朝日新聞は7/16、「SNS参考にする層ほど内閣支持率高め 朝日世論調査」という見出しで、14日/15日に実施した「政治や社会の出来事を知る際、どんなメディアを一番参考にするか」を訪ねた世論調査(質問内容にかんする記事)の結果を公表した。見出しの通り、インターネット・SNSで主に情報を閲覧する層と内閣支持に相関関係が見られる、というのが、担当記者が調査から導いた結論だ。これは、参考にするメディア別の内閣支持率 が、
だったことによる結論で、麻生氏が6/24に「新聞を読まない人は全部自民党」と主張したことにも触れており、その主張を裏付ける結果を記者が導き出した、とも言えそうだ。
記事では 一番参考にするメディア に関する調査 の結果も掲載している。
年代別数値は30代までしか示されていないが、40代以上は、数値は違えど SNS の割合を含めて全体の傾向とほぼ同じだったようだ。
20代以下の傾向を、2017年7/7に総務省が発表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」のポイント・「メディアとしてのインターネットの位置づけ」で示されている、
と比較してみるのも興味深い。SNSという項目の有無の差があるが、ネットニュースとSNSを共にインターネットとして考えると、総務省のデータ・2016年から、朝日新聞の調査・2018年の間に、20代以下の傾向が変化しているようにも思える。
朝日新聞の調査は「政治や社会の出来事についての情報を得るとき、一番参考にするメディアは何ですか」という設問の結果で、信頼性が高いかどうかを尋ねたものではない。20代以下が、SNSの信頼性が高いと感じているから情報収集の場所に選んでいる可能性もあるが、2017年11月にソーシャルメディアラボが公表した「若年層のSNS利用状況関連の調査まとめ」などを勘案すれば、20代以下がこの半年で急にSNSの信頼性が高いと認識し、SNSを情報収集手段に選ぶようになった、とは言えないように思う。
麻生氏は「新聞を読まない層は自民支持が高い」と言っている。確かにそのような傾向は今回の朝日新聞の調査からも窺える。朝日新聞の調査結果からは、新聞を読まない若年層はSNSを情報収集手段に選ぶ傾向があることが分かる、そして、ソーシャルメディアラボの記事などから、SNSは情報の信頼性が高いメディアと認識されていない、しかもSNSを情報収集手段として積極的に選ぶ層にすらその傾向がある、ということが分かる。ということは、現在新聞を読まない若年層で内閣支持・自民支持傾向が強いのは、信頼性の高い情報によって生み出された傾向ではない場合もあると言えそうだ。要するに、まず支持ありきで、都合のよい情報が比較的多いSNSが情報収集手段に用いられている恐れがある、ということだ。
戦前戦中、日本の社会がなぜ国の為に犠牲になることを美徳とするような全体主義に傾いたのか、と言えば、国民や新聞などのメディアなども含めて社会全体が、勿論政府がそう仕向けた側面もあるだろうが、政府に忖度するように自主規制を強め、都合の悪いことから目を背けた結果だったように思う。朝日新聞の結果からだけでは、20代以下がそれと似たような傾向であるとは結論付けられないだろうが、個人的にはその恐れもあると感じている。
この年代が30代以上になった時、この傾向が続いているのか、今の30代以上と似た傾向に変わるのか、現時点では何とも言えないが、もしこの傾向が変わらないのであれば、過去の好ましくない歴史が繰り返されてしまう恐れもあるのではないだろうか。今、世界を見れば、大統領に権限を集中させるようなことが民主的な手段で達成されてしまう国もある。ということは、日本でも同じようなことが起きないとも限らない。これまでの歴史の中でも、民主的な手段で独裁者が誕生した例は複数ある。