ディズニーランド/ディズニーシーの1デーパスポートが、2020年4/1から8200円に値上げされるそうだ(1デーパスは8千円、年パスは約10万円に。ディズニー、4月以降の入園料を値上げへ BuzzFeed Japan)。2019年10月にも7400円から7500円へ100円値上げされたが、それは消費税増税に伴う値上げであり、実質的な値上げとしては2016年4月以来だ。
ディズニーランドの1日券は5000円前後だったような記憶がある。調べてみると1983年の開園時の1デーパスの価格は3900円で、2011年まで5000円台(2006-2011年の価格が5800円)だったようだ。2010年代以降は遊びに行った記憶がないので、それ以前のイメージが残っていたのだろう。ディズニーランド大人ワンデーパスポート価格の推移を示した次のグラフは、「【TDRトリビア】35年前のパスポートは約半額だった! ディズニーチケット価格の歴史と懐かしのチケット「ビッグ10」(2/2) - ディズニー特集 -ウレぴあ総研」に掲載されているものだ。
赤点がついている価格の上昇は、消費税導入・増税に伴う値上げである。
ディズニーランドが値上げする一方で、日本人の収入は決して上がっていない。厚労省が賃金に関する統計で不正を行い、実態よりも平均の賃金が高くなるような偽装がおこなわれていた、という話は記憶に新しい(2019年1/27の投稿)。日本人の賃金は1990年代に比べて8%も減っている。「東京新聞:<働き方改革の死角>日本、続く賃金低迷 97年比 先進国で唯一減:経済(TOKYO Web)」によると、賃金がマイナスなのは、先進国では日本が唯一だそうだ。
1990年代から賃金が8%も減っているのに、ディズニーランドの利用料は50%以上も増えている。つまり、ディズニーランドの利用がそれだけ「贅沢なことになった」と言える。
1990年代と比べて価格が上昇しているのはディズニーランドだけではない。 昨日「250ccのミッションバイクが約45万9800円は安すぎる?|GPX レジェンド250ツイン試乗|MotorFan[モーターファン]」という記事を見つけた。
東南アジアの中でマレーシアと経済発展で1,2を争うタイのバイクブランド・GPXの250ccモデルの価格が安い、という内容だ。GPXは新興ながら勢いのあるブランドで、タイ国内では、世界でも圧倒的No.1のシェアを誇るホンダとNo.2ヤマハに次ぐ第3位の地位を築き上げているそうだ。バイクの世界では日本の4大ブランドが世界の4大ブランドとなって久しいが、タイ国内に限定すれば、スズキとカワサキは既に抜かれているということになる。
この記事を見て感じたのは「1990年代のバイクってそのくらいの価格で、46万で”安すぎる”という感覚はなかった」ということだ。1991年から1996年まで販売されたホンダの250ccネイキッドモデル・ジェイドは、水冷4気筒エンジンにも関わらず48万円だった(Honda | 軽快で素直な走り味とシンプルで機能的なスタイルのネイキッド・ロードスポーツバイク「ホンダJADE(ジェイド)」を発売)。
前述のGPX レジェンド250ツインは空冷2気筒エンジンを搭載している。同じ250ccエンジンでも気筒数が多いとその分部品数が多くなるし、構造も複雑化する為、開発コストも製造コストも高くなる。また、水冷と空冷も部品の数が多くなるので水冷の方が高くなる。にも関わらず、ジェイドはレジェンド250ツインに比べて2万円しか高くなかった。因みに1996年に発売されたジェイドの後継モデル・ホーネットも、発売時の価格は50万円たらずだった。
また、1992-1998年まで販売された、レジェンド250ツインと同じく空冷2気筒エンジンを搭載したホンダのナイトホーク250の価格は35万円だった(Honda | 軽快で素直な走り味をもつシンプルなアメリカン・スタイルのロードスポーツバイク「ホンダナイトホーク250」を発売)。
レジェンド250ツインに比べると、ナイトホーク250はかなり装飾が質素なバイクだが、それでも10万円もの価格差はかなり大きい。タイからの輸入によって相応に輸送費が含まれることを考えても、それ以上にナイトホーク250は安かった。
2020年現在、ホンダが日本国内でラインナップしている250ccのネイキッドモデルはCB250Rのみである。CB250Rは水冷単気筒エンジンを搭載するモデルで、その価格は56万4000円だ。ホンダがラインナップしている250ccギア付きモデルの中で現在一番安いのは、CB250Rと同じく水冷単気筒エンジンを搭載する、オフロード向けモデルのCRF250Lで価格は50万7000円だ。1990年代に比べて、日本人にとってバイクも贅沢品になっていることがよく分かる。
例えば牛丼の価格や100円ショップで扱われる商品の質が確実に上がっていることなどを勘案すれば、1990年代に比べて物価が下がっている分野も確実にある。消費者物価指数 - Wikipedia に掲載されているグラフを見ても分かるように、社会全体ではまだ1990年代よりも物価は安い、と言えるかもしれないが、
現政権が物価上昇政策を行っている影響で物価は確実に上昇しており、牛丼価格は、吉野家が現在並盛352円+税(一部店舗では392円+税)となっており、1990年代の水準に戻りつつある(【支出】吉野家、松屋、すき家、3社の牛丼、価格推移-すき家も350円へ値上げで3社300円台の戦いへ)。
しかも、ディズニーランドやバイクの価格などは、物価が下落傾向だった00年代も決して下がってはおらず、昨今の物価上昇で更に価格が上がっていること、現在も賃金は、上がらないどころか下落傾向であることを考えれば、1990年代に比べて、平均的な日本人の暮らしはより質素になっていると言わざるを得ない。
現政権とその首相は「株価が上がった」とか「雇用が改善した」などとして、自身の経済政策の成果をしばしばアピールするが、雇用が改善しても賃金が上がっておらず、にも関わらず物価が上がっているということは、視点を変えれば、労働力の搾取が進行したとも言えるだろう。
以前世論調査では、政権支持理由に「経済政策への期待できるから」という声があったが、昨今は全く見られなくなった。7年も続く長期政権なのに、暮らしが全然楽にならなければそれも当然だろうが、それでも「他より良さそう」なんて曖昧な理由で支持が未だに50%前後あるのは不思議だ。世論調査を行うなら、何が他より良さそうなのか、を聞くべきではないのか。
個人的には、経済面だけでもこんな事実があるし、それ以外でも不誠実な話は枚挙に暇がないのに、それでも「他より良さそう」と現政権を指示するという人が約半数もいるなんて、日本人には税金をドブに捨てる人が多い、としか思えないし、明らかに物価だけが上昇し、賃金は上がっていないのにも関わらず、スタグフレーションという表現をメディア各社が用いて批判しないのは、メディア各社の怠慢・現政権への忖度としか思えない。
トップ画像は、Gerd AltmannによるPixabayからの画像 を使用した。