沖縄県で普天間基地の辺野古移設に関する県民投票が昨日行われた。投票結果は当初の予想通り「辺野古移設に反対」が上回る結果となったが、賛成が約19%だったのに対して、反対は72%と圧倒的な差がついた。Wikipediaの「2019年沖縄県民投票」によると、結果の詳細は
当日有権者数:1,153,591人だったそうだ。この反対票の数は、2018年9月の沖縄県知事選で辺野古移設反対を掲げて立候補し当選した、玉城現知事が獲得した396,632票をも上回っている。
投票率:52.48%
投票総数:605,385票
有効票数:601,888票(99.42%)
賛成:114,933票(18.99%)無効票数:3,497票(0.58%)
反対:434,273票(71.74%)
どちらでもない:52,682票(8.70%)
毎日新聞によると、安倍首相はこの結果を踏まえて 「結果を真摯(しんし)に受け止め、これからも基地負担軽減に全力で取り組む」と述べた一方で、辺野古移設を進める方針を改めて示し、
長年にわたって県民の皆様と対話を重ねてきたが、これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたいなどと今朝の会見で述べたそうだ。TBSニュースでは会見全部のビデオも公開している。
世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない
これ以上、先送りすることはできない
単に新たな基地を造るのではなく、普天間飛行場を全面返還するための基地だ
2/20の投稿「「沖縄県民の気持ちに寄り添う」という首相の嘘の先にあるのは…」でも同じことを指摘したが、そちらでは官房長官の発言に基づく指摘だったので、首相自らが沖縄県民投票の結果を無視する姿勢を示したこのタイミングで改めて指摘する。
首相は2018年10月に沖縄県知事との会談の中で、「(沖縄)県民の気持ちに寄り添いながら、基地負担軽減に向け一つ一つ着実に結果を出す」と言っている。県民投票によって沖縄県民が移設反対の意思を明確に示したのに、それでも移設を進めるというのであれば、どうやっても沖縄県民の気持ちに寄り添っているとは言えない。つまり安倍氏は明確に嘘をついた事になる。「長年にわたって県民の皆様と対話を重ねてきたが、これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたい」と述べたのは、「辺野古移設に関して国は一切折れるつもりはないから、今後も沖縄県民が民意を変えるように強引にでも仕向ける」と言っているも同然で、これの一体何が「(県民投票の)結果を真摯に受け止める」なのだろうか。「都合の悪い結果は無視する」の間違いだろう。
沖縄県民に対して平気で嘘をつくのだから、沖縄以外の国民にだって平気で嘘をつくだろうし、結果を恣意的に解釈するような人物が政権のトップなのだから、統計不正を政府が後押ししたという懸念も更に強まると言われても仕方がない。
昨日投票の結果が報じられて以降同じような見解は既に示されていたが、沖縄県民投票をトップニュースとして取り上げていた今朝のMXテレビ・モーニングCROSSの視聴者ツイートでも
たとえ有効票の7割が反対票だったとしても、投票率が50%程度では沖縄の民意が示されたとは言えないという見解を示す者が少なくなかったので自分はこうツイートした。
沖縄県民投票の投票率が低くて「沖縄の民意とは言えない」って見解の人は、投票率の規定がない国民投票法の下での改憲に関しては、当然反対の立場なんだよね? #クロス— Tulsa Birbhum (@74120_731241) February 24, 2019
現在安倍首相が目指す憲法改正の為には、国民投票で過半数の賛成票を得る事が不可欠である。しかし第一次安倍内閣当時に可決成立した日本国憲法の改正手続に関する法律・所謂国民投票法には最低投票率の規定がない。
また、読売新聞も「[スキャナー]投票率52% 広がり欠く…沖縄県民投票」という記事で、
県民の参加は広がりを欠き、影響は限定的なものになりそうだ。としている。恐らくこの記事を書いた記者も、前述のような認識に基づいてこのような見解を示しているだろう。「影響は限定的なものになりそうだ」というのは、単なる記者の願望でしかないだろう。日本で1,2を争うような、というか、発行部数世界一を標榜するような新聞社がこのような見解を示しているのはとても残念だ。
投票率50%で「県民の参加は広がらず影響は限定的」と言うのなら、2017年の衆院選も投票率は50%強程度でしかないし、現在与党第1党である自民党は小選挙区で約48%、比例では約33%の得票しか得ていないのだから、その選挙結果の合理性にも疑問を呈さなければならないし、その得票率にも関わらず自民党総裁兼首相の安倍氏が「選挙によって国民の信を得た」と言っていることにも疑問を呈さなければならないはずだが、読売新聞がそのような論調の記事を書いていたとは全然思えない。読売新聞も産経新聞と同じ様(2/19の投稿参照)に、都合のよい解釈を基に記事を書く新聞なのだろうか。もし読売新聞に前衆院選の結果に疑義をていする論調の記事が存在していたのなら是非教えて欲しい。
このような見解を示したのはSNSの利用者(政権支持層)や読売新聞に留まらないようで、プチ鹿島さんのツイートによると、朝日新聞の記事「安倍政権、民意「NO」でも工事強行へ 辺野古埋め立て」には、
自民県連関係者は「投票率50%を切ったら『投票は無駄だった』とコメントしようと思っていたが、そうはいかなくなった」と肩を落とす。とあるそうだ。
自民県連関係者と言うのが誰なのか定かでないし、1/30の投稿でも触れたように、朝日新聞も大坂 なおみ選手のコメントについていい加減な訳を関連サイトに掲載するなどしているので、この記事だけを以て本当に党関係者が実際にそんなことを言ったと断定し難いが、もし記事の表現が事実に即しているのなら、自民党関係者が自ら、2017年の衆院選の結果を否定することになりかねない。というか、自民党関係者かどうかに関わらず、沖縄県民投票の結果を投票率云々で否定的に論じれば、「選挙によって国民の信を得た」と豪語する安倍氏の見解も否定することになる。
このように自分にとって都合のよい解釈をしてもよいと考える人が増えたり、それに基づいた主張を恥ずかしげもなくする人が増えた要因の一つに、「あそのこのサンゴは移した」など、首相が堂々と自分に都合よく嘘をつき、そして都合のよい事にだけ注目して経済成長をアピールし、更に首相だけでなく官房長官も都合が悪いことに関して、明確な根拠も示さずに「事実誤認」と言い張り、財務大臣兼副首相も明らかな間違いに基づく発言を反省もせずに繰り返していることがあるだろう。国を仕切る人達が都合のよい解釈や嘘を堂々と示すなら、一部の国民が「自分達も都合のよいことにだけ注目し、嘘まがいの事を言ってもいいんだ!」と勘違いしてしまうのも無理はない。
「無理はない」とは仕方がないという意味ではなく、そんな深刻な状況を改善する為に元凶を取り除く必要がある、という意味だ。このような状況になっているのは、政府や首相がいくら嘘をつこうが誤魔化そうが、選挙の度に自民安倍政権が信任されてきたからでもある。メディアも国会が終われば調査も報道もしなくなる傾向が強く、消極的にかもしれないがそんな状況を後押ししている側面がある。つまり、日本国民だけでなくメディアも含めて日本全体で自分達の首を絞めているのが現在の日本なのではないか。