スキップしてメイン コンテンツに移動
 

桜を見る会は「政権が変わる程のことではない」という話の脆さ加減


 新聞読み比べ芸人・プチ鹿島さんが書いた「「桜を見る会」は“小事”か“天下の一大事”か問題 ヒントは11月13日の“あっさり中止”にあった | 文春オンライン」という見出しの記事が今朝掲載された。この記事は
桜を見る会は「小さなこと」なのだろうか。
という書き出しで始まる。 中盤では政府が「ウィンウィン」だとする日米貿易協定に触れ、「桜を見る会は小さなこと」と言う保守派の新聞こそ、
桜の説明ができないのにトランプ相手に交渉できるわけがない、桜を見る会の説明からやり直せ!
と指摘するべきなのではないか?とし、「態度や振る舞いはすべてつながっている、そこに「小事」も「大事」も関係ない」という表現もあるが、最終的には
決して小さなことではないと思う。
と締め括っている。


 プチ鹿島さんと共にCSで「水曜日のモーリー・ロバートソン」という番組のMCを務めているモーリー ロバートソンさんの示した見解は、前段とは対照的だ。彼は今朝次のようにツイートしていた。


元維新・橋下 徹氏の主張を引用し、
桜を見る会の問題は政権が変わる程のことではない
と言っている。橋本氏の記事の最後は、
政権が倒れるかもしれないほど重大な問題は、役所による招待客名簿の文書廃棄と、それを正当化するための文書廃棄ルールの事後的な変更の方なんだよ。
と締め括られているが、それも「桜を見る会の問題」の一端だ。にもかかわらず、「桜を見る会の問題は政権が変わる程のことではない」とは一体何を言っているのだろうか。そしてロバートソンさんは何故それを「まさにこれ」だと言っているのだろうか。自分にはそんな話のどこに整合性があるのか分からない。


 桜を見る会の問題についての説明に関して、政府と与党が消極的な姿勢を変えないことを理由に、今日野党は全ての国会審議を拒否するという手段に出たそうだ(桜を見る会“首相招待枠”めぐり与野党対決深まる TBS NEWS)。


審議拒否は、会期末までのらりくらりとして逃げ切りたい政府と与党の思う壺で、全く支持することはできない。
 そのようなことを理由として「野党はだらしない」と言う人もいる。審議拒否は確かに良い判断とは思えないものの、そんな状況の原因を作っているのは一体誰か。首相や官房長官、そして関係省庁の官僚らが明瞭に問題性のなさを詳しく説明をすれば、こんな時間の浪費は起きないはずだ。この状況で「野党がだらしない」と言うのは、経営者が横領した会社の社員が抗議のボイコットをしたのに対して、「お前ら社員がだらしないから横領されたのに何やってるんだ」と責めるのと同じだ。確かに予防意識は重要だが、それでも横領が起きた責任を経営者ではなく社員に責任を求めるのはおかしい。経営者は横領しても「会計記録は破棄してしまっている。横領はなかったとしか言えない」と言えば責任は追及されなくなる。
 橋本氏やロバートソンさんが言っているのは、疑惑を指摘された経営者が充分な説明をしていないのに、「経営者の横領疑惑は問題だが、経営者が変わる程のことではない」のようなことだ。よくそんな呑気なことが言えるものだ。


 大体、 当初「招待者選定に政治家の関与はない」「問題はない」という主張を繰り返していたのに、首相をはじめとした政府・与党関係者によって数千人単位の参加者推薦が行われており、しかも首相に関しては参加を希望した支持者を丸々参加させていたような状況のようで、会自体についても「反省すべき点・見直す点がある」などと言い始めたり、11/22の投稿でも触れたように、発言の直後にバレるような嘘を官房長官が国会審議の中でついたりしているのに、「政権が変わる程のことではない」とは到底思えない。
 また、以下のこの数日間の一連の話を勘案すれば、

「桜を見る会」問題、野党“シュレッダー”“マルチ商法”追及 TBS NEWS

桜を見る会、“マルチ商法”元会長も総理枠か TBS NEWS

桜を見る会、「反社参加」で野党側追及強める TBS NEWS

野党「官房長官の進退に関わる」 桜を見る会に「反社勢力」か TBS NEWS

桜を見る会“反社会勢力”めぐり「出席したとは言っていない」 TBS NEWS

菅長官、シュレッダーの使用予約 名簿廃棄する2週間以上前 TBS NEWS

区分番号「60」は“総理枠”か? 「桜を見る会」で野党追及 TBS NEWS

「桜を見る会」招待者名簿、菅長官「復元できないと聞いている」 TBS NEWS

野党、招待者区分説明なければ29日から審議に応じず TBS NEWS


桜を見る会“首相招待枠”めぐり与野党対決深まる TBS NEWS

官房長官の説明が支離滅裂なこと、なぜか与党がそれを追求しようとしていないことは誰の目にも明白だ。
(反社会勢力の)出席は把握していなかったが、結果として入っていただろう
反社会勢力について、さまざまな場面で使われることがあり、定義が一義的に定まっているわけではないと承知している。もし桜を見る会の会場で一緒に撮った写真があるというなら、私自身は把握していないが、その方は結果として会場にいらしたのだろうと申し上げた。反社会勢力が桜を見る会に出席していたということは私自身は申し上げていない
(個人情報であることを理由に)招待されたかどうかも含めて出席者名を答えることは控えたい
データについては、復元することはできないと聞いている
このように官房長官の発言は、反社会勢力に関する話についても一貫性がなく、反社会勢力の定義は定まっていないなどと言い始める始末で、それで一体どうやってテロ対策をする/してきたと言うのだろうか。また出席者に関しても、「答えることは控える」と言ったり「破棄されたデータは復元できない(から分からない)」と言ったり一貫性がない。データがないなら「答えることは控える」ではなく、「お答えしようがない」という反応になるはずだ。
 シュレッダー云々に関しても同様で、当初「シュレッダーや、それに関する記録は開示出来ない」 のようなことを官僚が言っていたのは一体何だったのだろうか。「兎に角蓋をして隠しておきたい」という思いの表出以外の何だと言うのか。

 因みに、その菅氏は 自民党が野党だった2012年1月に「議事録も作成しない「誤った政治主導」 | すが義偉の「意志あれば道あり」 Powered by Ameba / インターネットアーカイブ」を投稿し、その中で
政策決定過程の多くは非公開で議事録も作成されず、「密室政治」となっています。議事録作成という基本的な義務も果たさず、「誤った政治主導」をふりかざして恣意的に国家を運営する民主党には、政権を担う資格がないのは明らかです。
としている。「他人に厳しく自分に甘い」とは、まさに彼の為にある表現だ。


 日本政府のスポークスマンである官房長官の記者会見・国会審議での主張がこんなに支離滅裂なのに、与党がそれを指摘しようとも追求しようともしていない状況で、「桜を見る会の問題は政権が変わる程のことではない」なんて認識できる人達の気が知れない。そんな人達の巻き添えを食って、国もろとも沈没するのは真っ平である。
 トップ画像のマトリョーシカに例えれば、首相や官房長官、そして官僚がすぐにバレるような嘘を公然つくという問題のサイズは、一番左の最も大きいマトリョーシカ以外の何ものでもない。


 トップ画像は、Igor DrondinによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。