昨日・4/21は統一地方選の後半戦と衆院補選の投票日だった。MXテレビ・モーニングクロスによると、読売・朝日・毎日・産経・東京の5紙の1面全てに「衆院補選、自民2敗」という旨の見出しが掲載されたそうだ。
しかし、沖縄ではオール沖縄が推す候補、大阪では統一地方選の前半選で、吉村元大阪市長と松井元大阪府知事がそれぞれの立場を入れ替えて立候補し共に当選し、勢いを見せている維新の候補が当選している。大阪では、共産党に所属していた宮本氏が衆院議員の立場を捨てて無所属として立候補し、野党の結束をアピールして支持を訴えたが、得票は最下位で当選した維新・藤田氏の3万5183票に対して8201票とおよそ1/4で4人中最下位、得票数3位・たるとこ氏の2万3460票にもダブルスコア以上の差をつけられている(衆議院大阪府第12区選出議員補欠選挙・寝屋川市議会議員選挙・寝屋川市長選挙の投票・開票状況(平成31年4月21日執行)/寝屋川市ホームページ)。
自民2敗=国政野党の存在感拡大とは全くなっていないのは明らかなのに、自民2敗ばかりを強調した見出しの記事が多く見られるのには違和感を覚える。
既に多くの地域で開票が行われているが、統一地方選については開票が今日行われる地域もあるようで、選挙結果の総括を各メディアが示すのはこれからなのだろう。結果以前に自分が強い危惧を感じるのは投票率の低さである。時事通信の記事「衆院2補選、自民完敗=大阪12区維新、沖縄3区は野党系-安倍政権、参院選へ痛手」、中日新聞の記事「統一地方選、投票率で最低相次ぐ 市長選は47・50%」によると、今回の選挙の投票率は、
- 大阪12区衆院補選 47%(0.5ポイント減)
- 沖縄3区衆院補選 43.99%(10.06ポイント減)
- 59市長選 47.5%(3.03ポイント減)
- 283市議選 45.57%(3.05ポイント減)
- 東京11区長選 44.21%(0.1ポイント増)
- 東京特別区20区議選 42.63%(0.18ポイント減)
- 66町村長選 64.98%(4.09ポイント減)
- 282町村議選 59.65%(4.69ポイント減)
前述の危惧とは別の話ではあるが、この投票率を見て、2月の沖縄県民投票の結果を「有効票の7割が反対票だったとしても、投票率が50%程度では沖縄の民意が示されたとは言えない」と言っていた人達(2/25の投稿「沖縄県民投票結果を否定すると、前衆院選の結果や改憲に伴う国民投票も否定することになる」)は、どう思うのか、どう評価するつもりなのかを是非聞いてみたいと思った。もし2月の沖縄県民投票の結果を「県民の民意とは言えない」とするならば、今回の選挙は町村長・議員選を除いて、どの選挙も「投票したいと思う候補がいないと判断した有権者が過半数を超えた」ということになるだろう。ということは、今回立候補した候補は全員、有権者の過半数に不信任の烙印を押されたという事になりそうで、今回立候補した者以外で選挙をやり直す必要が出てくるのではないだろうか。
低投票率に関して、産経新聞は「なぜ、投票しなかったのか 浮かぶ政治的無関心「何も変わらない」」という記事を掲載している。低投票率・投票率の低下は今回の選挙に始まったことではなく十年以上前からの傾向で、同じ様な内容の記事が選挙の度に報じられており、特段珍しい・目新しい内容の記事でもない。しかし、嘆かわしい内容であることに違いはない。以下はこの記事で挙げられている投票に行かなかった人の話だ。
- 面倒くさいし、自分の時間を無駄にしたくない(専門学校生 女性・19)
- 子供の面倒を見るのに忙しくて行けなかった(会社員 男性・30代)
- 期日前投票をしようと思ったが、どういうシステムなのかよく分からなかった(飲食店店員 男性・24)
- 投票に行っても変わらない気がする(会社員 男性・24)
- 行くことすら考えなかった。参院選も行かない(会社員 男性・40)
- 本当に『世の中をよくしたい』と思って選挙に出ている人がいるのだろうか(自営業 男性・44)
- (候補者が名前を連呼するばかりで)やりたいことが分からない(専業主婦 女性・58)
- 行こうと思っても誰に投票すべきかよく分からない(会社員 女性・22)
- 候補者が多くて覚えきれないし、投票に行こうという気持ちにならない(女性・60代)
- 区長や区議が何をしているのか分からない。知る機会もない(会社員 男性・38)
率直に言って、この記事で並べられている投票に行かない理由は、合理的な理由というよりも、投票に行かないことをどうにか正当化しようとしているようにしか思えない。このような事を言う人のほぼ全てが、例えば消費増税を肯定的に捉えているとは到底考え難い。今回は地方選だったので直接的に消費増税を止めることが叶う選挙ではないが、消費増税を実行する予定の国政与党の候補者や推薦を受ける候補とは別の者に票を投じる、若しくは自民・公明の候補や推薦候補でも消費増税に違和感を示している候補者に票を投じる、などの方法による意思表示は出来る。
選挙の争点とは立候補者や政党が掲げるだけのものではない。選挙では個人がそれぞれに争点を決めて投票先を選ぶものだ。自分のして欲しい政策を掲げる立候補者がいなかったとしても、自分の考える理想から最も遠い候補者を避ける為には、最もマシな候補者に票を投じる必要がある。立候補者が何をしたいか分からない、誰に投票すべきか分からないから投票しないというのは、逆に言えばどんな政治や政策が行われても文句を言えないということだ。
そんな風に思う一方で、投票率を上げられない政治家らは、自分達に魅力がないことを強く肝に銘じて欲しい。前述の通り有権者一人ひとりが自ら争点を選び、投票先について知る努力をしなくてはならない側面は確実にあるが、政治家らは分かり易く自分達が掲げる政策を有権者に説明し理解してもらえるように努める責任がある。自民が衆院補選で2敗した背景には、確実に現在の自民政権が嘘にまみれていることの影響もある筈だ。しかし一方で野党勢力がその受け皿になれない程度の魅力しかアピールできない、というか魅力を持っていないのも事実だろう。
そんなことをしたらますます政治の担い手がいなくなるかもしれないし、政治を自分事として考えられない一部の(というか投票率が半分以下なので、実際には一部ではなく約半数、場合によっては半数以上)の有権者を甘やかすだけにもなりかねないが、例えば投票率が50%以下なら、立候補した者以外でもう一度選挙をやり直し、やり直し選を行うまで無政府状態のような状況になるという制度にすれば、政治からももっと必死に選挙戦を行うかもしれないし、無政府状態に陥ることを懸念する有権者らももっと投票を真剣に考えるのではないか?なんて浅はかに考えてしまった。