BuzzFeed Japanが「タトゥーOKな温泉、サイトで一発検索 「不幸な出会い減らしたい」」という記事を6/2に掲載している。日本の入浴施設・プールなどでは、「刺青お断り」というルールがまるで当然かのように設けられている。外国人観光客が急激に増加した昨今、利用者と施設運営者、若しくは利用者間でトラブルになることがしばしば報じられる。
タトゥーがあっても利用できる温浴施設や海水浴場などをまとめたサイト「タトゥーフレンドリー」がオープンした。
Buzzfeed Japanの記事は、そのようなトラブルが減るようにと考えた人達が上記のようなサイトを公開したとを伝えている。
入浴施設・プールなどの「刺青お断り」というルールについては、4/4の投稿でも触れたが、今回は別の視点で考えてみたい。BuzzFeed Japanの記事によると、タトゥーフレンドリーが掲載している刺青可の施設はおよそ600件だそう。この600という数字だけを見れば「それなりに多い」と感じる人もいるかもしれない。本当にその感覚は適切なのかを考える為に、全国にどの程度の施設数があるのか、大まかにではあるが調べてみた。
- 日帰り温泉 7864軒(2016年、日帰り温泉数 [ 2016年第一位 鹿児島県 ]|都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン])
- 銭湯 3450軒 (2014年、銭湯数 [ 2014年第一位 青森県 ]|都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン])
- スポーツジム 4902軒 (2014年、スポーツクラブ数 [ 2014年第一位 東京都 ]|都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン])
- 宿泊施設 79842軒 (2016年、宿泊施設数 [ 2016年第一位 山梨県 ]|都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン])
プールは学校開放やスポーツジム併設、競泳用・レジャー用などいろいろなジャンルの施設があるからか、適当な調査結果が見当たらなかった。ただ、少なく見積もっても500-1000件程度はありそうだし、それを加味しなかったとしても、600件という数字は決して多いとは言えないということは明白だ。タトゥーフレンドリーの運営者が全ての施設に問い合わせてはいないかもしれないし、実際にはもっと「刺青可」の施設はあるのかもしれないが、行き当たりばったりでそれらの施設を訪れても、十中八九「刺青お断り」の施設に該当するという感覚に、概ね間違いはないだろう。
例えば、大半の入浴施設やプールに「刺青お断り」というルールがなく、ごくごく一部の施設が「刺青お断り」というルールを設けているのなら、それは独自ルールとして許容されるべきだろう。しかし大半の施設が「刺青お断り」というルールを掲げていれば、刺青を入れている者を社会全体、少なくとも日本の社会全体で排除しようとしているという側面が出てきてしまう。言い換えれば、社会的に、その社会に所属する者が、差別を容認しているということにもなりかねないのではないだろうか。
AbemaTVのニュースサイト・AbemaTimesは、5/31放送のAbemaTV・
AbemaPrime の内容を記事化し「喫煙者を採用しない企業も登場、それでも日本は"たばこ規制"後進国?」という見出しで掲載している。見出しにもあるように喫煙者を採用しないと明言する企業を取り上げ、出演者らがその是非を議論する様子が取り上げられている。
現在は、喫煙者を採用しないと明言している企業はまだまだ少数派だろう。そのような企業が少数派であるならば、その採用基準は決して差別にはあたらず、容認できる企業独自の採用基準の範疇に収まると自分は思う。しかし、喫煙の全面規制が行われていないのに、大半の企業が喫煙を理由に就職希望者をはじけば、前述の刺青お断りと同じ理由での判断から、それは差別に該当しそうだ。
多様性の尊重とは、少数派を必要以上に排除しないこと・少数派に配慮することだと自分は思う。刺青を入れた人と一緒に入浴・水泳したくない、喫煙者と一緒に働きたくない、と考えるところまでは個人の自由だし、それらを断る独自ルールを設ける施設も、そう考える人達が快適に過ごす為には必要かもしれない。しかしそのルールが社会全般的に一般化してしまうと、考え方の違う人達が快適に過ごせなくなってしまう。喫煙・刺青を嫌悪する人達が少数派であるならば、ある程度は尊重しなくてはならないだろうし、逆に喫煙・刺青を愛好する人が少数派ならば、必要以上に排除しないように配慮しなくてはならないだろう。
それが多様性の尊重という観点に立ったものの考え方ではないだろうか。長いものに巻かれがちな人が多そうな日本社会では、どうしても多数派側に立って考えがちな人が多いように思うし、また、少数派側の中にも、立場が逆転すると途端に、考え方の異なる人に対して攻撃的になってしまう人が少なくないように思う。中々難しいことではあるが、フラットな視点がどんな時も必要であることは間違いない。