昨夜のNHKスペシャルは「証言ドキュメント 永田町・権力の興亡 最長政権 その光と影」というタイトルだった。自分は、今年の3月に投稿した「NHKの報道は大本営発表を伝えるだけの政府広報機関に成り下がったとしか思えない」という文を含むツイートを、自分のページの最上位に表示される固定ツイートに設定している。現時点のNHK政治報道は、当時に比べれば幾分政府広報感は改善されているようにも思うが、その印象は概ね払拭できたと言えるか?と問われれば、全くそんなことはない。つまり、昨日のNHKスペシャルの内容にも、見る前から期待感など全くなく、NHKがどんな番組に仕上げるのか、という点にしか殆ど興味はなかった。
毎日新聞の12/24の記事「「60番」首相枠 「05年はそうだったかもしれない」桜を見る会・野党ヒアリング詳報 - 毎日新聞」を見て、自分はこのようにツイートした。
新聞は結構扱ってるのに、テレビが「国会閉じたら終わり」な雰囲気を醸してるんだよね。緊急年末特番組むくらいのことしろよ。特にNHK。しかしNHKが年末に放送した番組は、現政権が妥当性のある説明をしないことや、そもそも積極的に説明しようとせず、全く説明責任を果たしているとは言えないことを積極的に指摘するものではなく、一応政権の至らぬ点という体裁で、桜を見る会の問題に限らず、幾つかの事柄には触れているものの、タイトルに「光と影」とあるように、同番組はなんとも踏ん切りの悪い、まるで他人事な立ち位置で作られた内容だった。
当初掲げた物価上昇率2%の達成も未だ出来ず、北方領土問題にも拉致問題にも進展はなく、女性活躍や少子化対策を掲げているのに、ジェンダーギャップ指数も出生数も過去最低。今の政権に「光」なんて一体どこにあるのだろう。
今朝、ツイッターのタイムラインに、
30日には、NHKの“安倍首相に言い訳をさせる特番”にも、堂々と出演されていましたね。こんな問題があったのも忘れたかのようなすました表情で。 https://t.co/ZpegHlEgqy— m TAKANO (@mt3678mt) December 29, 2019
というツイートが流れてきた。前述の番組紹介ページには、
政権維持が優先されるあまり、政治のモラルハザードや立法府の地盤沈下を招いたとの指摘は、野党のみならず与党内からも上がっている。という文言もあるものの、NHKは政府広報化しているという印象は今も変わらないし、実際に番組を見てみると、まるでどこか他国の政治事情を番組にしているかのような、他人事な視点にしか見えなかったので、「NHKの“安倍首相に言い訳をさせる特番”」とは全く言い得て妙だと感じた。
番組で特に印象的だったのは、事前に取材依頼をしていたのだろうから、インタビューに応じた者達が事前に口裏合わせすることも可能なので、どこまで本当か、というかそもそも本当の話なのかすら分からないが、財務省の改竄問題について、麻生財務大臣が責任をとって辞任する意向を示したのに、首相や官房長官、甘利氏などが強く引き留めた、と本人らがインタビューの中で話していたことと、もしそこで麻生氏が辞めていたら政権は維持できなかっただろうと、ほぼ全員が述べていたことだ。
つまり、政権維持の為に責任をとるべき者がとらなかったと、政権の要人自らが認めていることになる。しかし番組には、その政権内部の傾向を強く疑問視するようなニュアンスは全く感じられなかった。寧ろ「長く政権を続けることにもメリットがあり、その為には仕方のない事」という旨の、彼らの主張を両論併記的に紹介することで、疑問視するどころか矮小化しているようにすら見えた。
NHKは「NHK政治マガジン」なるページを設けている。次のスクリーンショットは同ページの、12/27版の中吊り広告風トップページだ。
秋元議員のIRを巡る汚職疑惑の件も中サイズの見出しになっているし、桜を見る会へマルチ商法による被害が問題化しているジャパンライフの元会長を招待したのは、安倍首相であることがほぼ確定的であることについての記事もある。
つまり一見すると、「NHKは政府広報化している」というお前の認識は間違ってるんじゃないのか?という風にも感じられるだろう。この投稿の冒頭でも「当時に比べれば幾分政府広報感は改善されているようにも思う」と書いたように、改善の兆しが全く見えないわけではないし、もしNHKの政府広報化が事実だとしても、NHKや政府だって馬鹿じゃないから、中国や北朝鮮のように、政権にとって都合の悪い記事や報道を一切合切排除したら、どんなお人好しでも不信感を抱くことくらいは分かっているだろう。
この中で自分が注目するのは、「ねほりはほり聞いて!政治のことば」という記事だ。
「政治記事も面白いんです!みんなで“使える”WEBマガジン」とトップページに掲げられているように、NHK政治マガジンには政治への興味を喚起するという命題もあるようで、この記事では人気番組・ねほりんぱほりん の人形を使い、政治=難しい という印象を払拭しようとしている。この記事は、毎回、読者から寄せられた「政治のことば」を担当デスクが解説するという体裁になっており、この投稿を書いている時点の最新は「賃上げ率の推移」について、
賃上げ率の推移とは
厚生労働省によりますと、主要企業の春闘での賃金の引き上げ率は、2019年は2.18%で、6年連続で2%台となっています。連合が発足した1989年は、5.17%と高い水準でしたが、徐々に下がって、2002年に2%を割り込み、2003年には、1.63%と最低水準となりました。
その後、2014年には、政府が、経済界に対して賃上げを要請したこともあって、2.19%と13年ぶりに2%を上回りました。
