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「炎上」という言葉が持つニュアンス


 「足立梨花さん、ワールドカップの日本決勝トーナメント進出を「素直に喜べない」とつぶやき、炎上。」ハフポストが掲載した、昨日の投稿でも触れた、日本代表がとった時間稼ぎ戦術についての、タレントの足立梨花さんのツイートが注目を浴びたということを書いた記事の見出しだ。
 自分が個人的に注目したいのは見出しに用いられた「炎上」という表現についてだ。炎上と聞くと、多くの人は不適切な主張が前提にあり、それについての批判が多く寄せられている状態を連想すると思う。自分は、この記事を読んで、そして当該部分前後の足立さんのツイートを見ても、そのような意味合いで「炎上」と表現することは適切ではないと感じる。せめて「批判が集まった」などがせいぜいではないだろうか。


  見出しを度外視すれば、記事の内容に足立さんの落ち度を必要以上に指摘・批判するような記述はなく、何があったのかを適切に伝えていると思う。逆に言えば、にもかかわらずなぜ「炎上」という表現を見出しに用いたのかが不可解だ。個人的には、芸能ゴシップ記事を中心に今も昔も誇張した見出しで、受け手の興味を惹こうとする傾向が、メディアにはあると考える。この記事の見出しもその手の手法の一つなのだろう。
 確かに「炎上」を単純に批判が集まる状況と捉えれば、この記事の見出しは適切ではないとまでは言い切れないかもしれない。しかし前述したように、炎上という表現には確実にネガティブな印象がある。また、記事で取り上げている足立さんのツイートの中には、売り言葉に買い言葉的な


というツイートもある。しかし彼女は、このツイート以外は概ね大人な反応を示しているし、発端となった、日本代表の時間稼ぎ戦術を目の当たりにした彼女のツイートに、例えば







などのリプライが寄せられている事を勘案すれば、彼女が売り言葉に買い言葉的なツイートをしたことは、ある程度は容認できるのではないだろうか。まず、「一生懸命やっている選手に失礼」が正なら、日本代表選手らが行った時間稼ぎ戦術は、応援してくれているサポ―ターや純粋に試合を楽しみにして会場に足を運んだ観客に対して、確実に失礼な戦術だった。スポーツはある意味でショーだ。見ている者を楽しませなければ成り立たない。見ている者にとって退屈な戦術を行えば批判を受けても仕方ない。また、「嫌なら試合を見るな」 という話は対象が非営利スポーツなら理解できる。しかし、ワールドカップは確実に非営利の草スポーツではない。更に、つまらない試合かどうかは試合を見なければ判断できないのに、一体どうやって観戦前にそれを判断しろというのだろう。
 こんなことを、しかも大勢(のように見えるだけかもしれないが)から言われたら、売り言葉に買い言葉的に嫌味ツイートの1つもしたくなる、という気持ちはとてもよく分かる。勿論、それでもグッとこらえるのが最も称賛するべき対応だったかもしれないが、彼女は厳密に大人な対応を求められるべき政治家や役人などではない。個人的には、このような一連の流れを捉えて、「炎上」などと卑下するような見出しを付けるライターも、前述のようなリプライをした者たちと大差ないようにも感じられた。

 再確認だが、ハフポストの当該記事は、その内容には概ね大きな問題があるとは思わない。しかし、ライターが「炎上」という表現に、大元の主張に落ち度があったように受け止められがち、というネガティブな印象があることを重視せずに、単に「注目が集まった」「批判が集まった」という意味で見出しに用いていることはとても残念だ。
 ライターとは、言葉を生業にしている職業で、しかもこの記事のライターはハフポストという相応のメディアで記事を書いているプロでもあるにもかかわらず、「炎上」という言葉を的確に認識できていないことに、驚きと懸念を感じてしまう。更に言えば、ハフポスト”も”しばしばこの手の見出しを付けることがあり、メディアとしての価値を下げかねない見出しだとも感じた。

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