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青山のブランドイメージを下げようとする人々


 12/15の投稿「自民党は「少子化を解決する気も多様性を尊重する気もない」」でも触れた日本の深刻な少子化問題。少子化傾向の要因の一つとして待機児童問題がある。保育園への入園希望者に対して受け皿となる定員数が足りず、預けられない親、主に職場復帰を望む母親がそれを断念せざるを得ない傾向、若しくはそのような懸念を勘案して結婚や出産を後回しにせざるを得ない状況が待機児童問題だ。この問題は少子化に関する問題だけでなく、女性の社会進出の妨げにもなる。つまり政府が掲げる女性活躍を妨げる足枷でもある。また女性活躍が妨げられるということは、慢性的な人手不足解消の足枷でもあり、これまた政府が掲げている働き方改革の妨げでもある。
 待機児童問題は、2016年2月に「保育園落ちた日本死ね」というタイトルで投稿されたブログが話題になったことで注目度が飛躍的に上がった。それと前後して、自治体等が保育所を新設しようとすると、設置予定地の地域住民らが「子どもがうるさい」「送迎のクルマで交通状況が悪化する」などの理由で反対運動を行うという事案が取り沙汰されることが増えた。それを見て、少子化は政府や自治体の怠慢だけでなく、社会全体の状況からなるべくしてそうなっているのだと感じさせられた。


 前述の12/15の投稿では政治側の問題に注目したが、この投稿では市民・国民側の問題に注目する。

 東京都・港区が南青山に児童相談所を新設を計画していることへ、一部の住民らが反対運動を起こしている件は、10月頃からにわかに注目が高まってきた。12/14・15に港区はこの件に関する住民説明会を開いたそうだ。昨夜(12/17)のTBS・NEWS23で紹介されていた反対派の言い分が余りにも酷い。

港区民を愚弄するんですか?

 児童相談所をつくることが住民を「愚弄」する事に当たるという、身勝手な被害妄想でしかない。大多数のまともな港区民を愚弄しているのはこの人自身である。

なぜ南青山5丁目でなければならないのか

 逆に言えばなぜ南青山5丁目ではだめなのか。この質問者は「南青山5丁目よりも適した地域は本当にないのか」とも詰め寄っていたが、何を根拠にして適するか否かを論じているのか。駅に近いなどのアクセスのよい場所なら相談者が訪れやすい場所なのではないか。港区の地図を見てみても、なぜ南青山5丁目が不適なのか分からない。

 

意識の高い公立小学校に入ろうと決めて、億を超える投資をして土地を買って家を南青山に建てました。子どもの習い事たくさんしていて(小学校の)レベルも高いです。もしその子たち(児童相談所の子どもという意味か?)がお金がギリギリで(小学校に)来た時に、とてもつらい思いをするのでは、むしろちょっとかわいそうではないか

 お金がギリギリだとレベルが低い、習い事をしていないとレベルが低いなど、ハッキリ言って偏見を堂々と示している、堂々と資産の量で人を差別することをしている自分に気付かないこの人の方が、むしろちょっとかわいそうだ。そして、こんな人のこんな話がテレビで報じられることで、イメージを下げられ、似た者かのように思われかねない大多数のまともな港区民の方が、むしろちょっとかわいそうだ。

南青山は自分でしっかりお金を稼いで住むべき土地だと思うし、青山のブランドイメージ・ビジョンをしっかり持って、土地の価値を下げないでいただきたいと思います

 日本中、というか資本主義経済の国なら世界中どこの土地だって自分の稼いだ金で購入して住むべき土地だ。それは南青山に限った話ではない。この人が守りたい青山のブランドイメージとは、「児童相談所の設置に反対する冷たい人達が集まる街」というイメージなのだろうか。土地の価値を下げようとしているのは寧ろこの人本人だろう。

 トランプ米大統領が「アメリカファースト」というスローガンを掲げて当選した事により、○○ファーストという表現が一時期流行った。誰もが自分の利益をまず考えるのは何もおかしなことではないが、自分ファーストを過剰に主張して他人はどうでもよいかのような事になってしまえば、それは単なる「自分勝手」でしかない。番組で取り上げられていた反対派の人達は単なる自分勝手な人でしかない。日刊スポーツの記事「「ブランド落ちる」南青山の児童相談所説明会大荒れ」によると、会場の外では、付近の不動産会社に事務局を置く団体による反対署名の活動も行われたそうで、反対運動は住民だけでなく影響を懸念した不動産業者が関わっている事もうかがえる。
 因みに日刊スポーツは他にもこの件に関連して、世田谷区の児童相談所の周辺状況を取材した記事「南青山ブランド騒動…世田谷児相の周辺事情はどうか」、NIMBY:Not in my backyard(ニンビー/施設は必要だがうちの裏庭には建てないでほしい)に関する記事「“拒絶”青山に新たなブランド/政界地獄耳」も掲載しており興味深い。またニンビーに関しては音喜多 駿 都議も自身のブログで触れている。

 番組では、反対派の主張を嫌悪する住民の主張も紹介されていた。

もし子どもが大きくなって、子どもから「お父さんどう思う?」と聞かれたときに、「あの理由(ブランドイメージ)で俺は反対した」とはとてもじゃないけど言えない。


ちょっと辛辣な言い方をしますが、この問題に対して反対するということは、今まさにこのときも虐待をしている(受けている)子どもがいるかもしれない、その親と一緒になり子どもを虐待していることと私は変わらないとそう思っています


あまりにも当たり前な事を言っているようにしか見えない。番組内ではこの見解について反対派がどのような反応を示していたかは触れられていなかったが、どんな反応があったのか大変興味深い。

 児童相談所の設置は増える児童虐待事案(実際には増えているのでなく顕在化率が挙がっているだけの可能性もある)に対応する為には確実に必要で、待機児童問題とはやや切り口は異なるが、それでも少子化問題や女性の権利の問題と全く無関係とは言えない。しかしそれよりもなによりも、保育所や児童相談所など、児童向けの福祉施設の設置に適切な理由もなく、概ね勝手なイメージだけで反対する人達がこんなにいると、というか恐らく実際に割合は多くないが、それでも一定数いる事に間違いはなく、その為に児童向け福祉の充実が停滞するようであれば、まずこの件では
港区は子育てし難い街・子どもに冷たい街
などのレッテルを貼られかねないし、この件や保育所設立に反対する人が一定数いることなどが海外向けに報じられれば、「日本の出来事」として捉えられる事は必至で、もしそうなれば「日本は子育てし難い国・子どもに冷たい国」というレッテルを貼られかねない。
 個人的にはレッテルでなく事実だからそう思われても仕方ないとも感じるが、仕方ないで放置していいわけはないし、そうでない日本人のほうが実際に多いという事を知ってもらう必要もあるだろうから、「おかしい事にはおかしい」と指摘することを止めてはいけない。「おかしい事をおかしい」と指摘する日本人のほうが多ければ、「日本は子育てし難い国・子どもに冷たい国」というレッテルを貼られることもないはずだ。だから見て見ぬふりだけは絶対にしてはいけない。いじめを傍観してはいけないのと同じことである。

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