10/13の投稿は「行き当たりばったり」をテーマとし、コンビニをめぐる軽減税率に関する財務省の検討案・軽減税率適用の条件として店内のイートインスペースの利用禁止が必要という話に触れ、その合理性のなさを批判した。翌14日、読売新聞が「消費増税、予定通り来年10月実施…首相表明へ」という記事を掲載。安倍首相は、消費税率を来年10/1に現行の8%から10%へ予定通り引き上げる方針を固めたそうで、他にも、
中小小売店での商品購入時にクレジットカードなどを使った消費者に対し、購入額の2%分をポイントで還元する案などを検討しているとも紹介した。記事は週明けの10/15(月)の臨時閣議で方針が正式に表明されるとしている。この記事が読売新聞によるスクープなのか、政府関係者が前日に世間の反応を見る為にわざと読売新聞にリークしたのかは定かでないが、昨年・2017年5月に首相は憲法改正感について国会で問われると、「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてある。ぜひそれを熟読していただいてもいい」と発言している事を勘案すれば、後者の側面が強いのだろうと感じられる。
個人的には消費税率の10%への引き上げには基本的に賛成だ。但し手放しで賛成できるわけではない。消費税の10%への増税は、現政府が成立した時からの既定路線ではあるが、増税の名目は社会保障と税の一体改革である。要するに社会保障充実の為の財源として消費増税はやむを得ない、社会保障を充実させる為には消費増税は必要不可欠という話だったはずだ。消費税が2014年に5%から8%に引き上げられて早4年が過ぎた。その後社会保障が充実したという実感を感じている人は一体どれ程いるだろうか。個人的には、様々な社会保障制度の実質的な縮小傾向が目立つように感じてる。充実するどころか寧ろ後退している気さえする。そんな状況で「消費税は予定通り2019年10月に10%に引き上げます」と言われても、「ならば消費増税(5%から8%への増税分も含めて)分に見合う、具体的な社会保障の充実策も同時に明確にしてくれ」としか言いようがない。軽減税率とか、ポイント還元なんて恩着せがましい話では全く納得できない。
中小小売店での商品購入時にクレジットカードなどを使った消費者に対し、購入額の2%分をポイントで還元する という話は、かなり国民を馬鹿にした話だと自分は思う。この案は、消費増税が景気に悪影響を与える事への緩和策のようだが、そんな事をするなら、そもそも中小小売店での買い物は全て消費税率を8%に据え置くべきではないだろうか。中は別としても、小 小売店では自分の知る限りクレジットカード決済が浸透しているとは言えず、消費者がポイント還元を受けられる環境が整っているとは言い難い。クレジットカード決済の為のインフラ導入に補助金を出すというような事も言っているようだが、それで導入が進んだとしても、小売店は導入後もクレジットカード決済分に関しては、カード会社に概ね5%の手数料を支払う必要がある。その手数料は少なからず商品価格に反映されることになるから、2%ポイント還元されたところで、5%の手数料が商品価格に上乗せされれば、消費者は結果的には損をすることになるだろう。
恐らくキャッシュレス化を促したいという事なのだろうが、これではまるで「実質的な税率据え置き感」を演出はしたいが、税収も最大限にしたい、言い換えれば、ハードルを上げて極力ポイント還元しなくていいようにしておきたいが為に考えた、行き当たりばったりのシステムかのように思える。また、食料品など軽減税率対象品を扱う店では軽減税率+ポイント還元で実質的には消費税率が6%に、言い換えれば8%以下へ減税にもなるという状況は、ある意味では歓迎するべきかもしれないが、システムが複雑で分かり難いという側面もある。携帯電話会社に再三分かりやすり料金体系への移行を促した政府が、こんなまどろっこしい税制を行おうとしている事に強い疑問を感じる。利用者から得る利用料の最大化の為に、分かり難い料金体系を設定することが不適切なのであれば、税制だって極力納税者に分かりやすい制度にするべきだ。
今夏、オリンピック組織委員会の森会長がサマータイム導入などと言いだし、首相は「サマータイムの導入は国民の評価が高いと聞いている。内閣としても考えるが、まずは党の方で先行して議論してもらいたい」などとして自民党に検討を促したが、その後各方面から否定的な話が噴出し、結局自民党は9月末に検討の結果「導入を断念」という見解を明らかにした。自分は、今回報じられた案も同じ様な事になるのではいかと推測する。
検討すること自体は何も悪いことではない。検討してみなければ分からないこともあるだろう。しかし、検討に掛かるリソースというのもゼロでなく、何を優先的に検討するのかに関しては吟味する必要がある。果たして中小小売店での商品購入時にクレジットカードなどを使った消費者に対し、購入額の2%分をポイントで還元するという話は検討に値する程の案だろうか。自分には全くそうとは思えない。