「現在BuzzFeed Japanが新型肺炎に関する正しい情報と、子宮頸がん/HPVワクチンに関する記事に力を入れているのは素晴らしいことだが、その影響か、国会や政治に関するBuzzfeedの記事が減っているのは残念だ」と、2/6の投稿で書いた。今もその傾向は変わっておらず、その見解に大きな変わりはないのだが、しかしそれと同時に、Buzzfeedが、新型コロナウイルスに関するファクトチェック記事に力を入れていることも同時に評価したい。
Buzzfeed Japanは以前から、ネットに広がる根拠・出所が不明瞭な記事・主張の検証記事、所謂ファクトチェックに力を入れている。示された検証結果に賛同しかねる記事も時折掲載されるものの、概ね誠実な検証がなされていると自分は受け止めており、非常に大事な取り組みだと考えている。
現在Buzzfeed Japanは、新型コロナウイルス関連の流言飛語に関する情報の検証記事に力を入れており、この投稿を書いている2/16の時点で、
- 中国・武漢市民による市封鎖までの「移動した痕跡を元にマップ化」は誤り 新型コロナめぐり拡散
- 「武漢で死体を焼やすと発生するガスが大量検出」は誤り。新型コロナめぐり世界で拡散
- 新型コロナで「戦々恐々とする中」玉城デニー知事が踊った、は誤り
- 新型コロナウイルスで「北京封鎖」はミスリード。日本のメディアが報じない事実として拡散
- 新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。ネットで不安と誤解が拡散
- 「歌舞伎町の病院で…」「成田のイオンで…」相次ぐコロナ感染のうわさは事実無根
- 「武漢から帰国した議員が検査拒否→コロナウイルスに感染」は誤り。「殺しに行こう」の書き込みも
- 新型コロナウイルスは「飛沫感染するエイズウイルス」は誤り。専門家「多くの生物から同じような配列は見つかる」
- ネットで拡散「新型コロナウイルスの危険度と対策」を医師が検証した結果… 「気軽に情報ひろめないで」
- 新型コロナを「正しく怖がるため」。世界中のあやしい情報、ファクトチェックが一覧に
- 「台湾人、中国人のマスク買い占めを防ぐため国旗を印刷」は誤り。新型コロナめぐり、まとめサイトが拡散
- 「殺人ウイルス兵器」「かかったら死ぬ」YouTubeやTikTokで広がる「新型コロナウイルスの真実」に注意
- 新型コロナウイルスで「東京オリンピック中止か」はミスリード。組織委員会は「中止は検討しておりません」と回答
- 「約4600人の中国人観光客が博多に入港」1月29日のツイートはミスリード。拡散したのは以前の画像
- 民主党政権が「健康保険が外国人に悪用される原因を作った」は誤り。新型コロナウイルスめぐり拡散
- 新型コロナウイルス「中国人が日本の健康保険を“悪乗り”するために押し寄せる」は不正確。まとめサイトが拡散
- 「新型コロナウイルスは人類史上最凶、致死率15%」は誤り。ネットで拡散、実際は…
- 「この情報はデマです」大阪府知事、新型肺炎で拡散の「中国人逃走」に注意呼びかけ
- 新型肺炎でデマ拡散「中国人が関空から病院に搬送、検査前に逃走した」は事実無根「USJと京都に向かった」と広がる
つい数日前まで日本における感染者は、横浜港に停泊中のクルーズ船を除けば30人にも満たないレベルであったが、この数日、和歌山の病院や東京のタクシー運転手など、中国への渡航歴も感染者との濃厚接触も定かでない人の感染が確認され始めた。中国で感染が広がっただけでこんなにも多くの流言飛語が飛び交うなら、国内で感染が広がり始めたら、更に多くのデマが飛び交うのではないだろうか。
しかも、これまで広がったデマの大多数の背景には、中国や中国人に対する偏見や差別的な感情が見え隠れしていた。新型コロナウイルスが中国で流行し始めて以降、しばしば「中国人お断り」という看板を掲げる店などが、その不適切さを指摘されたが、欧米では既に各地で中国人お断りではなく、アジア人お断りという差別が起きているそうだ。流行地への渡航歴もない外国人どころか、その国の国籍を持っている人にまで、人種・民族だけで排除するのは明らかな差部である。
