2018年はスポーツ界パワハラ問題の当たり年だった。実際は2018年が当たり年だったわけではなく、連綿と行われてきた、協会における有力者や指導者、先輩選手らによる立場を悪用したパワハラとしか言いようがない理不尽な行為が、2018年に次々と明らかになった、と言った方が妥当か。
2018年に発露したスポーツ界パワハラ問題の中に、レスリング界における協会関係者による一部選手への不当な扱いもあって、それに関連して、日本レスリング協会副会長でレスリング強豪校の至学館大学学長でもある谷岡 郁子が会見した際に、
伊調 馨さんは選手なんですか?
と発言した。伊調 馨は、この件で不当な扱いを受けたとされていた。谷岡は取り沙汰されているほどの問題性はない、ということを強調したかったのだろうが、この谷岡の発言も、レスリング界のパワハラ体質を証明してしまっていた。
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今日のトップは、勿論その谷岡
郁子の発言をもじったものだが、決して、自民党内で岸田
幸雄がパワハラを受けている、ということを意味するものではない。岸田が昨年・2021年の自民党総裁選・衆院選の頃に言っていたことと、投票日が目前に迫る参院選における自民党の公約を比べると、果たして本当に岸田は自民党総裁なのか?
としか思えない、ということを示す為に、谷岡の発言を用いた。岸田が総裁選で主張していたことが、ことごとく自民党の参院選公約から消えているのだから、岸田って本当に自民党の総裁なの?としか思えない、という話である。
次の画像は、ツイッターで話題になっているテレビ番組のスクリーンショットだ。
これがどこの放送局のどの番組のスクリーンショットなのかは調べていないし、コラージュが施されていないかどうかも確認はしていない。しかし、このようなことを指摘しているのはこれに限らない。
これは今年・2022年3月の記事で、既に衆院選の頃と話が変わっている、ということが指摘されている。そのような指摘が出てきたのはこの頃が初めてではなく、総裁選直後の衆院選の際に既にそのような指摘があった。
そして、画像が示すように、現在選挙期間中の参院選における自民党公約でそれは更に確定的となり、あの産経新聞までがそのように指摘する記事を書いている。
- 新資本主義、薄れる岸田色 アベノミクス追従 - 産経ニュース
- 岸田色、参院選公約でもかすむ 「結局、安倍政権と変わらない」 | 毎日新聞
- [7・10 参院選]首相、「所得倍増」が変質 与野党の公約検証 泉氏、男女同数の目標達成 | 沖縄タイムス紙面掲載記事 | 沖縄タイムス+プラス
自民党は2017衆院選で全ての子どもを対象に幼児教育無償化を公約に掲げたが、選挙が終わるやいなや、すぐに全ての子どもを対象にという話を反故にした。また、東京新聞は、2016年の参院選で公約に掲げた新3本の矢、GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロの3つについても、GDPは21年度で542兆円、介護・看護の離職者数は20年時点で7万人を超えており、介護離職ゼロも達成したとは言いがたく、合計特殊出生率は21年でも1.3で、6年連続で下落しており、少子化の歯止めはかかっていない、と指摘している。
また、岸田は総裁選で所得”倍増”という文言を用いていたが、その後すぐに「倍増は2倍にするという意味ではない」と言い出している。そして、所得倍増だったはずが、それはいつの間にか資産所得倍増にすり替わった。
つまり、岸田の言っていることが変わっていようがいまいが、自民党の公約なんてのは単なる美辞麗句でしかないから、何が掲げられたとしてもそれが履行される可能性なんてのは著しく低く、詐欺広告のようなものでしかない。だが、言っていることすらコロコロと変わるのだから更に悪い、ということだ。
資産所得倍増というのは、国民に投資を促すと言っているのだが、投資をするにはまず金銭的余裕が必要なのに、今多くの国民にはそれがない。また、安倍政権の頃から働き方改革だのなんだのと言って、副業推進だのと言い続ける自民政府だが、副業をするには時間的余裕が必要なのに、日本の労働者には時間的余裕などない。有給すらまともに取ることができず、過労死ラインを超える残業をせざるをえない業種が山ほど存在している。なのに賃金は20年以上も上がっておらず、更にはアベノミクスとやらが招いた深刻な円安による物価の上昇、10年で5%を上乗せされた消費税、どんどん増える社会保障費のせいで、暮らしはどんどん厳しくなっている。投資や副業をする余裕があるのはほんの一握りの人たちだけだ。
岸田の影が薄いのは国内に関してだけではない。ロイターのG7に関するこの記事の写真を見ると、国際的にも岸田の、いや日本の影は薄まっていて、最早G7でもおまけのような存在でしかない、ということを実感する。
G7 aims to raise $600 billion to counter China's Belt and Road | Reuters
この記事は、米大統領のバイデンがG7を牽引している、という論調で、バイデン中心の写真が用いられている。この写真を見ると、G7なのにパッと見では岸田がいないように見える。よく見ると、岸田は英首相 ボリス ジョンソンの後ろにかろうじて顔の一部だけが見切れている。
この写真をロイターの記者が選んだのは偶然かもしれないが、もしバイデンやジョンソンが岸田の席に座っていて、岸田のような写り方をしていたら、果たして記者はその写真を選んだだろうか。それはありえない、というのが率直な感想だ。つまり、この記事を書いた記者、記事を載せたロイターにとって、岸田や日本の存在はその程度でしかなく、またそれについてほとんど誰もおかしいとは思わない、言い換えればその程度の扱いで妥当である、というのが、現在の日本のポジションなんだろう。
このような指摘をすると、岸田だから、と言う人が出てきそうだが、前首相の菅、全然首相の安倍も、G7やG30でポツンと一人になり、誰からも相手にされない様子がたびたび伝えられた。
安倍の頃は自民党の政治家や、一部のメディアが世界の真ん中で日本が輝いているとか、安倍ほど世界に影響を与えた日本の首相はいないとか、そんな幻想を振りまいていたが、公文書を改ざんしたり、首相が国会で何度も嘘をついたり、募った募集してないとか、倍増は2倍になるということでない、なんて言うような国が、軽んじられ敬遠されるのは当然だろう。しかしそれでも、日本人は自民党を選び続ける。