2019年7月、百舌鳥・古市古墳群が日本で23件目の世界遺産に認定された、という話が話題になった(世界遺産に「仁徳陵」など古墳群正式決定 国内23件目 [百舌鳥・古市古墳群]:朝日新聞デジタル)。同古墳群には国内最大とされる前方後円墳・大山古墳も含まれている。この古墳は自分が子どもの頃には仁徳天皇陵と教えられ、現在も宮内庁はそう言い張っているものの、近年では仁徳天皇の墓という説は否定的に捉えられている(大仙陵古墳 - Wikipedia)。
大山古墳が仁徳天皇の墓だろうがなかろうが、当時の有力者の墓であることには違いない。古墳のような巨大な建造物が作られたのは有力者が権力を誇示する為、と教えられた記憶がある。近年も産油国や経済発展著しい中国などで「世界一の○○」のような建造物が作られがちだし、日本国内でも「日本一高いビル」「日本一大きい観覧車」などはしばしば更新されており、また、オリンピックや万博の誘致して開催したい人達にも同じ様な意図が感じられ、今も昔も、人が巨大な何かによって力を誇示したがるのは変わっていないようにも感じる。
日本における近代以前の巨大建造物には大仏もあり、奈良・東大寺の大仏も1998年に「古都奈良の文化財」の一つとして世界遺産に認定された(古都奈良の文化財 - Wikipedia)。因みにトップ画像の大仏は、奈良の大仏ではなく鎌倉・高徳院の大仏だ(高徳院 - Wikipedia)。
大仏に限らず、日本では古代から近世にかけて多くの寺社仏閣が、権力者によってつくられた。小学校では「仏教の力によってあらゆる災いから逃れる為に、権力者たちは寺や大仏などをつくった」のように習った記憶がある。ただ、古墳同様に巨大な寺・大仏が作られた背景には、「俺が命じればこんなに凄いものが出来るぞ」と力を誇示し求心力を増す為だった、という側面もあるだろう。
また近代以前の日本では、仏教と神道の違いは一般的には明確に区別されていなかったようで(神仏習合 - Wikipedia)、日光東照宮のような豪華絢爛な神社が建立されることもあったが、それも結局、力の誇示と祭られた神の加護を得たい、という願いが込められたものであって、大仏や寺などと同様の理由で建てられたのだろう。
東大寺と大仏(東大寺 - Wikipedia)が建立された背景として、天平の疫病大流行があったことも挙げられる。天平の疫病とは天然痘のことで、735-737年に大流行し、当時の日本の総人口の25–35%・100–150万人が感染により死亡したと言われている。この天然痘の流行を背景に、聖武天皇はより仏教に救いを求めて帰依し、各地に国分寺、奈良には総国分寺として東大寺を、そして現在奈良の大仏と呼ばれる盧舎那仏を建立させた、という話がある(天平の疫病大流行 - Wikipedia)。
盧舎那仏像を鋳造する費用だけでも、国の財政を破綻させかねないほど巨額だったとする説もあり、新型ウイルスの感染が深刻化しつつある現在、指導者が同じ様に宗教に救いを求め、宗教的なシンボルに多額の国家予算をつぎ込もうとしたら、確実に大変な混乱が生じるだろうが、当時は全く医療が進んでおらず宗教に救いを求めるのが一般的だったのかもしれない。また、国分寺や大仏の建立によって食い扶持を得た、という庶民もいたのかもしれない。
しかし、現在同じことをすれば確実に、「もっと金をかけるべきところに金をかけろ、神頼みなんて馬鹿げている」という批判に晒されるだろう。
昨日・3/15、安倍首相が2/29に次いで(3/1の投稿)2度目の、新型コロナウイルス対応に関する記者会見を開いた。
また、ツッコミのいないボケ倒し大会のようにも感じられた為、ここからは彼のボケにツッコミを入れていく。
- 急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている
- 現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかというのが専門家の皆さんの評価です。
- 現時点で緊急事態を宣言する状況ではないと判断しています。ただし、事態は時々刻々変化しています。高い緊張感を持って事態の推移を注視し、国民の命と健康を守るため、必要であれば、手続にのっとって法律上の措置を実行する考えであります。
- 春のセンバツなど、今月予定されていた各種のスポーツ大会も中止となりました。出場を目指し、連日、厳しい練習に打ち込んできた学生の皆さんの悔しい気持ちは、察するに余りあります。皆さんが応援する御家族や同級生の前で思い切りその実力を発揮できる、そしてライバルと正々堂々競い合える日が一日も早く取り戻せるよう、全力を尽くすことをお約束します。
- 未知の部分が多い新型コロナウイルス感染症でしたが、皆さんの御協力を頂き、これまでの対策を進める中で、多くのことが分かってきました。
- 人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません。
