批判と中傷の区別がつかない人がSNSを中心に大勢いる。分別の充分でない未成年者ならある程度仕方ないとも思うが、大人にも大勢いるし、テレビなどマスメディアで、コメンテーターや有識者のような立場で主張を繰り広げる人や、弁護士、政治家、国会議員などの肩書を持つ人にも、その類の人が決して少なくない。何度書いたか分からないが、そんな状態で子どもがいじめを止める筈がない。
1/28、毎日新聞は「京都市長選 現職支持団体が「共産党『NO』」広告 著名人の顔写真、許可なく掲載も」という記事を掲載した。1/26に京都新聞が掲載した、2/2投開票の京都市長選に関する、現職の門川 大作氏の選挙母体「未来の京都をつくる会」が出稿した広告に関する記事だ。京都市長選には、自民・立民・国民・公明・社民が推薦する現職の門川 大作氏、共産・れいわが推薦する福山 和人氏、元京都市議会議員の村山 祥栄氏の3人が立候補している。
この広告には、
大切な京都に共産党の市長は『NO』とあるが、共産党がどう独善的なのかに関する説明は一切ない。説明なしに「独善的」とすることはレッテルを貼る行為であり、この広告は共産党と、同党が推薦する福山氏に対する所謂ネガティブキャンペーンだ。政治におけるネガティブキャンペーンとは、「政策上の欠点や人格上の問題点を批判して信頼を失わせる選挙戦術」を指す場合もあり、その場合は必ずしも問題のある行為とは言えないが、「誹謗中傷により対立候補をおとしめる選挙戦術」を指す表現でもあり、この広告は後者に該当する恐れが高い。何故なら、福山氏や共産党の政策に対する欠陥の明確な指摘が一切ないからだ。
わたしたちの京都を共産党による独善的な市政に陥らせてはいけません
更に、毎日新聞の見出しにもあるように、広告下部に、門川氏の支援者のような体裁で掲載されている人達の何人かが、許可なく広告に掲載されたとしている。
元京都造形芸術大学学長で同大教授の日本画家・千住博氏(62)が「まるで千住博がこの様な活動に同意しているような意見広告に、千住の許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います」と無断掲載である旨を主張した。
俳優・榎木孝明氏のコメント:今回の広告に対しての意見を求められた事はありません。この記事を出すに当たり確認もなかったので、昨日(1月26日)門川氏の担当者に連絡をして今後このような使い方はしないでほしいとお伝えしました。私は政党に対してあくまでも中庸で京都を大切に思う一人です。
俳優の夏木マリさんが「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問」の肩書で推薦人となっていることについて、組織委は事前に把握していなかった毎日新聞の記事には、「放送作家の小山薫堂さんらも「許可なく掲載され、遺憾だ」などと反発している」ともある。
選挙母体の広告に使用されたことについて「組織委が賛同しているように見えてしまう」と指摘
広告は門川氏を支援する団体による、という体裁ではあるが、この広告に対して門川氏自身が苦言を呈したとか何か言及したという報道は、ざっと調べた限り見当たらない。また、立民幹事長である福山 哲郎氏が
私が門川大作京都市長候補を応援する理由は、3期京都市民とともに汗をかき、知恵を絞り、結果を出されたことを評価するからです。京都市立中・高の改革、待機児童ゼロ、地下鉄黒字化、市場の整備…。政策論争は当然ですが、選挙運動が過熱しているとはいえ、今回の意見広告には強い違和感を覚えます。— 福山哲郎・立憲民主党(りっけん) (@fuku_tetsu) January 28, 2020
とツイートしているのは見つけられたが、門川氏を推薦している自民・立民・国民・公明・社民から、何かしらの見解が示されたという報道も見当たらなかった。
そんな状況の中で、昨日(1/31)J-CASTニュースが、「枝野氏、共産党NO広告を「存じ上げない」? 立憲・国民、両代表の苦しいコメント」という記事を掲載した。
見出し通り、京都市長選に関する門川陣営による共産党へのネガティブキャンペーンに関して、立民・枝野代表は
広告自体存じ上げませんので、コメントのしようがありません国民民主・玉木代表は
党本部としては特段コメントすることはないと、事実上コメントすることを避けたという内容である。個人的に玉木氏には期待していないのでどうでもいい。問題は枝野氏だ。この投稿で触れた以外にも複数のメディアで関連記事が掲載されており、SNSでもそれなりに話題になっていて、しかも幹事長の福山氏がツイッターで違和感を示しているにも関わらず、党として推薦する候補者(の陣営)が掲出した広告について、その党の代表が「広告自体を知らない」なんて話に、一体どれ程の人が信憑性を感じることが出来るだろうか。
安倍氏や菅官房長官などが都合の悪い質問を退ける際に使う論法と全く同様であり、枝野氏のこの発言には強く落胆させられる。曲がりなりにも野党第一党の党代表が、嘘や誤魔化しに塗れた政権の長やスポークスマンと同様の稚拙な論法を使うようでは、現政権の支持理由の代表格「他よりマシ」を、野党第一党代表が裏付けるようなことにもなりかねない。
枝野氏については、震災・原発事故時の官房長官として発した「直ちに影響はない」が、余りにも無責任に聞こえた為、その印象が強く残っており、自分もあまりいいイメージを持っていない。しかしそれでも、それからもう10年近い年月が経っているし、前代未聞レベルの改竄や隠蔽が横行する現政権や、嘘や誤魔化しが常態化しているその関係者よりは幾分マシだと思っていたが、これでは本当に現政権と団栗の背比べかそれ以下という風にも思えてしまう。あの政権与党と首相に対してこの野党第一党と代表かと思うと、いよいよこの国は本当に地獄の様相を呈してきた、と感じる。
更に言えば、テレビ局の中で一番マシだと思っていたTBSが、昨日の投稿で書いたように、野党が指摘したことには触れず、あたかも与党・自民と首相が手柄を立てたかのような報道をしており、近い将来、大政翼賛会の再来、1930年代の本当の意味での再現があるかもしれないとすら思え、強い絶望感に苛まれる。