問題解消の糸口がまだまだ見えない高齢ドライバーが起こす交通事故の問題。今朝のMXテレビ・モーニングクロスでは、池袋で起きた旧通産省工業技術院の元院長が起こした事故の続報を取り上げられ、それに関する視聴者ツイートも複数番組の画面で取り上げられていた。
因みにこの件に関する番組の見出しは「池袋事故 元院長「車の異常が原因」」だった。事故当時現場にいた者を交えた実況見分が行われたこと、今後元院長を立ち会わせた実況見分が検討されていること、事故後高齢ドライバーの免許返納が増えたことなどを伝える内容で、18日に退院した(朝日新聞)元院長のコメントは一切取り上げていなかった。果たしてニュース原稿で触れないことを見出しに据えるのは妥当なのか、個人的には妥当だとは思えなかった。
番組が取り上げる視聴者ツイートの中には、年齢による免許返納を制度化すべきという主張も多かった。個人的にその主張には全く共感出来ないが、それに関しては後述する。それよりも不味さが感じられたのは、番組画面に次のツイートが表示されていたことだ。
「議論が難しい」といって老人が人を轢く権利が保証されるのはいかがか。 #クロス— 兎伯爵 (@rabbit_earl) May 20, 2019
当該ツイートには「老人が人を轢く権利が保証(正しくは保障)される」とある。果たして本当に現在老人は人を轢く権利を保障されているのか。もしくは将来的に老人が人惹く権利を保障することが検討されているのか。勿論断じてそんなことはない。もし現在「老人が人を轢く権利」が保障されているならば、老人が人身事故を起こしても一切罪に問われることはないだろう。「人を轢く権利の保障」とはそういうことだ。つまりこのツイートには深刻な錯誤、厳密に言えば極端で過剰な表現が含まれている。個人的には嘘が含まれていると言っても過言ではないと思う。
これまでも何度も指摘しているし、モーニングクロスはそういう番組だともう半分諦めてはいるが、このツイートが正確性に著しく欠けているという指摘は番組内で一切されなかった。改めてもう一度、正確性に欠ける視聴者ツイートを番組が画面へ無頓着に取り上げる事で何が起きるかを指摘したい。
モーニングクロスでは5/16に、「SNSのいいね機能の必要性、若しくは是非」に関して取り上げ、SNSの「いいね!機能」についてどう思いますか?という視聴者投票も行った。因みに投票結果は
必要だと思う 852ptだった。
いらないと思う 744pt
SNSをやっていない 1173pt
さらに、昨日・5/20の放送ではこの日のコメントテーターだった、高校時代に企業し現在は慶応大学に在学する起業家の椎木 里佳さんがSNS投稿をテーマに論じたこともあり、再び「いいね機能」が話題に上っていた。それに関して番組MCの堀 潤さんは、「堀さんからのいいねは嬉しい」という旨の視聴者ツイートを取り上げ、やや肯定的に感想を述べた。
堀 潤さんは以前から自分のする「いいね」は肯定とは限らない、あくまでもメモ的に「いいね」をしていると公言している。その言葉通り彼は明らかに好ましくない内容や事実を誤認した内容のツイートにも「いいね」をしている。以前の自分は、彼がメモ的に「いいね」を利用していることを肯定的に受け止めていた。彼が好ましくないツイートにも「いいね」をすることで、彼をフォローしている自分のタイムラインにもそれが表示され、それはSNSのフィルターバブルに陥りやすい状況への、ある種の抑止にもなると思っていたからだ。しかし、昨日彼が「堀さんからのいいねは嬉しい」という旨の視聴者ツイートに対して、言い方は悪いがヘラヘラとした態度で臨んだのはあまりに残念だった。まるで彼が自分の「いいね」は肯定の意であると言っているように見えた。
彼は好ましくない内容や事実誤認のツイートへ「いいね」をする弊害を軽く考えすぎているように思え、次のようにツイートした。
堀潤さんは肯定でなくても「いいね」すると公言しており、以前自分はそれを肯定的に捉えてた。しかし、#クロス 視聴者が「堀さんからのいいねは嬉しい」と思っているということは、肯定でないいいねも肯定として捉えられているということ。— Tulsa Birbhum (@74120_731241) 2019年5月19日