- スポーツジムやライブハウスなど、特定の場所では集団での感染が確認された事例が報告されています。その共通点は、第1に換気の悪い密閉空間であったこと。第2に人が密集していたこと。そして第3に、近距離での会話や発声が行われたこと。この3つの条件が同時に重なった場合です。この3つの条件が重なる場所は感染リスクが高い
- 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。最後の思い出を作る、この大切な時期に学校を休みとしたことは、大変申し訳なく思っています。皆さんが先生や友達と育んできた絆は、決して色あせることはありません。そうした絆を大切にしながら、これからもそれぞれの道で大いに活躍されることを願っています。
- 現下の困難な状況を乗り越えていただくため、雇用調整助成金を全業種で活用いただけるようにしました。そして、これまでの前例に捉われることなく、実質、無利子・無担保の強力な資金繰り対策を全国規模で実施することとしました。
- 動向を注意深く見極めながら、今後も機動的に、必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じます。
- 地域経済の実情を十分に踏まえながら、政府与党の総力を挙げて練り上げてまいります。地域の声、現場の声に耳を傾けることで、全国津々浦々、心を一つに、正にワンチームで現在の苦境を乗り越えていきたいと考えています。
- PCR検査については、各種の取組により、現時点で、前回会見したときよりも50パーセント多い、1日当たり6,000件を超える確かな検査を行うことが可能となっています。
- 今月中には、1日当たり8,000件まで検査能力が増強できる見込みです。
- 現在は対症療法を根気強く続けるほかなく、決定的な治療薬やワクチンが存在しない。そのことが世界的な不安の最大の原因です。
- 世界の英知を結集することで治療薬などの開発を一気に加速したい。日本としてリーダーシップを発揮してまいります。
- 人類はこれまで幾度も感染症の脅威にさらされながら、そのたびに乗り越えてきました。世界が手を携えれば乗り越えられない困難などありません。
- クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号については、明日、全ての乗客・乗員への検疫対応が終了します。総員3,700名を超える船の中で見えないウイルスと闘うという前例のない、本当に困難を極めたミッションでありましたが、全員への検疫対応を終えることができます。
また、検疫対応を終えたと言っているが、下船した人の検査漏れや(クルーズ船を下船の23人検査漏れ 加藤厚労相「深く反省する」 - 産経ニュース)、下船した者の感染が後に発覚した事例は複数ある。(三重の70代男性が再び陽性 クルーズ船乗客、新型コロナ:社会:中日新聞(CHUNICHI Web) / クルーズ船乗客、下船した福島県内在住の7人のうち5人が郡山市在住 | 河北新報オンラインニュース / クルーズ船下船後に女性が陽性、発熱 初のケース 栃木県発表 新型肺炎 - 毎日新聞)。
3/1の投稿で指摘したように、2/29の会見で安倍氏は、質問を振り切って会見を終了しそのまま帰宅していた。これに対して大きな批判が各所で上がったこともあって、昨日の会見では一応予定を超えて質問を受付けたようではあるが、それでも結局50分弱足らずで質問を振り切って会見を打ち切っている。
— ジョンレモン (@horiris) March 14, 2020
で、その後すぐに予断を許さない状況への対応にあたったのかと言えば、やはり昨日もそのまま帰宅した。
首相会見。— カンドウヨシヒロ@Kando,Yoshihiro (@kando_abugen) March 14, 2020
今回は10分ほど延長したけれど、結局は「次の予定がある」と、質問が出続けるなか打ち切った。
どんな予定かと首相動静を見たら、うちに帰っただけだった。
自己PRはしたくても、丁丁発止の質疑をやる気がないとしか思えない。 pic.twitter.com/NJwIVPwXvy
ハッキリ言って、現在の日本の首相は、具体的なことは何も言わずに情緒的な話に終始しており、ワンチームで云々なんて言っているところを見ると、「みんなで力を合わせればどんな困難でも乗り越えられる!」のような、ある種宗教染みたことを言っているようにも感じる。さらに具体的な話が殆どないということは、「神頼み」になっている状況とも言えるのではないだろうか。
そんな風に考えると、安倍氏は「困難を乗り越える為に大仏を作りましょう、お寺を建てましょう」とは言っていないものの、「私を信じてみんなで心を一つにして、状況の改善を願いましょう」とは言っている、という認識もそれ程的外れとは思えない。
奈良時代は今からおよそ1100-1200年程前の時代だが、現在の日本の首相や政府はその頃と殆ど変わらない、と言っても過言ではないのでないか。
トップ画像は、Photo by Lex Sirikiat on Unsplash を加工して使用した。