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自民党は「少子化を解決する気も多様性を尊重する気もない」


 人口減少へ向かう日本。中国で日本を追い抜く勢いで高齢化が進んで知るという話もあるが、それでも現状では世界的にも類を見ない速度で、最も超高齢化が進行しているという日本の社会。
 出生率の低下・少子化への対策は、現政府や与党が最も重視している筈の政策の1つだ。「重視している筈の」としたのには訳がある。朝日新聞の記事「未婚親の支援策、自公が対立 自民「未婚の出産を助長」」によると、自公与党が検討している来年度の税制改正の1つ・未婚の一人親への支援をめぐり、婚姻歴がある一人親と同じ程度の減税措置を講じるべきだという公明党に対し、自民党は「未婚の出産を助長する」などとして懸念を示しているそうだ。


 自民党は2017年の衆院選・政権公約(PDF)の中で、
  • ひとり親家庭に対し、仕事と子育ての両立支援、孤立化させないための居場所の確保などの支援を拡充します。(女性活躍・P22)
としている。これに反する見解を自民党が示すのは、明らかな公約違反である。自民党が掲げた公約は羊頭狗肉だったことになる。
 1990年代まで日本と同様少子化傾向が深刻だったフランスの出生率が、1994年の1.66から2010年に2.00を超えるまでに回復した(現在はおよそ1.8程度で推移)理由の1つには婚外子の増加がある。フランスでは1972年をピークに婚姻数が減っているそうだが、同じ時期に「嫡出子・非嫡出子の区別なくいかなる生まれでも子どもは同等の権利を有すること」が法制化され、子どもが生まれて育つことと親の婚姻には関係性がない・若しくは薄いという認識も広がったそうだ。つまり、婚外子であっても婚姻関係の元で生まれた子ども同様の権利が認められる、同様の支援が受けられる環境が整えられたことが出生率回復の要因の一つなのだそうだ。
 自民党の議員たちはこのような事を知っているのだろうか。万一知っているのに未婚の一人親へも婚姻歴がある一人親と同じ程度の減税措置を講じるのに反対しているようなら、彼らは合理的な思考が出来ない人達だと言わざるを得ない。


 また8/3の投稿「口だけ反省は聞き飽き」でも触れたように、自民党総裁でもある安倍首相は、今年・2018年7月に批判を浴びた杉田議員のLGBT差別発言に関して、
 人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ。これは政府、与党の方針でもある
と述べている。これが性的少数者差別等を前提にした発言であることは明らかだが、「多様性」とは何も性自認・性的指向だけについての話ではないし、全ての一人親家庭・婚外子にそれ以外と同様の支援を行うかどうかは、性的少数者の尊重と関連する話でもある。
 自民党の議員らには「婚姻関係を基本とした、家に父親と母親がいる伝統的な家族が社会的な理想」と考えている者が多いようだが、現在は結婚観も個人個人で人それぞれで、「理想的な家族像」を政府や政党・政治家が国民に押し付けるのは確実に好ましくない。率直に言って、各個人が理想的な家族像をそれぞれ思い描くことを認めるのが多様性を尊重するということであり、それを阻害するような政策を進める政党の代表者が「多様性が尊重される社会を目指すのは当然」なんて言っているようであれば、それは単に美辞麗句を並べただけに過ぎないとしか言えない。
 言い換えれば、
 自民党は「少子化を解決する気も多様性を尊重する気もない」
としか思えない。

 参考


 また、今年・2018年4月の診療報酬改定で導入された妊婦加算についても、少子化対策への逆行が各方面から指摘されている。妊婦加算とは、妊婦以外では考慮する必要性の低い特別な配慮が、妊婦の診察の際に医師に求められることを勘案した、言うなれば「手間賃」だ。しかし、その手間賃を妊婦に求めることに合理性はあるのか、実質的な妊婦税ではないのかなどの批判が、導入直後からあったそうだ。
 自分はこの件を、読売新聞の医療系情報サイト・ヨミドクターの7/12の記事「妊婦の外来受診 なぜ負担増? 」で知った。9月を過ぎた頃から徐々に妊婦加算に対する異論は高まりを見せていたが、この数週間でSNSやWebメディア等によって、にわかに更なる注目が高まり、遂には自民党の小泉 進次郎厚生労働部会長が厚労省に対応を求めるという動きに至った。
 など、大手メディアではこの動きについて「小泉 進次郎氏が国民の声を政治に反映させ、存在感を発揮した」かのような論調の記事が目立つ。 目立つと言うかそのような論調一色と言っても過言でない。
 しかし、一度落ち着いてよく考えてみて欲しい。小泉氏が存在感を示したとか、国民の声を行政に届けたという認識が絶対的な間違いだとは言わないが、妊婦加算という制度を含む2018年度の診療報酬改定の前提には、政府と彼が属する自民党ら与党が一体となって決めた予算編成がある。つまり小泉氏が現在行っているのは、単に自分達が汚したトイレの掃除を自分でしているようなものだ。厳しく言えばマッチポンプ的でもある。不合理性を指摘されるような制度をワザと作り、それを撤回させる事で国民・支持者らに恩義を感じさせ、支持に繋げようとしているようにも見えてしまう。

 ここ数年、国民からの批判があろうと何だろうと強引に推し進める事、誤りを頑なに認めない事ばかりだった自民党の傾向からすれば、今回の小泉氏の動きを称賛したくなるのも理解はできる。しかしある意味では「おかしい事をおかしいと指摘する」というごく当然の事をしているだけでもある。逆に言えば小泉氏以外の異論を呈さない議員らがおかしいのであって、小泉氏が特段素晴らしいとは思えない。
 ただ小泉氏が自ら恩着せがましい主張をしている訳ではないので、彼に問題があるという事でもないが、したたかな彼は少なからず「しめしめ」と思っている部分があるだろうし、自民党自体も「ある程度無党派層に好印象をアピール出来た」と受け止めていることだろう。
 自分には、大手メディアが、出来の悪い子どもが当たり前の事をしただけで過剰に誉めたてているように思えて仕方ない。小泉氏が妊婦加算を撤回させようと動いた事は確かにある程度評価できるが、彼の所属する自民党が強く関わって妊婦加算という制度が実施されたことも決して忘れてはいけないし、無視してはいけない。メディアはそのことにも触れて記事を書くべきなのではないだろうか。

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