あまり注目されなかったが、共同通信が7/31に「衆院議長、安倍政権に異例の所感「民主主義根幹揺るがす」」という見出しの記事を掲載していた。大島 理森衆院議長が、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊日報隠蔽など、そして厚生労働省の労働時間調査での不適切データ問題、加計学園問題や前財務次官のセクハラ問題などを前提として、
民主主義の根幹を揺るがす問題だ。立法府の判断を誤らせる恐れがあるという見解を示し、菅官房長官に、安倍政権に反省と改善を促す所感を渡し、再発防止のための制度構築を求めたと明らかにした、という内容だ。今の与党は自民党なので、議長の大島氏は自民党の所属議員である。一見「自民党内にも政権の態度・姿勢に異論を感じている者がいる、しかも議長を担うクラスの議員にも」と見えるかもしれない。しかし、果たしてその受け止めは適切と言えるだろうか。
個々の関係者の一過性の問題として済ませずに、深刻に受け止めていただきたい
自分には、昨日・8/3の投稿で書いた、杉田氏の「子どもを産まない=生産性がない」 という差別発言に対して、ようやく自民党・安倍首相兼総裁が、違和感を所感として示したのと似たような話に思える。詳しくは8/3の投稿を読んで欲しいが、杉田氏の発言が問題視され始めてからおよそ2週間も沈黙し、その間、杉田氏以外の党員らが彼女を擁護・容認する主張を繰り返していたにもかかわらず、示されたのは「指導」とか違和感という消極的としか言えない所感で、先週末に自民党本部前でデモが起きたこと、2週間たっても批判が鳴り止まないことなどを受けて表明した、単なるポーズ、安倍氏お得意の口だけ反省にしか思えなかった。
大島氏が示した所感も似たようなものではないだろうか。世論調査の結果、各調査によってばらつきはあるものの、未だに森友加計問題の政府の説明を疑問視する声は過半数を超えているし、自民党が先国会で成立させた高度プロフェッショナル制度、カジノ容認、参院定数増などに関しても、およそ6-7割が反対という結果が示されている。財務省の公文書改ざん発覚以降、ほぼ政権支持を不支持が上回る状況が続いていることも勘案すれば、所謂危険水域でなくとも、それらの結果を無視することは出来ないだろう。また、9月には自民党の総裁選があり、安倍氏は地方票で劣勢と言われている。自民総裁選に一般国民は投票出来ないが、市民とより関わりの深い地方党員らは、少なからず自分の将来の選挙への影響を考慮し投票先を決めるだろうから、世論調査の結果は確実に気にする筈だ。
そう考えれば、現在派閥に所属してはいないようだが、安倍氏や麻生氏に近い存在の大島氏が、政権への批判回避・安倍氏の総裁三選を念頭に置いて、現政権に批判的な世論をけん制、もしくは抑制しようと目論み、このタイミングで政権への懸念を身内からも示し、それを政権側はお得意の「真摯な受け止め」で対応するというシナリオだったのではないかと邪推してしまう。
そう感じてしまう理由は、政府の不適切な運営・態度を変化させられる余地の大きい国会会期中に苦言を呈さず、閉会から10日も経ってから苦言を呈している、ということからも感じてしまう。自分が知る限り、大島氏の議会運営が適切だったかと言えば、そうは思えないし、寧ろ彼が苦言を呈している政権の方針・姿勢をアシストする議会運営にすら見えた。簡単に言えば、今更感だけでなく、どの口で苦言を呈しているのか、とも感じてしまう。
そのような理由から前述のように、大島氏の苦言はマッチポンプ的にしか受け止められなかった。このような見解について、穿った見解だと感じる人もいるかもしれない。しかし、これまでも政権・与党は、例えば森友加計問題についても昨年から真摯な受け止め・丁寧な説明などと言い続けているが、一向にその姿勢は見えない。事実世論調査でもそう感じている国民が多数派であるという結果が出ている。また、裁量労働制で不適切データが発覚したにもかかわらず、高プロ導入の根拠にあげた労働者への聞き取りがあまりにも杜撰で、しかもそれを指摘されたにもかかわらず押し切って法案を成立させるなど、これまでの不祥事に反省が見られるとは到底言えないような状況であることを勘案すれば、これくらいの疑心暗鬼になるのが当然で、この期に及んでまだ性善性を前提に政権や与党を信用するというのは、余程のお人好しとしか思えない。
トップ画像は、Photo by Al Soot on Unsplash を使用した。