外出自粛要請が首都近県など人口密集地域で出されたこの週末。今日はあいにくの天気で、朝方は雨だったがこれを書き始めた正午前には雪が降り、生活道路にも積もり始めている。こんな天気では自粛要請がなくても外に出る人は少ないだろうが、昨日はTシャツでも汗ばむぐらいの陽気で、気になって渋谷交差点のライブカメラを覗いてみたら、いつもよりは人は少ないものの、それでも郊外駅の混雑時程度には人が歩いていた。
個人的に、外出自粛「要請」を重視しない人を批判するつもりはない。要請されているのは「不要不急の外出」であり、しかも要請している側が「不要不急の定義はない」と言うのだから(3/26の投稿)、 自分の外出が不要不急かは個人がそれぞれ判断するべきで、他人がとやかく言うことではない、と考えるからだ。
勿論医療機関等に従事する人達には申し訳ないと思いつつ次の言葉を書かせて貰うが、感染を危惧する人は外出を自粛し、感染をそれ程危惧していない人が外出をしているだけで、しかも休業に関する補償はほぼ何もないに等しいレベルなのだから、利益を少しでも上げなければ生活が立ち行かなくなる状況の店は開けるだろうし、そのような状況の店を支えようという人にとっても、自分の外出は「不要不急」には当たらないと捉えることを、自分は批判する気にはなれない。
勿論日本では積極的な検査がされておらず、公表されている数値が実態に即しているのかは定かでないが、新型コロナウイルスに感染した人の数は、2020年3/28に厚労省が発表した数値で、感染者1499人、死亡者49人だ。横浜港で対応がなされたクルーズ船の感染者712人と死亡者10人をどう捉えるかは微妙な判断だが、ここでは純粋な国内感染者の数値とする為に除外することにする。
日本で感染拡大が始まったのは2月以降と仮定すると、約2ヶ月間で感染者1499人、死亡者49人ということになる。
毎年冬になると流行するインフルエンザと比べて、この新型コロナウイルスへの感染者数は果たして多いのだろうか。「なんと1日50人以上「インフル死者」が日本で急増する不気味 怖いのは新型コロナだけじゃない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」に掲載されている、厚労省発表のデータによると、2019年1月のインフルエンザによる死者数は1685人、2月は1107人、3月258人となっている。
グラフを見れば分かるように、2019年の数字は前年・前々年に比べてやや多いが、3年間で1番少ない2017年でも、1-3月の3ヶ月間で、インフルエンザによって2000人以上の人が命を落としている。
日本同様に2月以降に感染が広がったと思われる、現在世界中で最も感染が広がっているとされるイタリアでの、3/28までの新型コロナウイルスの感染者/死者数は、9万2472/1万23人だ(CNN.co.jp : イタリアの死者1万人超す、高い致死率も102歳女性は回復)。イタリアの昨年のインフルエンザの状況を見つけることができなかったが、イタリアの人口は日本の約半分・6000万人なので、一概に「新型コロナウイルスよりも従来のインフルエンザの方が深刻なのに、何を騒いでいるのか」とは言えない。
アメリカの例も興味深い。2/13の投稿にも書いたように、その時点で既に、米国での今季のインフルエンザの感染者は2200万人に達し、死者は1万2000人を超えたと報じられていた。現在米国でも新型コロナウイルスの感染が広がり、ニューヨークやロサンゼルスなどでは外出禁止令が出されている。米国での新型コロナウイルス感染拡大が報じられ始めたのは3月の中旬以降だ。3/27時点での米国の感染者/死者数は10万1242/1588人だ(CNN.co.jp : 新型コロナ感染者、米で10万人突破 1日の死者は最多更新)。
イタリアよりも感染者が多いが、米国の人口は現在3億2000万人で、人口あたりの感染者割合的にはイタリアよりも低い。また死者数の割合がイタリアよりかなり低いのも気になる。しかしそれでも、インフルエンザの感染者/死者の割合に比べれば、新型コロナウイルスでの死者割合は圧倒的に高い。いくら軽症者が8割といっても、有効な治療法が確立していない新型コロナウイルスの感染拡大に対して、世界中が過敏になるのも頷ける。
このようなことを踏まえると、日本政府・厚労省が発表する感染者数が異様に少ないのは不可解だ。少し前に「日本での感染者が少ないのは、日本は欧米と違ってハグやキスをする文化がないから」という話がSNSなどで出回ったが、では何故日本同様にハグやキスをする文化のない中国や韓国で感染者が増えたのか、の説明がつかない。
その種の話は「濃厚接触」をそもそも勘違いしていることによるものだろう。濃厚接触とは、身体の接触だけを指す表現ではない。国立感染症研究所感染症疫学センターは 「濃厚接触者」を、
