文科省の科学技術・学術政策局長が東京医科大から便宜を図るよう依頼され、その見返りに入試で息子を不正合格させて貰っていたという事件の調査の過程で、東京医科大が入試の成績について、女性や浪人生に対して不平等な得点の操作をしていたことが今年・2018年8月に発覚したこと(8/5の投稿)に端を発し、その後他大学でも同様の受験に関する不適切な得点の操作、特定の者の不当な優遇、又は冷遇、場合によっては性別・年齢・学歴による差別に当たるであろう行為が行われていた疑いが浮上した問題に関して、昨日・10/23に文科省(文科大臣)が会見を開き、調査の中間報告を行った。
朝日新聞の記事「医学部不正入試の4事例提示 文科省、大学名は明かさず」によると、柴山文科大臣は、
受験生が安心して受験できるよう公正な入試の実施を求めるとしつつも、
大学名は「不正の調査が継続中」などと明かさず、引き続き大学側の自主的な公表を求めるとして、現時点での大学名の公表を避けた。 柴山氏が文科大臣になったのはつい半月前のことで、この件に関して彼に全て責任があるとは言えないが、文科省が東京医科大の件が発覚してから2か月以上経っても「中間報告」だとか「大学名を公表できない、しない」としているのに、受験生が安心して受験できるよう公正な入試の実施を求めるだなんて「何を言っているの?責任逃れするな」としか思えない。
文科省が現時点での大学名を避けるとした理由は、調査が完全には終わっておらず、そもそもどこからが不正で、どこからが容認されるべき得点操作なのかについて明確な基準もなく、 現時点で大学名を発表すれば不要に評価を下落させる可能性もあり、大学や学生、卒業生らの利益を考慮した。というような事なのだろう。しかしそれでは、昨年までに不適切な得点の操作によって不合格となった受験生や、来年度の入学試験を受ける受験生の利益はどうなるのだろうか。
昨年までに不当に不合格とされた受験生が浪人して今年も受験を控えている場合、不当な不合格判定に対してどのように対応するかは、学校名が公表されなければ対処のしようがないし、来年度の受験へも確実に影響する話だ。また、来年度の始めて受験する者についても、各大学が不正な入試を行っていたかどうかは医学部志望者に限らず、志望校を決める大きな要因の一つになるだろう。日本の受験シーズンのピークは年明けの1-3月頃だが、既に推薦入試はシーズンに入っているし、出願受付を始めている学校もある。受験勉強についても志望校に向けた対策などが本格化する時期でもあり、文科省は公正性担保の具体的なあり方について、医学部を置く国公私立の大学や病院が参加する「全国医学部長病院長会議」が11月中に出す指針を参考にする(日経新聞の記事)としているが、あまりにも対応が遅く消極的で、にもかかわらず「受験生が安心して受験できるよう公正な入試の実施を求める」だなんて、まさに責任逃れとしか言いようがない。文科省の存在意義とは一体何だろうか。個人的には、行政の隠蔽体質がこんなところでも滲み出ているようにも思える。
KYBの免振装置のデータ改ざん問題でも、改ざんされた・改ざんの疑いのある免振装置が設置されている恐れのある建造物について、KYBは所有者から許可が取れた物件しか公表していない(ハフポストの記事)。疑いのある建造物については、住居や商業施設も多いようで、疑いの時点で公表してしまうと、万が一問題がないという調査結果が出たとしてもその建造物の価値を下げてしまいかねず、現所有者や利用者等の利益に配慮したということなのだろう。
しかし、万が一調査が終わる前に大きな地震が起きて、相応の被害が出た後にデータが改ざんされた免振装置が設置されていた建物だったことが発覚したりしたら、どんな話になるだろうか。恐らく「大きな地震がすぐに起る確率は低いから、焦って公表する必要はない」というような判断があるのだろうと思える。もしこの推測が大きく事実に反しないのであれば、免振装置を手掛ける企業の判断として適切とは到底思えない。
また、調査が行われている間にも物件を購入する者が少なからずいるだろう。これだけこの事案が報道されているのだから、現時点で物件購入する人・検討する人は当然この事案を考慮して相応の価格で購入するか、後から問題が発覚する恐れを考慮した上で購入すると考えるべきかもしれないが、KYB側の判断は、現在物件の購入を検討している人の利益に対して配慮がないとも言えそうだ。自分はこの件にも、文科省や大学等と同様の隠蔽体質を感じてしまう。
これらの件に限った話ではないが、つくづく世の中は「正直者が馬鹿をみる」ように出来ているという事を再確認させられてしまう。