痴漢を訴えた女性やセクハラを訴えた女性等に対して、
痴漢・セクハラされても仕方ない恰好や素振りをしていた被害者が悪いという見解を示す人が必ず一定数いる。「被害者が」とまではいかなくとも「被害者も」と言う人なら、その数は決して少なくない。
先週末・ハロウィーン直前の週末の渋谷の出来事(10/30の投稿)に関して、最も注目を浴びたのは軽トラックを横転させた若者らだったが、痴漢・盗撮による逮捕者が出ている事も報じられていた。弁護士ドットコムはその点に注目した記事「渋谷ハロウィン「こんな堂々と痴漢されるもんなの?」逮捕者続々、露出度高い衣装に「自己責任論」も」を掲載している。この見出しにもあるように、この件についても「被害者が/も悪い」と言っている人がいるようだ。
「被害者が/も悪い」と言っている人達に言ってやりたい。あなた達は海水浴場やプール等で、水着の女性がいたら自分も触ってしまうと言っているようなものだと。自分の妻や娘が海水浴場やプールで水着になれば触られても仕方ないと認めるのか?と。被害者が全裸・若しくはパンツ一丁だった、またはセクハラ・相手との性的関係を明確に容認する発言をしていたのなら、「被害者が/も悪い」という話も理解できる余地はあるだろうが、恰好や素振りを理由に「被害者が/も悪い」という見解を示すのは、「私は痴漢・セクハラ予備軍です」と宣言することにもなり得ると思う。それは言い過ぎでも、少なくとも痴漢やセクハラを容認・黙認、場合によっては幇助・加担する事にはなりそうだ。
昨今Airdrop痴漢が話題になっている。エアドロップ痴漢とは、スマートフォンの無線データ送受信機能を悪用し、電車内等で見知らぬ人に対して卑猥な画像を送り付けるという手法の性的嫌がらせだ。データ送受信機能は、全く受け付けない、知り合いだけ受け付ける、全て受け付ける等の設定が出来るので、ある程度自己防衛の対策をする事が可能なのだが、デジタル機器に疎い人達にはそれがまだ周知されておらず、嫌がらせをする者がまだまだおり、被害もそれなりに起きているようだ。これについても「対策しない被害者が/も悪い」という見解を示す者が一定数いる。自分は彼らに言ってやりたい。セコムやアルソック等のセキュリティーサービスに入っていない家に泥棒が入っても「加入しない被害者が/も悪い」とはならない筈だ、と。
このような指摘をすれば、「確かにそうだが、多くの人は家に鍵をかけるという泥棒対策をしているはずだ」という反論が返ってきそうだし、その考え方が著しく合理性に欠けているとまでは思わないが、エアドロップ痴漢の件を家や泥棒の話に当てはめれば、エアドロップ痴漢は、スマートフォンを家に置き換えた場合の鍵に当たる、パスワードロックを超えてくるわけでない。全て受け付けているエアドロップに卑猥な画像が送りつけられるのは、鍵をかけた家のドアや庭の外壁などに、卑猥ないたずら書きをされたり、卑猥な写真を貼られるようなものだろう。だから自分はセキュリティサービスを例に挙げた。家に鍵を掛けていても、庭にあるもの(例えばクルマ等)を持って行かれたり、壊されたり、落書きをされたりするような事は起る。それでも「セキュリティーに加入していない被害者が/も悪い」という話にはならないだろう。
エアドロップ痴漢に対して自衛策を促すのも、痴漢・セクハラに対して自衛策を促すのも決しておかしなことではなく、寧ろ必要な事だと自分も思う。しかし、被害者にも落ち度があるとか、被害者が悪いなんて責任を負わせるような事は間違っても言ってはいけない。悪いのは確実に痴漢・セクハラ・性的嫌がらせの加害者なのに、その責任を被害者に(にも)追わせようというのは明らかにおかしい。それは所謂セカンドレイプ、被害者にさらなる追い込みをかける加害行為の恐れすらある。つまり、不当に被害者の責任を論じる事は、消極的なセクハラ・性的嫌がらせ行為に該当する場合もあり得ると考える。