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日本で感染とデマが拡大するのが、当然の成り行きである理由


 「現在BuzzFeed Japanが新型肺炎に関する正しい情報と、子宮頸がん/HPVワクチンに関する記事に力を入れているのは素晴らしいことだが、その影響か、国会や政治に関するBuzzfeedの記事が減っているのは残念だ」と、2/6の投稿で書いた。今もその傾向は変わっておらず、その見解に大きな変わりはないのだが、しかしそれと同時に、Buzzfeedが、新型コロナウイルスに関するファクトチェック記事に力を入れていることも同時に評価したい。

 Buzzfeed Japanは以前から、ネットに広がる根拠・出所が不明瞭な記事・主張の検証記事、所謂ファクトチェックに力を入れている。示された検証結果に賛同しかねる記事も時折掲載されるものの、概ね誠実な検証がなされていると自分は受け止めており、非常に大事な取り組みだと考えている。
 現在Buzzfeed Japanは、新型コロナウイルス関連の流言飛語に関する情報の検証記事に力を入れており、この投稿を書いている2/16の時点で、
と、既に19本もの記事を掲載している。Buzzfeedが最初に掲載した新型コロナウイルス関連の検証記事・USJと京都にー の掲載が1/24なので、1か月も経たない内にこんなにも多くの、厳しい言えばデマが登場し、その多くがSNSで拡散している、というのが現状だ。

 つい数日前まで日本における感染者は、横浜港に停泊中のクルーズ船を除けば30人にも満たないレベルであったが、この数日、和歌山の病院や東京のタクシー運転手など、中国への渡航歴も感染者との濃厚接触も定かでない人の感染が確認され始めた。中国で感染が広がっただけでこんなにも多くの流言飛語が飛び交うなら、国内で感染が広がり始めたら、更に多くのデマが飛び交うのではないだろうか。
 しかも、これまで広がったデマの大多数の背景には、中国や中国人に対する偏見や差別的な感情が見え隠れしていた。新型コロナウイルスが中国で流行し始めて以降、しばしば「中国人お断り」という看板を掲げる店などが、その不適切さを指摘されたが、欧米では既に各地で中国人お断りではなく、アジア人お断りという差別が起きているそうだ。流行地への渡航歴もない外国人どころか、その国の国籍を持っている人にまで、人種・民族だけで排除するのは明らかな差部である。


  昨日・2/15には「名古屋の60代女性も感染 夫とハワイ、医療機関に同行―新型肺炎:時事ドットコム」という報道があった。1/28にハワイへ渡航し2/7に日本へ帰国した60代女性が、新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたという記事である。潜伏期間とされている間に中国への渡航歴はなく、どの時点で感染したのかは定かでない。ハワイへの渡航前に日本で感染した恐れ、移動中の機内で感染した恐れ、渡航先のハワイで感染した恐れ、どれも否定できない。
 こうなると広がるのは疑心暗鬼で、ツイッターにこんな投稿をした人がいる。



 この投稿が事実であるなら、このハワイのタクシー運転手は「日本人(若しくはアジアからの旅行者と思われる人全般)は感染の恐れがあるから乗せたくない」と思い、その思いのままに行動したのだろう。日本でも中国への渡航歴のないタクシー運転手が感染していることから、不特定多数と狭い空間を共有せざるを得ないタクシー運転手がそのような行動に出てしまう気持ちも理解出来なくはない。しかし、それがエスカレートすると、大変な混乱が生じる。


 本来はそうならない為に政府が毅然とした、そして先を見越した施策を積極的に打たなければならないのだが、日本の現政府は明らかに後手後手だ。何せ今更「新型コロナ抑止、専門家会議設置へ…相談センターは全国536か所 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン」などと言い始めたのだ。


 これまで一体誰がどんな見識で対策をしてきたのか。勿論厚労省等にはそれなりの知識を持っている官僚はいるだろうが、昨今の政府内では、改竄捏造隠蔽が横行しているし、政府内だけでまともな対応が期待できない感は否めない。こんな風では、政府主導の専門家会議だって、政府に都合のよいことしかしないのではないか?とすら感じる。
 それを強く感じさせるのが、西日本新聞の「東京五輪・パラ大丈夫か、官邸が懸念 「市中感染」新型肺炎の拡大新局面へ」という記事だ。


この記事には、
  • 複数の政府関係者は「官邸は当初、危機感が乏しかった」と明かす
  • 官邸周辺は「肺炎と五輪を結び付けたくない首相の思いがにじみ出た」と打ち明ける
  • 「死者が続出したら政権が持たない」と官邸関係者
などとある。この記事は状況に即した内容であると、現段階では断定することは難しいが、現状を見れば、全く説得力を欠く素っ頓狂な内容とも言えない。もしこの記事が事実と大きく乖離していないのであれば、この期に及んで政府は五輪の開催とか、政権が持たないとか、感染拡大の防止よりも面子を重視しているとしか言えない。
 現政権は、森友加計問題・桜を見る会の問題、そして景気対策・消費税増税の影響についても、兎に角面子重視であり、面子の為なら公文書の改竄捏造隠蔽も辞さないという風にしか思えないことが頻繁に起きている。


 この投稿の中盤で
中国で感染が広がっただけでこんなにも多くの流言飛語が飛び交うなら、国内で感染が広がり始めたら、更に多くのデマが飛び交うのではないだろうか
と書いたが、そんな政権をこれまで「他よりマシ」などと言って、有権者の大半が支持してきたのだから、日本で感染とデマが拡大するのは当然の成り行き、自業自得と言ってもいいのかもしれない。なにせこの国ではなにかと「自己責任」と言いがちだ。
 他人を不要に呪うと、その影響が己にも返ってくる、ということを強く思い知らされる。


 トップ画像は、Photo by Daniele Levis Pelusi on Unsplash を加工して使用した。

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