と解説している。自分には「賃金の動向は改善している」と印象付けたいという意図が、この記事から強く感じられる。しかし実際は、名目賃金・実質賃金共に低迷しているのが現状だ。
「9月の実質賃金、9カ月ぶり増 厚労省毎勤統計 :日本経済新聞」という報道もあるが、あくまで消費税が10%に増税される10月直前の数字だ。消費税増税による景気の悪化を示す指標もすでにいくつか出てきているし、来年には東京オリンピックがある。つまりこれまで一部が恩恵を受けたオリンピック特需も終わる。なので2019年9月の賃金が増えていたとしても、手放しで喜べるような状況ではない。
「ねほりはほり聞いて!政治のことば」の中で、これまでにそのようなことを紹介しているのなら、前述の「賃上げ率の推移」のような解説があっても、その項目の説明だけに注目して、「賃金の動向は改善している」と印象付けたいという意図がこの記事から強く感じられる、と指摘するのはフェアじゃないかもしれない。しかし、これまでに解説してきた言葉の中には「実質賃金」も「名目賃金」もないし、
もしあったとしても、この「賃上げ率の推移」の解説を読んだ人が、その解説も合わせて読むとは限らない。ならば解説に、賃上げ率は上昇しているが労働者が手にする賃金は増えていないこと、を添えるべきではないだろうか。また、一応読者から寄せられた質問に応えて解説するという体裁だが、何を選んで解説するかはページを作っている側の匙加減による。
勿論、これを見ても「賃金の動向は改善している」と印象付けたいという意図を感じない人がいても何も不思議ではないが、自分には全くそうは思えない、というのが、この数年の積み重ねによる感想だ。なので、 「NHKが2度目の「北朝鮮ミサイル」誤報。原因は「ボタンの押し間違え」BuzzFeed Japan」のような話を聞くと、
訓練中に手順では操作しないことになっている外部に配信できるモードに切り替えられるボタンを誤って押したことによるミスでしたという体裁で、実は「また北朝鮮がそんなこと仕掛けてきてますよー」という空気作りの為に、わざと誤報したんじゃないだろうか?などと邪推してしまう。NHK政治報道は信用ならないし、首相は北朝鮮の脅威をしばしば恣意的に利用してきたし、今は有権者の目を外に向けたくて仕方ない時期だろうから。
ここまでNHK報道に対する不信感を書いてきたが、前述したように「新聞は結構扱ってるのに、テレビが「国会閉じたら終わり」な雰囲気を醸してるんだよね」と感じているので、自分が不信感を抱いているのはNHKに限らずテレビ報道全般だ。
以前は、テレビ報道全般という大きな括りで批判するのは如何なものか、とも思っていたのだが、7-9月頃の、日韓政治摩擦を取り上げた在京キー局ほぼ全ての番組の姿勢や、厚労政務官による外国人労働者の在留資格を巡る法務省への口利きという、国内の汚職問題が浮上していたにも関わらず(上野宏史厚労政務官の「口利き&金銭要求」音声 | 文春オンライン)、テレビ各局は連日韓国法相候補の問題にばかり多くの時間を割いていたことなどから、個人的なテレビ報道に対する不信感がマックスになったのが今年・2019年の象徴的な出来事の1つだ。
なので、「大手ニュース専門放送局が「都合のいい幻想」を視聴者に見せることで国家の脅威になっているとの指摘 - GIGAZINE」という、
アメリカの大手ニュース専門放送局であるFOXニュースは保守・共和党寄りの報道姿勢で知られており、「FOXニュースは不寛容とヘイトのネットワークと化しており、ドナルド・トランプ政権のための国家支援テレビとして機能している」との批判もあります。アメリカの雑誌であるWIREDの電子版も、「FOXニュースはウソを助長しており、国家安全保障上の脅威になっている」と強く批判しています。米・FOXニュースに対する批判を展開する記事を見ても、日本はより深刻で、報道特集や最近のNEWS23など、番組によってはそうでない場合もあるが、全ての局に「政権のための国家支援テレビとして機能している」側面が感じられ、日本の場合「都合のいい幻想」を視聴者に見せるというよりも、都合の悪いことは放送しないという印象がある、という感想になり、「日本の方がより酷い」と感じられた。
ネットに押されてテレビは斜陽傾向と言われて久しいが、それでも中高年以上を中心に、まだまだ世論誘導するだけの力を持っているメディアでもある。明らかに世論誘導が行われていると断言することはできないが、現在の日本のテレビ各局の報道姿勢は、自分には世論誘導をしているようにしか見えない。
官房長官記者会見で、これまで忖度抜きで積極的に聞くべきことを聞いているのは東京新聞の望月記者だけという印象だったが、桜を見る会の問題が浮上して以降、毎日新聞や北海道新聞の記者も積極的に質問するようになった。遅きに失した感はあるが、それでも一部の記者が積極性を取り戻し始めているのは不幸中の幸いだ。テレビ局の記者らは未だに積極性が不充分なようだが、12/26の投稿でも触れたように、12/25の官房長官記者会見では、都合の悪い質問を打ち切ろうとする官邸側に対して、テレビ東京の記者がその不適切さを指摘する場面も見られた。
どの局もそのように、現状に対してまるで他人事な姿勢でなく、「権力を監視する」という報道機関の役割を充分に果たして欲しい。NHKは視聴者から強制的に受信料を徴収しているので尚更だ。「証言ドキュメント 永田町・権力の興亡 最長政権 その光と影」のような「安倍首相に言い訳をさせる特番」をつくるなら、受信料など1円も払いたくない。