- 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
- 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
- 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
- その他:手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状などから患者の感染性を総合的に判断する)。
前述のリンクは3/27の現時点の最新版だが、最初に発表された1/17版の時点で既にほぼ同様の記述がなされている。にもかかわらず、3/4の投稿でも書いたように、厚労省が感染拡大の恐れのある状況から電車等を除外し、また、専門家の見解として、
新型コロナ、満員電車や映画館は危なくないの?専門家に聞きました
満員電車で皆が喋っていたり、歌っていたり、叫んでいたりすれば電車はリスクのある場所ですが、普通みんな無言ですよね。としたり、
なので、たしかに換気は悪いし、人との距離は近いけれども、上で挙げられている場所に比べればまだリスクは低いと思います。
広まる陰謀論「日本で検査が少ないのは政府が感染者数を少なく見せたいからだ」などとする記事(新型コロナ、なぜ希望者全員に検査をしないの? 感染管理の専門家に聞きました)を掲載したBuzzFeed Japanなどによって、BuzzFeed Japanのコロナウイルス関連記事だけでなく、個人的には専門家と称する人達の話を信じられなくなっている。
勿論、BuzzFeed Japanの記事の中にも妥当な話もあるのだろうし、専門家と一口に言っても様々な見解を示す人がいて、人によっては信用できる人もいるのだろうが、常日頃から振舞いに注目している政治家とは違って、個人的には信用できる医療専門家かどうかを判断する材料を持ち合わせていないし、これまでBuzzFeed Japanの医療記事で見解を示していた信頼できると思っていた数少ない専門家らが、前述のような矛盾に満ちた見解を示したり、所謂クソリプへの対応ではあるが、「素人は黙ってろ」のような態度をSNSで示しているのを、この騒動の最中に目の当たりにしたこともあり、 専門家と称する人、専門家という立場を前面に出す人全般への、個人的な不信感が高まっている。
この投稿で「濃厚接触」について書いていて、ふと「今性風俗店はどうなっているのだろう」と思い検索してみたが、営業自粛している店は殆ど見当たらなかった。首都近県で外出自粛が要請されている今日も、いつも通り出勤女性がWEBサイトに掲載されている。
前半で書いたように、個人的にはそれを非難・批判・否定するつもりは全くない。しかし気になるのは働いている女性たちの健康だ。いくつかの店はWEBサイトで「新型コロナウイルスへの対策」を謳っているが、なされているのは大体、出勤女性の体温測定とアルコールによる除菌のみである。
確かに、従業員女性から客への感染はそれである程度防げるかもしれない。中には「ご利用時にお客様にも検温をしていただきます」としている店もあったが、そのような注意事項を掲げていない店の方が多いし、また検温したとしても、無症状の感染者が客として来店する恐れもある。また、そのような客から感染した従業員女性が無症状期間に接客してしまう恐れも考えられなくはない。
あくまでも現在の状況は「自粛の要請」でしかなく、従業員の女性も客も、そのようなリスクを承知の上で出勤したり利用しているのならよいが、そのようなことを理解せずに営業や出勤、利用が行わているのならいろいろと問題がある。前述の濃厚接触の定義に当てはめれば、これは性風俗に限らず、横に座って接客し、客とスキンシップを行う水商売でも同様だろう。
水商売や性風俗の従事者は全般的に高給取りだと考えている人も多いだろうが、全ての人が高給取りとは限らない。確かに売れっ子は高給取りだろうが、誰もが売れっ子ではないし、誰もが売れっ子になれるわけでもない。また、借金を抱えている人なども多く、「自粛要請が出たから休みます」とはいかない人達も確実にいる。
こんなことからも、やはり自粛要請するだけでは感染症対策として不十分で、休業補償をセットにした、ある程度強制力のある対応が必要なのではないかと強く感じる。なにせ自粛要請も週末だけだし、しかも4月からは学校を再開するとも言っている。
政府や首長が信頼できない、というのは緊急時としてかなり深刻な状況だ。しかも今の日本では、勿論中には信頼できる専門家もいるのだろうが、少なくとも政府専門家会議なる組織が信頼に値せず、それによって専門家全般の信頼感も間違いなく棄損されているし、これで「落ち着いた対応を」なんて求められても、冷静でいられなくなり、買い占め騒動などが起きるのは無理もない。
トップ画像は、Photo by Mia Harvey on Unsplash を使用した。