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二枚舌「前と食い違うことを平気で言うこと」


 トップ画像に用いたのは、身体改造と呼ばれる肉体装飾行為の中で、ピアスや刺青の次のステップとなるケースが多いスプリットタンだ。見ての通り、舌を途中まで2つに割いて、蛇の舌のような二股状にすることを指す(身体改造 - Wikipedia)。
 日本では、金原 ひとみさんの小説や、それを原作とした蜷川 実花監督映画「蛇にピアス」で取り上げられたこともあり、ピアス程一般化しているとまでは言えないが、相応に認知はされているのではないか(蛇にピアス - Wikipedia)。



 なぜスプリットタンをトップ画像にしたのかと言うと、実際は全く関係性のないものではあるが、「二枚舌」という表現からそれを連想したからだ。


 二枚舌とは、「矛盾したことをいうこと、うそをつくこと」「前と食い違うことを平気で言うこと」を指す表現である(二枚舌(ニマイジタ)とは - コトバンク)。
 何に「二枚舌」を感じたのかと言えば、それは石川県知事が示した見解だ。福井新聞の3/28の記事、

石川県で20代男性が新型コロナウイルス感染 3月28日発表 | 社会 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE


は、3月前半にスペインなど欧州を旅行し、3/14に帰国した石川県在住の男性が新型コロナウイルスに感染したことが分かった、という内容である。記事には、これについて石川県知事の谷本氏が、
なんでこの時期に欧州を旅行したのか不思議でしょうがない。感覚が理解できない
と述べたとある。しかし、石川テレビの3/25の記事

石川県知事「引きこもってばかりでは経済に影響 花見に兼六園来て」無料開園やライトアップも実施|地域|石川テレビ放送|FNNプライムオンライン


によると谷本氏は、
ずっと引きこもってばかりでは経済に影響がでる。花見の時期くらいは兼六園にきてほしい
と述べている。記事にも「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首都圏ではお花見も「自粛」」とあるように、東京などでは既に花見などの自粛の必要性が呼びかけられていたタイミングで谷本知事が示した見解だ。
 自分には谷本知事の言っていることは二枚舌としか思えない。感染した男性がスペイン等を旅行した3月前半は、まだまだヨーロッパでは感染が広がっているとは認識されていなかった。それよりも少し前のことではあるが、2/21にはロンドン市長候補が、「新型コロナウイルスの感染拡大で今夏の東京オリンピックが中止された場合に、ロンドンを代替開催地にしてはどうか」とすら言っていた(東京五輪中止なら「ロンドンでやる」…市長候補ら主張 : 東京オリンピック2020速報 : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン)。イタリア等の一部では既に感染が増えてはいたが、ヨーロッパ全体で感染が急拡大したのは3月中旬以降のことだ。
 都などが花見や外出自粛を呼びかける中で、兼六園での花見を呼びかけたたった3日後に、「なんでこの時期に欧州を旅行したのか不思議でしょうがない。感覚が理解できない」なんて言われても、寧ろ理解し難いのは谷本知事の感覚の方だとしか思えない。

 こうやって感染者を槍玉にあげて非難しても誰も得をしない。 自粛要請しかされていない環境下で、感染者の責任を過剰に追求し不当に扱うことは、症状のある人が「自分も同じ様に非難されるかも」という心理に陥り、心当たりがあっても診察や検査を受けることを委縮させる。具合が悪いという自覚があっても、感染を疑われたら嫌な目に遭うと考え、そう思われるような行動を避け、あたかも健康かのように、普段通りにふるまう動機にもなる。その種発言や見解が示されることによって、軽症者が自主的に活動を控える動機が削がれ、それによって感染が拡大する恐れがあり、つまり誰も得しない。


 昨日の投稿でも書いたように、 この週末は外出自粛要請が出されていたが、それでも都内各所には平時の約5割程度も人出があったようだ。

外出自粛要請の効果は・・・ TBS NEWS


 昨日の投稿でも触れたが、性風俗店のWEBサイトにも、いつも通り出勤女性が掲載されていた。外出自粛要請の効果が全くないとは言えないものの、あくまでも要請であり、営業の中止によって被る不利益への補償を都や国が積極的に行わないのだから、効果は限定的だったと言わざるを得ない。

 昨日はこんなツイートもタイムラインに流れてきた。


 当該ツイートや引用されているツイートが消された時の為に説明しておくと、雪が降る中、秋葉原のパチンコ店で開店待ちをする人達の列を撮影した写真を添え、「新型コロナウイルスで週末の不要不急な外出自粛要請に加え、つめたい雪が降る秋葉原。パチンコのひとたちは、きょうも元気にならばれていた」とするツイートが引用してある。
 確かに依存症は間違いなく病の一種である。新型コロナウイルス感染拡大への懸念による外出自粛要請が出され、更に雪が降るという悪条件の中で、それでも開店待ちまでしてパチンコをしようという人達を見て、「この人達は依存症かもしれない」と想像してしまうのは無理もない。しかし果たして、外出自粛要請に従わずに雪が降る中パチンコ店に並んだ、というだけでのその人達全員を依存症と断定できるだろうか。強く推測することは出来ても、断定することはできないのではないか。
 これは芸能人などの麻薬事犯報道や、それに対する反応などについても言えることだが、ギャンブルをする人も薬物を使用する人も、お酒を飲む人全てが依存症ではないのと同様に、全員が依存症とは言えない。だが、あたかもギャンブルする人も薬物使用者も全員が依存症のような前提に立つ主張が余りにも多すぎる。
 その人が病気かどうか分からないのに病気扱いすることは、間違いなく名誉棄損に該当する行為だ。紹介したツイートの主にそのような感覚はなく、軽い気持ちでツイ―トしているのかもしれない。いいねをしている人達も同様だろう。そういう軽い気持ちによる偏見が蔓延っているのは、短文での主張が強いられるツイッターがもたらした闇だ。


 外出自粛要請が出され、雪が降る中でもパチンコ店の開店待ちをする人達を「依存症」「脳に障害がある」と断定するなら、外出自粛要請がなされている中で、わざわざ沖縄まで移動して人が集まる式典に参加し、それだけでなく、マスクもせずに市民に近づいて話しかけたり握手してまわったりする、という濃厚接触を繰り返した官房長官などは、

菅官房長官が沖縄訪問、感染終息後に「V字回復」 TBS NEWS


こんな緊急時でも、厳格な感染拡大防止よりも支持や選挙のことばかり考えている、

 支持率・選挙・政権維持依存症

と断定できるだろう、と思うし、県民に対して「なんでこの時期に欧州を旅行したのか不思議でしょうがない。感覚が理解できない」と言う石川県知事は、官房長官に対しても、「なんでこの時期に沖縄の式典にわざわざ参加して、それだけでなくマスクもせずに市民と握手して回ったのか不思議でしょうがない。感覚が理解できない」と、積極的に発信するべきだ、と強く思う。


 トップ画像は、ファイル:Tongue-split.jpg - Wikipedia を使用した。

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