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嘘・大袈裟・紛らわしい


 決して昨年新たに浮かび上がった話ではないが、昨年・2018年は、日本でもフェイクニュースを拡散するサイトへの指摘が高まった。また、フェイクとは言えないまでも、煽情的な・実状を逸脱する過激な見出しを意図的に用いてPVを稼ごうとする手法についても、疑問の声は上がり始めている。しかし一方で、テレビや新聞等の大手メディアや、そのようなサイトを指摘しているWebメディアも、五十歩百歩の見出しを全く用いないとは言い切れず、それではそれらのメディアによるフェイクへの指摘の説得力も相対的に低下してしまいかねない。
 一時期よりは減ったかもしれないが、ネット広告にも煽情的・大袈裟なコピーを掲げてクリックさせようとする傾向が確実にある。中には明らかな嘘を掲げている場合もあったりする。訪れたサイトにその手の広告が掲載されていると、内容が如何に素晴らしくても見る気をそがれる。パソコンで見た際はそんなことはなかったのに、スマートフォン等で閲覧するとその手の広告が表示されるサイトなんてのもある。必ずしもサイト運営者が選んでその手の広告を掲載しているわけではないかもしれないが、狡い広告が表示されていると、途端にそのサイトの好感度は低下する。


 ネット上ではその手の広告は減っているようにも思えるが(単に自分の巡回先で減っているだけで全体では変わっていないのかもしれないが)、テレビでは、番組なのか広告なのか分かり難い通販番組などを中心に、逆にその手の広告手法が増えているように思う。それについては2018年3/18の投稿「胡散臭いCMとその影響」でも書いた。
 ただ、テレビでもそれ以外でも好ましくないCM・広告は以前から存在していた。JARO:日本広告審査機構は1974年に設立した団体であり、当時から狡い手法の広告が問題視されていたことがうかがえる。

JARO TVCM「JAROの歌」篇 (15秒)



このCMは2017年にJAROが公開したCMだ。使われている「うそ、大げさ、まぎらわしい」というフレーズは、自分にとってはとても耳慣れたものだが、1992年以来の復活なのだそう。単にキャンペーンのマンネリ化防止の為に、この20数年間そのフレーズの使用が控えられてきたのかもしれないが、視点を変えて考えると、近年また「嘘、大袈裟、紛らわしい」広告が増えてきた、深刻化の兆しがあるということなのかも、とも思える。

 昨日テレビを見ていて気になったのは、ネットショップ開設プラットフォームのBASE(ベイス)のCMだ。

BASE CM第2弾「夢をあっさり現実に」バンドマン篇 15秒



BASE CM第2弾「夢をあっさり現実に」絵本作家篇 15秒


どちらのCMの最後にも「ネットショップつくるならBASE、タダ」というフレーズが用いられている。自分はこのフレーズを聞いて、
 開設費用が無料なだけで絶対「タダ」じゃないだろうな
と思った。商業サービスだから当然と言えば当然なのだが、そのフレーズでは「ネットショップの開設運営が完全に無料で行える」という錯誤を生みかねない、と自分には感じられる。同社のサイトを見ると、開設費用は掛からないようだが、サービスを利用する為にはいくつかの手数料がかかることが分かる。


「つくるならBASE、タダ」は「開設費無料(但しそれ以外には料金が発生する)」のようにも解釈できなくもないので、真っ赤な嘘とまでは言えないが、「大袈裟、紛らわしい」には該当する表現ではないだろうか。

 また、数日前に見かけたメルセデスベンツ AクラスのCMにも不誠実さが感じられた。それはこのCMだ。

The new A-Class|30秒版


全体的に見れば大きな問題は感じられないが、自分が違和感を感じたのは最後のカットの3年間のリース契約に関する「月々 9,612円」という表現についてだ。


3年リースのあるケースを紹介した内容で、確かに月々の支払は9612円で済むのだろうが、それ以外に頭金95万・ボーナス払い9万7000×6回が必要になる。つまり3年間の支払額は、月々の支払額の合計は34万6032円だが、それ以外に153万2000円が必要になる。支払い額全体の1/6程度でしかない月々の支払額だけを強調する広告手法に、果たして誠実性があると言えるだろうかというかそもそも、3年間のリース契約である事すら分かり難い表現だ。
 
自動車のリース契約を結んだことのある人ならば、CMで強調される月額支払い額は全体の数%に過ぎないという前提に立ってCMを見ることが出来るだろうが、自動車リース契約をしたことがない人がそれを理解してCMを見るとは思えない。確かに、画面の下に小さい文字で但し書きがされおり、それを読めば前述のような内容である事は分かる。しかしこのカットが表示されるのは2秒にも満たない。そんな状況で全ての文字を読み、充分に理解出来る人がどれ程いるだろうか。全くいないとは言わないが、多数派とは到底考え難い。つまりこの但し書きは「条件を提示している」と言い訳する為のものという側面が確実に強く、実質的には意味をなしていないと自分は考える。言い換えれば決して誠実とは言えない広告手法ではないのか。
 今回気になったのはメルセデスベンツ AクラスのCMだったが、同じような手法のリース契約の広告は他の自動車ブランドでも見かけるし、通販CMの分割払いの提案などでも同様だ。実態にそぐわない過剰な安さのアピールで、これも「大袈裟、紛らわしい」に該当すると自分は考える。

 前述したように不誠実な表現手法を用いたCMは以前から存在しているが、昨今の混沌としたネットの状況の影響なのか、まず通販系でその手のTVCMが増え始め、その影響でそれ以外、大企業などのCMでもそんな手法が用いられ始めているのかもしれない。大企業等のCMには確実に広告代理店が関わり、テレビで放映する為には確実にテレビ局の人間が関わる。広告主である企業、広告代理店、そしてテレビ局と、複数のチェックを経てこのようなCMがテレビで放映されていることを考えると、狡い広告手法への無頓着さが広がっているように思え、とても残念な気分にさせられる。

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