スキップしてメイン コンテンツに移動
 

カルトは健全で、性風俗は不健全?

 安倍射殺事件に伴って、政治家と統一教会、特に自民党と統一教会の関係が注目を浴びている。維新など非自民の政治家にも、統一教会との関係が取り沙汰されている政治家もいるし、自民の政治家同様に、どのような団体か知らなかったと、とぼける政治家もいるが、その大半は自民の政治家だし、射殺された安倍を筆頭に、現職・元職の大臣にまでそんな輩が複数いる。


 母が統一教会の信者となり散々搾取され、ひどい環境で育った者によって射殺された安倍が、統一教会と親しい間柄だったことは、射殺事件以前から度々指摘されてきたことだが、これまで日本の大手メディアはそれにほとんど触れてこなかった。

 安倍射殺事件を受けて、TBSや日本テレビの一部の番組や、東京新聞や毎日新聞などがやっとそれに触れ始めたようで、そのことを称賛する声もしばしば見かけるが、個人的には、なぜ今まで沈黙していたのか? ということに対する不信感を完全に払拭するような状況には思えない。今も沈黙するメディア・NHKやテレビ朝日、朝日新聞などに比べれば、これに積極的に触れだしたメディアはまだましなのだが、マシはマシでしかない。

 しかも、やっと触れ始めたメディアもいまだに、例えば自民党の幹事長茂木が会見で、「自民党として組織的関係がないことをしっかりと確認している。党としては一切関係ない」と述べたことについて、何人もの政治家が選挙の支援を得たり、信者を秘書にしていたり、党(または党要職ら)から統一教会の選挙支援を斡旋されたとか、いう話もあるのに、茂木がそう言い切っただけでしかないことを、

こんな見出しで記事にしたりする。この見出し、記事では、茂木の主張が正しいことかのようにも見える為、見出しや記事を読んだ人に、ああそうなんだ、一部の議員が勝手にやっていることなんだ、という印象を与えかねない。茂木が言ったことは間違いだと明確に否定しろとまでは言わないが、どういう状況・背景がある中で茂木がこう言っているのか、は少なくとも注釈しておかないと、これでは自民党の広報と言っても過言でない。
 読売テレビのワイドショー番組・情報ライブ ミヤネ屋も現在積極的に統一教会の件を取り上げているとされる番組の一つなのだが、7/22の放送に出演した元TBSアナウンサーの吉川 美代子が、旧統一協会に対する共産党の対応について 「共産党が15年に統一教会が名前変える時の政治圧力とか霊感商法とか…これはもう90年代からずっと紀藤先生たち弁護士が戦ってきたのにそれまで何も言わないで世間の注目が集まってる時に急に言い出すってパフォーマンスっぽい」とコメントをした。

 これはすぐにSNSにて広まり、共産党は1970年代から統一教会を批判してきたことが指摘され、25日の放送でアナウンサーが「(22日の放送で)共産党が旧統一教会の問題についてこれまで取り上げていないと捉えられるような内容がありましたが、実際には共産党は1970年代以降、旧統一教会の被害の実態について国会で取り上げてきた事実があります」と、吉川の発言に関するコメントをしたが、番組が特定の政党のイメージを著しく毀損する事実とは異なる情報を放送した事に関する謝罪はなかったそうだ。

 だから、積極的に触れだしたメディアはまだましなのだが、マシはマシでしかない、称賛できるような状況ではない、としか思えないのだ。


 ただ、一部のメディアがマシとは言える状況になったとも言えるわけで、そのマシと言えるようなメディアによって、自民党の統一教会政治家らの信じられない態度が複数伝えられ始めた。現職の防衛大臣である岸 信夫は、統一教会から選挙支援してもらっていたことについて問われ、統一教会の問題は「認識していた」と述べている。霊感商法などの問題を分かっていたのに、問題を認識しつつ支援を受けていたということである。

 つまり、現職の防衛大臣が、カルト集団をカルト集団と認識した上で、その集団から選挙支援を受けたことは問題ない、と言っているのだ。また、防衛大臣同様に治安に大きく関わる国家公安委員長も、2018年の統一教会の関連団体イベントで実行委員長を務めていたことも報じられている。

 そして、直近で最もインパクトがあったのは、自民党総務会長 福田 達夫の発言だ。福田は7/29の会見で、統一教会の関係者などから自民党の議員が支援を受けていることについて「何が問題かよく分からない」と述べた。

 この会見の中で福田は、「正直、僕自身が個人的に全く関係がないので、なんでこんな騒いでいるのか正直よく分からない」「我が党が組織的にある団体から強い影響を受けて、それで政治を動かしているのであれば問題かもしれないが、僕の今の理解の範疇だとそういうことが一切ない」などとも発言した。
 福田の態度は、おそらくこれまでの一連の流れの中で最も醜悪だろう。数十人もの議員が統一教会から選挙活動や献金などで支援を受け、各種イベントに参加したり好意的なコメントを寄せている状況なのに、組織的な関係性はないとし、更には関係性があったとして何が問題か分からないと言うのだから。数年前に芸人が詐欺集団のパーティーへ事務所を通さずに参加していた所謂闇営業の問題があったが、そこには、芸能人が詐欺集団のパーティーに顔を出せば、詐欺集団に「芸能人の〇〇もやってる」とか「芸能人の〇〇も関わってる」のように、広告塔に使われてしまうから不適切な行為、という話もあった。福田は、その問題性が理解できない、ということになる。


 このような状況にも関わらず、首相であり、自民党総裁でもある岸田 文雄は、一切コメントもせずに沈黙している。個人的に、反社会的な組織と閣僚や与党を始めとした政治家の癒着について、こんな状況でもほとんど触れないNHKのようなメディアも、反社会的な組織や行為を隠そうとする側であり、最早NHKも反社会的な組織の1つであると考える。そしてそれは、この状況で沈黙している首相や与党のトップにも同じことが言えるだろう。


 2020年に新型ウイルスの感染拡大が始まり、4月ころに、その悪影響を受けた事業者などに向け持続化給付金を出すという政策が始まったが、厚労省は性風俗産業を本質的に不健全だとして、給付金の対象から除外した。裁判所も、性風俗産業が給付金の対象から除外されたことは、大多数の国民の道徳意識に反するもので合憲、という判断を示した。しかし、ここまで書いてきたように、政府と与党はこれでもかと言う程にカルトと癒着してる。
 自民政府にとって、性風俗産業は全般的に、給付金の対象にできないくらい問題があるが、霊感商法や脅しで人を騙して搾取するようなカルト集団は、選挙で支援してもらったり献金をもらったり、イベントに参加したり好意的コメントを寄せたりしても問題はない、という認識なんだろう。


 カルトは健全で、性風俗は不健全、健全は言い過ぎだとしても、カルトは問題ないが、性風俗は問題、と広く認識されている、というのが日本の現状だ。自民党が与党に選ばれ続けている、ということはそういうことである。


参考


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。