しめる環境なので、そのような娯楽にも時間的シェアを奪われ、プラモデルを楽しむ子どもが減っているのかもしれない。
しかし、プラモデルの主な客層が40代になっている理由は、他の娯楽の台頭だけではないだろう。トップ画像でも示したように、日本の少子高齢化は深刻で、現在の40-50代の人口は、20代以下の人口の1.5-2倍程度だ。
また、2019年国民生活基礎調査によると、中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合・子どもの貧困率は13.5%にものぼるそうだ。世帯類型別では、母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は48.1%にもなるらしく、子どもの娯楽に割ける金額も以前より少なくなっているのかもしれない。プラモデルは道具や塗料など比較的お金がかかる趣味なので、金銭的な理由でも敬遠されているのかもしれない。
少子高齢化、家庭の貧困が与える影響は、プラモデルだけでなく、以前は10代後半から20代男性の趣味として確実に人気のあったクルマやバイクにもある。東京23区とその周辺に関して言えば、クルマやバイクを持っている大学生のほうが珍しく、相当裕福か趣味的に強い興味をもっている者だけに限られている。自分が大学生だった1990年代までは、高校卒業後、男だけに限らず多くの女性もすぐに免許を取得したものだが、今や免許を持っていない者も決して少なくない。
このようなことについて、アニメやゲームなど他に娯楽の選択肢が増えたこと、インドア派が多くなったことなどをその理由に上げる言説もよく見るが、実際には、物価が上昇しているのに労働者の収入は増えていないこと、また、家庭の収入は増えないどころか、社会保障費の負担増、消費税増税などでむしろ減っているのに、大学の学費はどんどん高額化し、またガソリン代や駐車場の料金など、クルマやバイクの維持費もどんどん上がっていて、つまり若者が金銭的にクルマやバイクを所有できない状況が広がっている、というのが実態であり、よく言う ”若者のクルマ離れ” ではなく、実際には ”カネの若者離れ” が著しいことがその理由ではないだろうか。
日本では1970年代の後半には既に将来的な少子高齢化に関する指摘があったようだが、戦後日本で、ほんの数年を除いて議会与党であり続け政権をになってきた自民党は、楽観視するだけで必要な対策を怠ってきた。だから今深刻な状況に陥ってしまっている。しかしでは、少子高齢化は自民党だけの責任かと言えば決してそんなことはない。日本は民主制であり、有権者が自民党以外を選べば他の政権を選択できたのだから、現在の深刻な少子高齢化は、日本の有権者が楽観視して対策を怠理続けた自民党を与党に選び続けた結果でもある。
ここでは少子高齢化に注目し、今後も自民党を選べば少子高齢化は更に深刻化していくだろう、という見通しを示したが、自民党の膿は少子高齢化に限らない。しばしば政治家が選挙や勢力争いの中で「膿を出し切る」のようなことを言うが、自民党については最早膿まみれ、というか膿しか詰まっていない、と言っても過言ではない。不正や憲法無視、権利軽視を平気でやり、大企業や取り巻きを優遇する経済対策しかしない自民党自体が膿であり、自民党と決別することが、日本の政治から膿を出し切る第一歩だ。しかし自民党と決別することも第一歩でしかなく、その先が重要であることも強調しておく。維新や国民民主党など実態が自民党と変わらないか、それよりも悪い党を自民党のかわりに選ぶなんてのは、ズボラのやることだ。
バブル崩壊以降の日本は、それまでの貯金を切り崩す形でなんとか成り立ってきたが、最早その貯金も底をついた感がある。このままではこれから更に没落してしまう。
トップ画像には、家族 ハッピー 肖像画 - Pixabayの無料画像、金融 危機 損失 - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。