昨日・2/15には「名古屋の60代女性も感染 夫とハワイ、医療機関に同行―新型肺炎:時事ドットコム」という報道があった。1/28にハワイへ渡航し2/7に日本へ帰国した60代女性が、新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたという記事である。潜伏期間とされている間に中国への渡航歴はなく、どの時点で感染したのかは定かでない。ハワイへの渡航前に日本で感染した恐れ、移動中の機内で感染した恐れ、渡航先のハワイで感染した恐れ、どれも否定できない。
こうなると広がるのは疑心暗鬼で、ツイッターにこんな投稿をした人がいる。
ハワイに旅行に来ていた日本人観光客のコロナ感染のニュースが今朝出て以来、ピリついているハワイ。先程タクシーに乗ると、私が日本人だと知ってすかさず医療用のマスクを付けたドライバー。行き先を告げても発進せず、例のニュースを携帯で遠目から無言で見せてきました。そういうことです。— agape.1111 (@agape808) February 15, 2020
ちなみにドライバーは中国人でした。そんな色々複雑な状況で気まずくなりつつも、“体に気をつけて頑張ってください”と告げて降りたら笑顔で去って行きました。やっと降りたな!という笑顔だったのかもしれませんが、私は日本人として明日も変わらず生きていきます。— agape.1111 (@agape808) February 15, 2020
この投稿が事実であるなら、このハワイのタクシー運転手は「日本人(若しくはアジアからの旅行者と思われる人全般)は感染の恐れがあるから乗せたくない」と思い、その思いのままに行動したのだろう。日本でも中国への渡航歴のないタクシー運転手が感染していることから、不特定多数と狭い空間を共有せざるを得ないタクシー運転手がそのような行動に出てしまう気持ちも理解出来なくはない。しかし、それがエスカレートすると、大変な混乱が生じる。
本来はそうならない為に政府が毅然とした、そして先を見越した施策を積極的に打たなければならないのだが、日本の現政府は明らかに後手後手だ。何せ今更「新型コロナ抑止、専門家会議設置へ…相談センターは全国536か所 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン」などと言い始めたのだ。
これまで一体誰がどんな見識で対策をしてきたのか。勿論厚労省等にはそれなりの知識を持っている官僚はいるだろうが、昨今の政府内では、改竄捏造隠蔽が横行しているし、政府内だけでまともな対応が期待できない感は否めない。こんな風では、政府主導の専門家会議だって、政府に都合のよいことしかしないのではないか?とすら感じる。
それを強く感じさせるのが、西日本新聞の「東京五輪・パラ大丈夫か、官邸が懸念 「市中感染」新型肺炎の拡大新局面へ」という記事だ。
この記事には、
- 複数の政府関係者は「官邸は当初、危機感が乏しかった」と明かす
- 官邸周辺は「肺炎と五輪を結び付けたくない首相の思いがにじみ出た」と打ち明ける
- 「死者が続出したら政権が持たない」と官邸関係者
現政権は、森友加計問題・桜を見る会の問題、そして景気対策・消費税増税の影響についても、兎に角面子重視であり、面子の為なら公文書の改竄捏造隠蔽も辞さないという風にしか思えないことが頻繁に起きている。
この投稿の中盤で
中国で感染が広がっただけでこんなにも多くの流言飛語が飛び交うなら、国内で感染が広がり始めたら、更に多くのデマが飛び交うのではないだろうかと書いたが、そんな政権をこれまで「他よりマシ」などと言って、有権者の大半が支持してきたのだから、日本で感染とデマが拡大するのは当然の成り行き、自業自得と言ってもいいのかもしれない。なにせこの国ではなにかと「自己責任」と言いがちだ。
他人を不要に呪うと、その影響が己にも返ってくる、ということを強く思い知らされる。
トップ画像は、Photo by Daniele Levis Pelusi on Unsplash を加工して使用した。