BuzzFeed Japanは、このブログでも12/15の投稿「自民党は「少子化を解決する気も多様性を尊重する気もない」」で触れた、今年・2018年4月の診療報酬改定で導入された妊婦加算についての記事「妊婦加算が炎上した理由、凍結は正しい? 小泉進次郎さんと産婦人科医・宋美玄さんが対談」を、12/25に掲載した。
記事の準見出しに「「妊婦税」「少子化を加速させる」と批判は殺到していましたが、必要ないものだったのでしょうか?」とある事からも分かるように、妊婦加算が導入された経緯・理念を、宋 美玄さんが小泉議員に聞く、2人がそれについて論じる対談を文字化した記事だ。この記事をシェアする人のツイートを見ていると、妊婦以外では考慮する必要性の低い特別な配慮が、妊婦の診察の際に医師に求められることを勘案して設けられた制度だということを理解していない人が割合多い事が分かる。12/15の投稿で自分も指摘したが、大手メディアのこの件に関する記事は「小泉氏が国民の声を政治に反映させ、存在感を発揮した」かのような論調ばかりだったので、「何が問題の焦点なのか」に関する報道が足りていなかったのは事実だろう。
妊婦加算の何が問題なのかについては12/15の投稿で書いたし、BuzzFeed Japanの記事でも書かれているので割愛する。この記事を読んで自分が感じたのは、小泉氏の主張に対する違和感だ。小泉氏は、制度が定められ運用が始まった経緯や現状に関して、以下のように述べている。
役所自身も、本来の趣旨とは違う形で加算がついていて、国民の反応ももっともだという感触を持っていました。
自民党厚労部会の幹部からは、「妊婦の自己負担が発生することはおかしいというのは部会の総意として、最終調整は部会長に一任する」と言われました。
当時の大臣経験者などに聞いてみたのですが、議論していないと聞きました。導入時に、政治の中でしっかりとした議論はしてこなかったのです。まず最初に確認しておきたい。妊婦加算という制度を含む2018年度の診療報酬改定の内容を決定したのは、厚労省・政府である。また、少なからず自民党の厚労部会が関わって内容が決まっている筈だ。勿論これを含む予算案は国会で承認されているので、野党もその決定には少ならず関わっているが、主体的にこの制度の実施を決定したのは厚労省・政府・自民党である。
小泉氏は「役所も本来の趣旨とは違う形で加算が付いているという感触を持っている」とまず言っている。ということは、厚労省側は賛同出来ない制度を押し付けられたと感じているという事だろうか。では、押し付けたのは一体誰か。押し付けられるのは厚労大臣や自民党の厚労部会という事になるだろうが、小泉氏は「彼らは議論せずに導入したと言っている」としている。これは、制度の合理性を大して議論もせずに、自民党の議員らが厚労省に押し付けたという事の裏付けだろう。厚労省も合理性の低い制度を受け入れている、という無責任さも垣間見える。
自分はこの記事を読んで、というか、読みながら、
なんなの?この、誰も決めてないのにいつの間にか勝手に決まってました感。これって要するに政権と与党の責任感のなさの確たる証拠なのでは?と強く感じた。厚労省の無責任さもさることながら、制度の合理性をしっかり吟味しない厚労大臣や政府、しっかり精査しない自民党の厚労部会というのが、この件からとてもよく分かる。政府・行政・与党の無責任さが際立つように思うが、対談相手の宋さんはそれを指摘してない。宋さんは産婦人科医で、「妊婦への診療を充実させる必要性はあるが、それの費用を妊婦自身に求める制度には問題があり、理念を実現する為には代替案が不可欠」という視点で対談している為、自分のような視点を求めるべきではないのかもしれないが、合理性を欠く制度を議論もせずに導入した無責任な人達が、果たして次は合理性のある代替案を導入してくれるのか、という視点でのツッコミがあってもよかったのではないか?と感じた。
対談内容からすると宋さんは、今後小泉氏が自民党の厚労部会長として、適切な対応をしてくれると期待しているように思える。確かに記事での小泉氏の妊婦加算・少子化問題への見解を読めば、彼には充分な理解があるように見えるし、理解が足りない部分は都度勉強してくれそうだと思える。しかし自分はあまり彼に期待できると思えない。十分に議論を深めず、口だけ「丁寧に説明する」と言うのは現政権の十八番だし、入管難民法の改正案だって全く充分な審議が尽くされぬまま可決したことを、小泉氏は一体全体どう考えているのだろう。入管難民法にしろ水道法にしろ、彼が充分な議論が尽くされぬまま可決を急ぐべきではないと明確に主張したと言う話は聞かないし、反対票を投じたと言う話も聞かない。ここ数年指摘されてきた複数の法案に関しては、一部彼が苦言を呈していた記憶はあるものの、しかしそれで議論がより深まる方向に向かったという記憶はない。また、妊婦加算の導入に関しても誰かに対して責任を追及しようという姿勢も見えないので、個人的に彼に期待できるとは思えない。
「犯人捜しに意味はない」と言う人もいるが、どうやって不合理な制度が定められて運用され始めたかを確認しなければ同じ過ちを繰り返す懸念を排除できない。確かに彼の主張、今回妊婦加算へ異議を呈したことを考えれば、他の自民党議員らよりはまともであると思える。しかし彼が、妊婦加算導入の経緯について「誰も決めてないのにいつの間にか勝手に決まってました感」が滲み出るような説明をしているのを見ると、結局彼も同じ穴の狢のようにも見えてしまう。彼の口から
妊婦加算が充分に議論されずに導入されたことを考えれば、入管難民法改正案や水道法改正案にも同種の懸念があるという趣旨の見解が示されていたら印象はまた違ったのかもしれない。 しかしこの対談内容では、個人的には、結局彼も、首相程でないにせよ調子のいいことを言うタイプなんだろうと思えた。政治家なんて大体調子いいことを言うタイプなのかもしれないが、調子のいい事を言う奴ばかりだから仕方ないなんてとても思えない。