スキップしてメイン コンテンツに移動
 

的確な 見出し の重要性


 「ペットボトルで麦茶を飲んでいたら食中毒になった」「口はつけずに飲む方が良い」などのツイートが話題になっているようで、BuzzFeed Japanは
 ペットボトル飲料に、口をつけるのは本当に危険なのか?
という切り口の検証記事「夏場のペットボトル、口をつけて飲むのは危険? 雑菌繁殖→破裂→骨折の事故も」を8/12に掲載した。個人的には、?を付けてはいるものの、危険性を不要に煽り過ぎている見出しに見える。注意喚起が必要な事は理解するが、不安を煽り過ぎるのもいかがなものだろうか。記事の冒頭では、水分補給の必要性にも触れてはいるものの、自分には、この見出しでは水分補給の必要性と注意すべき雑菌繁殖の危険に関するバランス感覚に欠けているとしか思えなかった。
 8/10の投稿で指摘した、産経新聞の「公明、山口那津男代表、辺野古移設「翁長知事も異を唱えられないと思う」」という、山口氏の発言を恣意的に解釈した見出しよりはマシかもしれないが、それでも、この見出しも適切な見出しとは言えないのではないか。


 記事でペットボトルの口付け飲みの危険性として指摘しているのは、

  1. 一度開栓すると中の細菌が増殖すること
  2. 口を直接つけると口内の雑菌が移り、ボトル内で繁殖する恐れがあること
  3. 口を直接つけたことによって微生物が移り、微生物の排出する二酸化炭素でボトルが膨張し、破裂して怪我をする恐れがあること

の3点だ。
 まず、1つ目については口付け飲みと直接的な関係性が薄い。口を付ける付けないにかかわらず、開栓後細菌が増えることを指摘しているだけだ。記事でも「口をつけずにコップに注いで再度栓をした場合も、細菌などが入ってしまうことがわかっています」という内閣府・食品安全委員会の資料からの引用が掲載されている。また、このような話は口付け飲みどころか、ペットボトルに限った話ではなく、水筒などでも同様である。
 2つ目は比較的、的確な指摘だろう。口を付けることで口内の雑菌が移るのは確かだろうし、気温が高い夏場は内容物の痛みが出やすいのも事実だ。ただ、口を付けなくても細菌が繁殖することは前段で指摘されているし、口付け飲みでより危険性は高まるのかもしれないが、コップに注いだとしても、出先でコップを洗浄出来ないならば同様の危険性があるのではないか。要するに口付け飲み云々という話ではないのではないだろうか。
 3つ目には最も強い違和感を感じる。記事で紹介されている事例は、半分飲み残したペットボトルの炭酸飲料を、常温で1か月放置して破裂した話と、放置した期間の記述がない話である。記事には「放置が数日間でも、同様の事故は起きている」という記述があるが、ということは、破裂に至るには少なくとも数日以上の放置が必要だということだろう。勿論飲み残しを数日間放置する人もいるかもしれないが、これは口付け飲みの危険性として紹介するべき事案だろうか。個人的にはそれ以前の問題のように思う。

 ツイッターで話題になっている「ペットボトルで麦茶を飲んでいたら食中毒になった」「口はつけずに飲む方が良い」を切り口とした記事であることは理解するし、ペットボトルに限らず、直接口を付けて飲むなら開栓後直ちに消費する、数回に分けて消費するなら直接口を付けない方が好ましいことも理解する。しかし、この記事の特に見出しは、そして本文の一部も、ペットボトルの口付け飲みをすると、あたかも直ちに危険性が急激に高まるかのような印象を与えかねないと感じる。そのニュアンスが事実に近いのかと言えば、個人的にはそうとは思えない。確かに幼児や高齢者などは、一般的な成人よりも更に注意が必要なことは間違いないが、この記事の内容に過剰に反応してしまうと、出先での水分補給はかなり不便になるし、それこそアウトドア環境などでは、水分補給がままならないなんてことにもなりかねない。また、3つ目に関しては数日以上放置した飲みかけペットボトルを持ち歩くことや、常温保存することがそもそも常識的に考えて不適切であり、他の口付け飲みの危険性と関連付けず、別の事案として紹介するべきではないだろうか。
 よって自分は、この記事、特に見出しは危険性を不用意に煽り過ぎているように思う。

 BuzzFeed Japanは7/14に「夏祭りのおもちゃに隠れた3つの危険 消費者庁がTwitterで注意喚起」という記事を掲載している。この記事の見出しもペットボトルの口付け飲みの記事同様、危険性を無駄に煽っているように見える。というのは、記事で指摘されている夏祭りのおもちゃの危険とは、ほぼ誤飲に関する話で、夏祭りのおもちゃに限った話ではないからだ。にもかかわらず
 夏祭りのおもちゃ=危険

かのような見出しを付けるのは如何なものだろうか。夏祭りのおもちゃだけを不要に槍玉に挙げているようで、自分は強い不信感を感じる。
 この二つの記事には他にも共通点がある。それは書いた者が同じということだ。これらの記事を書いたのは Kota Hatachi/籏智 広太 というライター?記者?だ。BuzzFeed Japanは、昨今ネット上にいい加減な医療・健康情報が蔓延していた事を受けて、医療・健康情報に特化した「BuzzFeed Japan Medical」なる取り組みをしている。ならば、それに直接該当しない記事についても、的確な見出し・内容にもっと注意を払うべきではないだろうか。 

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

馬鹿に鋏は持たせるな

 日本語には「馬鹿と鋏は使いよう」という慣用表現がある。 その意味は、  切れない鋏でも、使い方によっては切れるように、愚かな者でも、仕事の与え方によっては役に立つ( コトバンク/大辞林 ) で、言い換えれば、能力のある人は、一見利用価値がないと切り捨てた方が良さそうなものや人でも上手く使いこなす、のようなニュアンスだ。「馬鹿と鋏は使いよう」ほど流通している表現ではないが、似たような慣用表現に「 馬鹿に鋏は持たせるな 」がある。これは「気違いに刃物」( コトバンク/大辞林 :非常に危険なことのたとえ)と同義なのだが、昨今「気違い」は差別表現に当たると指摘されることが多く、それを避ける為に「馬鹿と鋏は使いよう」をもじって使われ始めたのではないか?、と個人的に想像している。あくまで個人的な推測であって、その発祥等の詳細は分からない。