つまり、堀さんのいいねによって、場合によっては好ましいとは思えないツイートを助長してしまう側面がある、ということ。#クロス が画面に視聴者ツイートを表示する事にも同様の懸念がある。— Tulsa Birbhum (@74120_731241) 2019年5月19日
少なくとも、「堀さんのいいね嬉しい」の声には、必ずしも肯定の意味ではないと言っておくべきだったのでは
ツイートでも触れたように、番組が注釈なしに視聴者ツイートを取り上げれば、ツイートをした者や一部の視聴者は、「テレビ番組の画面に表示されているのだから、それは大きな間違いではない」と、肯定的、若しくは容認できる話として受け止めるだろう。番組側は「あくまでも視聴者ツイートを取り上げただけで、肯定はしていない」と考えているのだろうが、テレビとはそのような影響力を持ったメディアだ。
堀さんが「いいね」は肯定ではないと言っていても、視聴者の中には肯定と受け止めて「堀さんからのいいねは嬉しい」と感じる者がいるのと同様、テレビという大きなメディアが注釈なしに取り上げれば、それだけで肯定と受け止める者は少なからずいるはずだ。
例えば、今日の番組の中で堀さんは、丸山 穂高議員が戦争を容認するかのような発言をしたこと(5/16の投稿)に関する
丸山発言で最も驚いたことは、音声データが出てきたこと。日本がいつの間にか盗聴国家、監視国家になってたこと。 #クロス— すぎやん (@aquacrisis) 2019年5月20日
という視聴者ツイートを、この件が明らかになったのは盗聴でも監視でもないこと、酒に酔った丸山氏が、記者が国後島訪問団の団長へインタビューしているところに割って入って当該発言をしたため、音声が明瞭に残っていることなどを注釈した上で取り上げた。
因みに堀さんはこのツイートに対しても「いいね」をしている。もし彼が注釈なしに「いいね」したり番組で取り上げたりすれば、このツイートをした者は「テレビで自分のツイートが取り上げられた!」「有名人が俺のツイートに触れてくれた!」「だから俺は間違ってない!」という風に受け止める恐れがある。またそれを画面で見て、「テレビ番組が画面に表示しているのだからそれは概ね間違った話でなく、丸山氏の当該発言は不適切な方法で録音されたのだろう」と勘違いする視聴者が出ないとも限らない。
例えば、年齢による免許返納を制度化すべきという内容の視聴者ツイートに関しては、個人的には全く賛同できないが、何か法を逸脱することが明らかなわけでもなく、明らかな嘘でもないので、注釈なしに画面に表示するべきでないとまでは思わない。しかし、前述の「老人が人を轢く権利が保証(正しくは保障)される」というツイートに関しては、「日本がいつの間にか盗聴国家、監視国家になってた」という解釈を丸山氏の件からするのは、話が飛躍し過ぎていると指摘する必要があるのと同様に、そんな権利が保障されているとは到底言えないということを注釈しなければならないのではないか。
これも過去に何度か書いたことだが、番組で視聴者ツイートを画面に表示するのは、SNS上で「いいね」をしたりリツイートするのと似たような行為だし、番組ハッシュタグ付きツイートの中からいくつかを抽出してまとめるている側面もある。
昨今、所謂まとめサイトがツイートを選出してまとめるという行為について、問題のあるツイートをまとめる事に対する責任を問われている。そんな事を勘案すれば、テレビ番組が視聴者ツイートを表示することにも相応の責任が生じると言えるのではないか。「あくまでも視聴者ツイートを取り上げただけで、肯定はしていない」という話は必ずしも通用しない。モーニングクロスが問題のある視聴者ツイートを注釈なしに画面へ表示するということは、その種の主張を助長している側面がでてくる場合もある。実際にこれまで番組視聴時に何度か感じられたことだが、場合によっては昨今問題視されるフェイクニュースを番組が助長しているとさえ思えることもある。
そんな状況で、番組は内容を視聴者に信用して貰えると思っているのだろうか。そんな状況で、所謂フェイクニュースに対する指摘をした際に、説得力を持たせられると思っているのだろうか。
冒頭で「年齢による免許返納を制度化すべきという主張も多かった。個人的にその主張には全く出来ないがそれに関しては後述する」としたが、この投稿が思いのほか長くなったので、その件については明日の投稿で書くことにする。