スキップしてメイン コンテンツに移動
 

刺青・喫煙・多様性


 BuzzFeed Japanが「タトゥーOKな温泉、サイトで一発検索 「不幸な出会い減らしたい」」という記事を6/2に掲載している。日本の入浴施設・プールなどでは、「刺青お断り」というルールがまるで当然かのように設けられている。外国人観光客が急激に増加した昨今、利用者と施設運営者、若しくは利用者間でトラブルになることがしばしば報じられる。

タトゥーがあっても利用できる温浴施設や海水浴場などをまとめたサイト「タトゥーフレンドリー」がオープンした。

Buzzfeed Japanの記事は、そのようなトラブルが減るようにと考えた人達が上記のようなサイトを公開したとを伝えている。


 入浴施設・プールなどの「刺青お断り」というルールについては、4/4の投稿でも触れたが、今回は別の視点で考えてみたい。BuzzFeed Japanの記事によると、タトゥーフレンドリーが掲載している刺青可の施設はおよそ600件だそう。この600という数字だけを見れば「それなりに多い」と感じる人もいるかもしれない。本当にその感覚は適切なのかを考える為に、全国にどの程度の施設数があるのか、大まかにではあるが調べてみた。


プールは学校開放やスポーツジム併設、競泳用・レジャー用などいろいろなジャンルの施設があるからか、適当な調査結果が見当たらなかった。ただ、少なく見積もっても500-1000件程度はありそうだし、それを加味しなかったとしても、600件という数字は決して多いとは言えないということは明白だ。タトゥーフレンドリーの運営者が全ての施設に問い合わせてはいないかもしれないし、実際にはもっと「刺青可」の施設はあるのかもしれないが、行き当たりばったりでそれらの施設を訪れても、十中八九「刺青お断り」の施設に該当するという感覚に、概ね間違いはないだろう。
 例えば、大半の入浴施設やプールに「刺青お断り」というルールがなく、ごくごく一部の施設が「刺青お断り」というルールを設けているのなら、それは独自ルールとして許容されるべきだろう。しかし大半の施設が「刺青お断り」というルールを掲げていれば、刺青を入れている者を社会全体、少なくとも日本の社会全体で排除しようとしているという側面が出てきてしまう。言い換えれば、社会的に、その社会に所属する者が、差別を容認しているということにもなりかねないのではないだろうか。

 AbemaTVのニュースサイト・AbemaTimesは、5/31放送のAbemaTV・
AbemaPrime の内容を記事化し「喫煙者を採用しない企業も登場、それでも日本は"たばこ規制"後進国?」という見出しで掲載している。見出しにもあるように喫煙者を採用しないと明言する企業を取り上げ、出演者らがその是非を議論する様子が取り上げられている。
 現在は、喫煙者を採用しないと明言している企業はまだまだ少数派だろう。そのような企業が少数派であるならば、その採用基準は決して差別にはあたらず、容認できる企業独自の採用基準の範疇に収まると自分は思う。しかし、喫煙の全面規制が行われていないのに、大半の企業が喫煙を理由に就職希望者をはじけば、前述の刺青お断りと同じ理由での判断から、それは差別に該当しそうだ。

 多様性の尊重とは、少数派を必要以上に排除しないこと・少数派に配慮することだと自分は思う。刺青を入れた人と一緒に入浴・水泳したくない、喫煙者と一緒に働きたくない、と考えるところまでは個人の自由だし、それらを断る独自ルールを設ける施設も、そう考える人達が快適に過ごす為には必要かもしれない。しかしそのルールが社会全般的に一般化してしまうと、考え方の違う人達が快適に過ごせなくなってしまう。喫煙・刺青を嫌悪する人達が少数派であるならば、ある程度は尊重しなくてはならないだろうし、逆に喫煙・刺青を愛好する人が少数派ならば、必要以上に排除しないように配慮しなくてはならないだろう。
 それが多様性の尊重という観点に立ったものの考え方ではないだろうか。長いものに巻かれがちな人が多そうな日本社会では、どうしても多数派側に立って考えがちな人が多いように思うし、また、少数派側の中にも、立場が逆転すると途端に、考え方の異なる人に対して攻撃的になってしまう人が少なくないように思う。中々難しいことではあるが、フラットな視点がどんな時も必要であることは間違いない。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。