スキップしてメイン コンテンツに移動
 

Muzzle・口輪・口封じ


 今日のトップ画像は、噛みつき防止の為に犬の口部分に装着する口輪だ。英語ではMuzzle / マズルと呼び、日本語でもマズルと表現されることも少なくない。このマズルは、前述の通り主に噛みつき防止の為に用いられる道具だが、吠える癖のある犬の矯正などの為に用いられることもある。マズルを装着された犬には当然ストレスがかかる為、使用法を紹介するWebサイトには、できるだけ犬のストレスが少なくて済むように、噛み癖や吠え癖はしつけにより予防することが重要で、マズルは無理のない範囲で活用するのがよい、というような説明が大抵なされている。

新型コロナ 特措法改正案、きょう成立へ TBS NEWS


 政府による「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が参議院で審議されており、今日夕方にも成立する見通しだ。昨日・3/12には既に衆院本会議で与野党の賛成多数で可決されている。共産党などは「私権の制限が強い」などの理由で反対しているが、最大野党の立民や、国民民主などは「やむをえない場合を除き、国会へ事前に報告する」などの付帯決議を設けることで賛成に回った。

 「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が衆院を通過した昨日・3/12は、こんな報道もあった。

伊吹元議長「不安あおる発言、バラエティーでも自粛を」:朝日新聞デジタル


 自民党の元衆院議長・伊吹氏が同日、所属する二階派の会合で、
後講釈での批判とか不安をあおるような発言は、できるだけバラエティー番組も含めて自粛すべき
と発言した。

 「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案については、衆議院での審議の中で、党方針に反して反対を表明した立民・山尾議員が、
緊急事態が宣言されれば、NHKや民放テレビ局を政府が指定公共機関に指定することが可能で、放送内容について変更、差し替えをしてもらうこともあり得る
という趣旨の答弁を、宮下 一郎内閣府副大臣から引き出している(法改正へ、新型コロナ緊急事態宣言でテレビの報道内容に指示も:日経ビジネス電子版)。
 つまり、同法改正案に基づく緊急事態が宣言されれば、政府がテレビ放送の内容に介入することが可能である。極端に言えば、緊急事態宣言によって政府が情報を統制することが可能になる、ということでもある。しかも、やむを得ない場合は国会に報告せずに緊急事態を宣言することも可能な法改正案が、今日にも成立しようとしている。
 こんな状況にも関わらず、「自粛」という表現を用いてテレビの放送内容に介入というか、圧力をかけているというか、忖度を求めているというか、そんな自民・伊吹氏の発言を取り上げた在京民放局は1つもない。少なくとも各社のニュースサイトで「伊吹」で検索した限り該当する記事はヒットしなかった。NHKだけは一応「自民各派 感染拡大を抑え込み 新たな経済対策を | NHKニュース / インターネットアーカイブ」という記事の中で触れてはいるものの、3/11の投稿で触れた麻生の「武漢ウイルス」という差別や偏見を煽りかねない発言同様に、見出しに一切それを伝える要素のない記事の最後に添え物のように書かれているだけで、当然批判も懸念も一切示されていない。

 自分が各社のニュースサイトや一部の番組から判断する限り、そもそも、緊急事態を宣言することによって、政府がテレビ放送の内容に介入することが可能になる新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案に対しても、積極的に強い懸念を示しているテレビ局自体がないので、伊吹氏の発言を疑問視しないのは当然とも言えそうだ。

 今まさに、政府によって口輪をはめられかねない状況が生じようとしているテレビ局が一切反発しない

のはかなり不気味で恐ろしい。
 記事の冒頭で触れた口輪を意味する英語・Muzzleには、口封じをする、という意味もある


 3/8の投稿でも取り上げたが、前述の発言をした伊吹氏が、1/30の同じく二階派の会合でなんと発言したかにも注目する必要がある。

東京新聞:新型肺炎「緊急事態の一つ、改憲の実験台に」 伊吹元衆院議長:政治(TOKYO Web)


当時はまだ国内での感染が広がっていなかった時期で、伊吹氏以外にも「新型コロナウイルス対策には緊急事態条項を実現する為の改憲が必要だ」と主張する自民党政治家が複数いた。そんな状況の中で伊吹氏は
緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない
と発言している。
 つまり、与党と政府が主導し最大与党が賛成に回った「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案は、明らかに憲法改正の為の布石だ。

 自民党改憲派の政治家らが思い描いているのは、
  1. 「緊急事態宣言」を可能にする特別措置法の改正案を成立させ、
  2. 様々な権利制限が可能な権限を設けるが「緊急事態」は宣言せずに、
  3. 「政府は理性的なので緊急事態条項を設けることのリスクは低い」という印象を醸成し
  4. それを憲法改正の足掛かりにする
のような筋書きだろう。だから今日特措法改正案が成立しても、今後直ちに緊急事態宣言がなされることもないだろうし、万が一緊急事態が宣言されても、伊吹氏のような与党議員などによる「自粛要請」という形などでの圧力はあっても、政府が直接報道内容に、あからさまに口を挟むようなことは行われないだろう。


 だが、民主主義・法治国家において、権力の性善性を前提に法律を作ったり仕組みを構築するのは、愚の骨頂、歴史に学ばない行為としか言いようがない。ましてや権力の暴走を制限する憲法の規定を緩和するなど、厳しいようだが、自傷・自殺行為にも匹敵する。
 だが今の日本では、大手メディアもそのような状況を積極的に危惧しないどころか、最大野党までがその手助けをしている状況だ。

 個人的に、今の政治界隈には戦前の大政翼賛会のような空気を感じてしまうし、自分達の口が封じられかねないのに、殆ど懸念も示さないし批判もしない、テレビ局を始めとした大手メディア各社も、政府広報機関と化した戦中のそれに向かっているように思えてならない。


 トップ画像は、Photo by Annie Spratt on Unsplash を使用した。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。