今国会で最も注目を集めているのは入管難民法改正案の審議だ。11/28の投稿「自公維の議員たちは、特殊詐欺に騙されるタイプ」でも触れたように、11/27に衆議院法務委員会・本会議で可決され、法案は衆議院を通過した。入管難民法改正案はあまりにも杜撰、というか、法の根幹をなすような部分を改正案成立後・政令・省令で定めるとされているような、立法府の存在意義を否定するような部分すらある。それだけでなく、審議の為に法務省が示した、外国人技能実習生に関する統計内容について不適切な集計が指摘されたにも関わらず、それを勘案した法案の修正がなされることもなく政府と与党は法案を衆院で可決した。
不適切な集計は失踪した外国人技能実習生が何故失踪しかたの理由についてで、法務省は、失踪動機で最も多かったのは「より高い賃金を求めて」で87%などと説明し、山下法相もそう答弁していたが、聴取票にはこうした回答項目はなく、最多の理由は「低賃金」で67%だった。実際には、示された「低賃金」「低賃金(契約賃金以下)」「低賃金(最低賃金以下)」という理由をまとめて「より高い賃金を求めて」と言い換えていた(産経新聞の記事)。あまり好きな表現ではないが、首相の言葉を借りれば「これこそ、まさに、いわば、印象操作」以外の何ものでもないのではないか。
このような件を受けて野党側は、統計の元になった外国人技能実習生への聞き取りによって作成された聴取票の開示を要求した。しかし法務省はプライバシーの保護などを理由に積極的な開示・聴取票の写し(コピー)の提供を拒否した為、野党議員らは2870人分の調査票の内容を手書きで書きとったそうだ。BuzzFeed Japanはこれを11/29に「外国人実習生の失踪調査、2870人分を議員が手で書き写し…? その理由は」という見出しで記事化しているのだが、自分はこの記事を読んで次のようにツイートした。
なぜ外国人実習生に関するデータを行政機関が積極的に開示しないのかと言えば、精査されたら都合の悪い事が含まれているからだろうとしか思えない。— Tulsa Birbhum (@74120_731241) 2018年11月29日
外国人実習生の失踪調査、2870人分を議員が手で書き写し…? その理由は https://t.co/CtaPGkJFt2 @togemaru_kさんから
そのように感じた理由は、自衛隊の日報が何度も隠蔽されていた件、財務省で森友学園問題に関連する公文書が改ざんされた件、裁量労働制の拡大の前提となっていたデータでこの件同様杜撰な集計を厚労省が行い、その調査票の開示要求に対して隠蔽未遂があった事などを始めとして、昨今政府・行政機関が示すデータ等に誤り・深刻度の高い不適切な扱いがしばしば見つかる。いずれについても政府側は「故意ではなく偶発的な誤り」という説明をするが、個人的には誤りではなく意図的な捏造・改ざん、若しくは都合の悪いデータを隠蔽する行為だと思っている。何故なら誤りとされる統計・データの集計、未遂を含めた隠蔽行為は全て政府に都合のよい方向性で間違っている・行われているからだ。
そんな懸念から約1週間足らずで案の定、政府・法務省にとって都合の悪い事実が明らかになった。野党議員らが書き取ったデータを集計したところ、法務省はこれまで、失踪した外国人技能実習生の内、最低賃金以下の実習生は22人としていたが、実際は最低賃金以下は1927人で、失踪した2870人に対して67%が最低賃金以下で働かされていたそうだ(TBSニュースの記事)。これを指摘された山下法相は「我々としても重く受け止めなければならないと考えております」とした上で、
新制度に基づいて人権保護を図っていきたいと述べたそうだが、「最低賃金以下での労働が強いられていた」という失踪した理由を大胆に隠蔽、隠蔽は言い過ぎだとしても軽視した統計に基づいて改正案を作成するような政府、優しく言っても、事実と大きく乖離した現状認識に基づいて作成された改正案を議会に提出するような政府が、成立後、政令・省令に人権保護を重視した内容を本当に盛り込むのか、人権保護を重視の運用がなされるか甚だ疑問である。首相を始めとした政府・与党の政治家・彼らに近い官僚お得意の口先三寸としか思えない。
TBSニュースの記事「“外国人材”法案、与党側が会期内成立に“自信”」によれば、こんな状況にも関わらず、見出しの通り与党は会期内の法案成立に自信を示しているようだ。最初はTBSが誇張して「自信」なんて見出しを書いているのでは?と思ったが、記事には自民・森山裕国対委員長のインタビュー動画が添付されており、
今週中には、参議院として結論を出していただけるのではないかと述べている。更に記事は「自民・公明の幹部は、5日朝の会合で「入管難民法改正案」の会期内成立の方針をあらためて確認しました。」と続けており、記事の見出しはあながち間違い・誇張とは言えなそうだ。前述のような状況があり、更にそれを受けて山下法相も統計の再集計・再点検等が必要という姿勢を示しており、その結果がいつ明らかになるのかすら定かでないのに、なぜ期限だけを決められるのか理解に苦しむ。
つまり、政府や行政機関は恣意的解釈・捏造・隠蔽をもう何とも思ってないんだろう。そして、それを追認する与党議員らも全く機能していないとしか言いようがない。これは今国会で入管難民法改正案の次ぐらいに注目をされている水道事業を「民営化」しやすくする水道法改正案についても同様で、海外で民営化の失敗例が相次いでいるのが現状であるにも関わらず、厚生労働省は公営に戻した海外の事例を3例しか調べていないそうだ。因みに海外での再公営化事例は2000-2014年の15年間で35カ国で180件あったらしい(朝日新聞の記事)。にもかかわらず、この水道法改正案は既に参院で可決されており、12/6に衆議院で成立する見通しらしい。
このような例から考えても、11/28の投稿「自公維の議員たちは、特殊詐欺に騙されるタイプ」でも書いたように、自民党の中国共産党化は既にかなり進行しているといっても過言ではない。