日本の現在の首相は、トランプ氏が大統領に就任する前から訪問し、就任後もまるでかつて大国・中国の歴代王朝と周辺諸国の間に存在した関係性・朝貢するかのように度々訪米し、「100%共にある」とアピールするなど、その親密性を声高に主張してきた。また、韓国が北朝鮮と首脳会談を行い、米朝の首脳会談も、紆余曲折がありまだまだ本当に開催されるか、中身のあるものになるのかは不透明だが、それでも開催に向けての努力が行われている中で、我が国の首相や政府は未だに「対話の為の対話では意味がない、圧力を最大化していく」という姿勢を崩していない。そんな状況の中で、日本と100%共にあるはずのトランプ大統領は今後は「最大限の圧力」という言葉を使わないとし、追加制裁を控える考えも示したそうだ(東京新聞の記事「米朝12日首脳会談明言 「最大限の圧力、もう言わない」」)。
まず大前提として5/14の投稿でも書いたように、圧力一辺倒では拉致問題は根本的には解決せず、解決の為には対話・交渉が必要不可欠で、「対話の為の対話では意味がない」などと言い続け、対話の為の対話では終わらない交渉の実現に消極的なようでは、いつまでも拉致問題解決に至らない、と自分は考えている。そんな理由で、韓国や米国が北朝鮮との交渉に前向きな姿勢を示しているにも関わらず、相変わらず「対話の為の対話では意味がない、圧力を最大化していく」という姿勢を崩さない日本政府には拉致問題を解決する気はないのではないか?と不信感を抱くものの、もしかしたらアメリカ・トランプ氏と安倍首相の間で密約のようなものが交わされ、日本は”飴と鞭”の鞭役を演じることになっているのかも…というような推測もわずかながらしていた。
しかしここにきて「100%共にある」はずだったトランプ氏は、前述の東京新聞の記事や、時事通信の記事「12日に米朝首脳会談=予定通り開催、トランプ氏言明-正恩氏の親書評価」によると、
北朝鮮への現在の水準の圧力を維持するとした上で、「(米朝関係が)うまくいっているので、最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」と述べた。さらに、米朝交渉が決裂しない限り、新たな制裁を科すことはないと語った。会談の成功に向けて北朝鮮への配慮を見せた(時事通信)
という姿勢を示しているそうだ。経済制裁など圧力を撤廃するとは言っていないが、時事通信の解釈が実体に即しているのなら、「今後も圧力を最大化する」「最大限の圧力が今後も必要」としている日本の政権とは明らかに異なる姿勢である。そもそも「100%共にある」はずだったのに、安全保障上の理由で鉄鋼製品関連の関税・日本からの輸入車にかけられる関税の引き上げが検討されるなんてことが起きるのはかなり不可解、言い換えれば「100%は共になかった」という疑念が既に湧いていた。更に前述のような方針をトランプ氏が示したという事は、その疑念が確定的になったと言っていいと自分は考える。
ただ、現在の内閣の得意技は詭弁なので、「”最大限”という言葉の定義の問題であり、現在の水準は既に最大限に該当するのであり、最大限という言葉を用いなくなるだけ」のような説明がなされるかもしれない。万が一こんな中学生でも屁理屈だと感じるような説明がされるようならば、森友加計・自衛隊日報問題に関して、首相・各大臣らが、彼らは「丁寧な説明」と自称するが、実際には理解し難い主張をしてきた・今もしていることにも鑑みれば、今の政府関係者の大半は、議論を行うのに不可欠な適切な言語認識能力すら有していないということにもなりかねない。
時事通信の記事によると、トランプ氏は更にこんなことも言っているようだ。
非核化受け入れ後の北朝鮮への経済支援について、近隣の日本や韓国、中国が支援するだろうと述べ、「米国が支出する必要はない」との認識を示した。
結局彼が欲しいのは「史上初めて北朝鮮と首脳会談を行った米国大統領」「朝鮮戦争を休戦から終戦に導いた大統領」などの肩書で、勿論名誉欲もあるだろうが、もっと言えば支持集めの為にそれが必要なだけで、だから「米国の支出は抑えるつもりだ」と言っているのだろう。彼は当選以前から「アメリカファースト」を公言しているのだから、このような姿勢に大きな不思議はない。ただ、困ったことに我が国の首相は「ジャパンファースト」ではなく、どうやら「トランプファースト」であるのだろうという懸念が感じられる。そうでないのなら、前述の「最大限の圧力やめます」発言に関しても、「経済支援は日中韓で、アメリカは関係ない」なんて発言に関しても明確に苦言を呈するはずだ。
一連のトランプ氏の発言は週末寸前に明らかになったので、もしかしたら週明けにそのような姿勢を政府や首相が示すかもしれない。しかしこれまでのことを考えれば、恐らくそのような姿勢は見られないだろう、と自分は推測している。
当該自治体職員と面会した記憶はないと頑なに言い続けた柳瀬氏の国会答弁に反する所謂愛媛県文書や、最近新たに明らかにされた、「獣医学部の新設を申請しているという事実2017年1月20日まで知らなかった」という昨年・2017年7月の総理の国会答弁に反する、「2015年2月25日に加計理事長が首相と面会し、獣医学部の計画について説明があり、首相が『新しい獣医大学の考えはいいね』と応じた」などと記された所謂新愛媛県文書、更にその首相と加計理事長が面会したという話は「その場の雰囲気で、ふと思ったことを言った」嘘だったと加計学園事務局長が言い出したこと、のいずれについても首相は「コメントする立場にない」という到底容認しがたい理由で、発言・見解を示すことを避けている。
そのようなことを考慮すると、今回のトランプ氏の発言に関しても、首相は
コメントする立場にない
と言って向き合わない恐れもあるのではないか、と懸念してしまう。その内記者会見での質疑でも、国会の審議でも、都合が悪いと何でもかんでも「コメントする立場にない」と言い出すのではないか、と心配になってしまう。