文科省の科学技術・学術政策局長が東京医科大から便宜を図るよう依頼され、その見返りに、入試で息子を不正合格させて貰っていたという事件の調査の過程で、東京医科大が入試の成績について、女性や浪人生に対して不平等な得点の操作をしていたことが今年・2018年8月に発覚した(8/5の投稿)。この件を受けて、複数の業界関係者らが「東京医科大の方針は、必要悪である」という馬鹿げた見解を示したこともあり、他の医学部でも同様の事が行われているのではないか?という懸念が高まり、文科省は調査に乗り出した。その結果昭和大で「医学部の一般入試で現役生と1浪生に加点し、卒業生の子らを優先的に合格させる操作を6年前から続けていた」ことが明らかになり(東京新聞の記事)、また順天堂大学などにも同様の疑いが浮上している。
東京医科大の件については、女性が不当な扱いを受けているという側面に注目が集まり、性差別案件として注目されていたし、多くのメディアはそのように報じていた。昭和大に関しては、男子の合格率が女子の1.54倍だったそうだが、昭和大は前述の東京新聞の記事で紹介されているように「男子優遇はしていない」との見解を示したそうで、性差別という側面よりも、現役・縁故のある受験者の優遇に焦点が当てられている。
この件を今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでも取り上げており、そこでも論点は「現役・縁故のある受験者の優遇に合理性があるか否か」という事だった。これに関して今日のコメンテーターの1人だった正能 茉優さんは、番組が紹介した「現役と1浪の学生の方が将来性が良いので差をつけた」という見解を昭和大が示したという話を受けて、
不正としては凄く悲しいことであるとは思いつつ、1年かけて受かる(合格する)人と、4年かけて受かる人って、能力が違うんじゃないかなってと思う気持ちもあって、4年かけて受かる人と、1年でサクッと受かっちゃう人って、元々の頭の良さもだし、そこに対してどういう風に努力するかって作戦を立てる力もだし、そこも違うのかな?と思うと、(得点操作を)隠して「実は」という話だとこういう(不正操作だという)事になるんだろうけども、キチンとオフィシャルに出していたのなら、こういう入試の仕方もあるのかなと思う。と述べた。このコメントについて、自分は強烈な違和感を覚えた。まず、現役で合格できる者が優秀なのであれば、そもそも加点などする必要は無いはずだ。なぜ現役生に加点して合格させる必要があるのかと言えば、浪人生よりも多少成績が劣る現役生に加点して合格させたいという大学側の思惑があるからだろう。その時点で現役生=優秀という話が成り立たないのではないのか。話の前提から既におかしいとしか思えない。
また、確かに私立大であれば「現役生を優遇する」と公言した上で得点操作をする事には、厳密に言えば問題はないのかもしれない。しかし、現役生と浪人生という区別は恐らく年齢でされているのだろうから、その判定基準を容認すれば、その大学は、他の大学で勉強した後に医学部を受験したり、一度就職した後に医者を志す者を冷遇するということになる。要するに現役生を優遇する行為は、失敗や再チャレンジを許さない社会の風潮にも繋がりかねないということだと自分は思う。そんな大学に対して国が補助をするような事は決して認めて欲しくない。
先月・先々月あたりから、大学生の就職活動の時期について経団連や政府などから、あーでもないこーでもないと様々な話が出ている。自分はこの大学生の就活問題は、新卒一括採用という現在の日本の制度自体が変質しないと解決しないだろうと考える。新卒一括採用が一般的な日本の社会には、大学卒業と共に就職できないと落伍者のように扱われてしまう風潮が少なからずある。個人的には、大学=就職予備校ではないのだから、就職活動で大学生の本分である学業に支障が出るようならば、卒業後に就職活動をしても新卒と同様に扱われるような制度にすればよいと思う。というか、大学卒業後に何かに取り組みたい人もいるだろうから、概ね20代は総じて新卒同等として扱えばいいのではないだろうか。そうすれば在学中から就職活動をして卒業と同時に就職したい人も、在学中は学業を優先したい学生も、卒業後も相応の活動をしてみたい者も、就職を理由に何かを諦めなくても良くなるはずだ。
結論としては、現役生優遇を認める正能さんの主張も、新卒一括採用という日本の就職制度も、失敗や再チャレンジに不寛容な社会の一側面のように思えてならない。