「久しぶりに実家に帰ったら、親がYoutubeで韓国はーとか野党はーなどと赤文字で書かれたサムネイルの動画ばかり見ており、ネトウヨ化していた」というような話を、SNSでしばしば目にする。自分の場合は両親ではなく、中学校の同級生で生徒会長だった奴が、長谷川 豊氏の「透析患者を殺せ」という発言を擁護していたり、韓国という大雑把な括りで卑下するようなSNS投稿をするようになっていた、という話を2019年9/6の投稿で書いた。
今年の年明けに実家を訪れると、これまで一貫して神奈川新聞をとっていたのに、何故か読売新聞に変わっていた。その時は「もし、や…」という不安もあったが、購読する新聞を読売に変えた、というだけで判断するのは早計すぎると考え、特にそのことについては触れなかった。
自分の実家は横浜市にある。と言っても、トップ画像のような、横浜市の中心部である沿岸部ではなく、かろうじて横浜市内というだけで、所謂横浜のイメージとは合致しない北部にある。
横浜・神奈川の地元紙と言えば、間違いなく神奈川新聞(カナロコ by 神奈川新聞)である。2016年を最後に開催が休止されているが、8月に山下公園沖から打ち上げられる同社主催の神奈川新聞花火大会は、横浜市民・神奈川県民にとって夏の風物詩だった。
友達の家には夕刊が届くのに「なんでうちには届かないの?」と親に聞いた際に、神奈川新聞に夕刊がないから、と教えてもらったのが、自分が神奈川新聞を始めて意識した瞬間だ。それまで何新聞をとっていたかは記憶していないが、神奈川新聞の購読を始めたのは、小学生だった兄が地域のサッカークラブに入ったからだ。前述の質問に続けて「なんでうちは神奈川新聞なの?」と問うと、少年サッカーの試合結果が掲載されるから、という理由だった。
中学校で部活をやっていた際には公式戦の結果を知ることが出来たり、4月の始業式前に公立校教員の異動が掲載されるので、同級生に先んじて情報を仕入れ、「あの先生異動するらしいよ」と事情通ぶることが出来たり、何かと自分も地元紙である神奈川新聞による恩恵を受けていた。
自分や兄弟が学校を卒業してからも実家はずっと神奈川新聞だった。成人するまで全く意識したことはなかったが、神奈川新聞はリベラル寄りの論調の記事を多く掲載する傾向にある。
また、在日コリアンが多く住む地域が横浜市内や川崎市内に複数存在し、差別的なデモ等に関するカウンターの記事も多く掲載する為、自称「保守」の人達から、左翼とか反日などのレッテルを貼られることもしばしばある。いや、反日はレッテルだろうが、自称「保守」の人達から見れば、彼らの基準で言えば大抵の人は左側に位置することになるだろうから、左翼はある意味ではレッテルとは言えないかもしれない。
一方で読売新聞と言えば、産経新聞ほどではないにせよ、現政権に親和的な論調の記事を多く掲載する全国紙である。受け止めは人それぞれだろうが、個人的には読売新聞の印象はすこぶる悪い。NHKが政府広報化しているのと同様に、読売新聞も政府広報紙と化していると考えている。
母親は、主にメールやメッセンジャーの利用ではあるが、一応タブレット端末をそれなりに使ってはいるものの、父親はPC等の情報端末は一切使わないし、電話も未だに10年以上前の所謂ガラケーを使っている。つまりネットにはほぼ触れておらず、情報源はテレビと新聞が主体だ。そんな状況で、そんな新聞からそんな新聞へ、実家が購読する新聞が変わっていたのだから、「もしや?」と感じるのはそれ程不自然ではないのではないか。この2ヶ月近く、そのことがずっと心の中でモヤモヤしていた。
数日前に、年明けぶりに実家に寄ったところ、食卓の上の新聞は神奈川新聞に戻っていた。「どういうこと?」と思って、夕食後に父親にそれとなく聞いてみた。昨年12月頃に読売新聞の勧誘が来て、1ヶ月購読してくれたら洗濯用洗剤とジャイアンツのオープン戦チケットを持ってくると言うので、1ヶ月だけ読売新聞を購読することにしたらしい。
父親は川上現役時代を知る根っからの巨人ファンで、オープン戦のチケットに惹かれたらしい。それで読売新聞を1ヶ月とってはみたものの紙面に魅力はなく、再び神奈川新聞に戻したとのことだった。これまで父親と政治の話をまともにしたことなどなかったが、父親の読売新聞への評価は、「嘘ばっかりの現政権を批判しない新聞なんて信用できない」のような話だったのでホッとした。
因みに貰える筈だったオープン戦チケットは、この新型ウイルスの影響でオープン戦自体がなくなった為になしになったようで、それについても「騙された」的なことを言っていた。正確には騙されていないが、結果的には騙されたのと似た状況とも言えそうだ。他の新聞もやっているのだろうが、世界最大を謳う新聞は未だにこんな手法で部数を多く見せているんだな、と感じた。
自衛隊の日報隠蔽や森友加計問題、裁量労働制や賃金統計など数々の捏造、そして桜を見る会における首相自身の公選法違反問題、度々明らかになる大臣の公選法違反などがあっても、そしてこの新型コロナウイルスへの支離滅裂な対応が目前にあっても、それでも調査では政権支持率が40-50%という異様な状況で、SNSではしばしば、テレビや新聞しか見てない人達がその主体ではないか?という見解が示される。
だが、この投稿に書いた出来事で、テレビと新聞からしか情報を仕入れていない人でも、現政権の異様さを感じることはできる、ということを実感した。
トップ画像は、ファイル:Yokohamamunicipalbus No.109line nearSkywalk 2012-03-12.jpg - Wikipedia を加工して使用した。